父親の形見でもある1971年式のいすゞ・ベレットで走りを楽しむ27才
「このクルマは僕が小さい頃に父が草レースで走らせていた車両そのものなんです」と、想いのこもった眼差しで愛車を見つめるのは、現在27歳の加藤さん。
「父が預けていたショップに15年くらい保管されていたものを、入院していた父へのサプライズとして4年前に復活させようと色々手を加えはじめました。結果的には父が亡くなるまでには間に合わなかったんですが、今では父の形見として大切に、でも思う存分に走らせて楽しんでいます」と、大切な愛車-ベレットへの想いを語ってくれた。
ベレットは1963年から販売されていたいすゞの乗用車。4ドアセダンを基本に2ドアセダン、そして2ドアクーペのGT系が用意され、特にハイスペックなGT系は流線型フォルムと合わせて若者から絶大な支持を集めた。
代名詞ともいえる“ベレG”という呼び名が広まったのも、GT系が人気を集めた証拠といえるだろう。そんなGT系のトップモデルがGTRとGTtypeRだ。
加藤さんが所有するベレットは1971年いすゞ・ベレット1600GTtypeR(PR91W)。通称“ブラックマスク"と呼ばれるグリルデザインが特徴の後期モデルだ。
前期モデルではGTRの名称が与えられ、1971年のマイナーチェンジを境にグレード名が変更され後期モデルからはGTtypeRと呼ばれる。
DOHC1600エンジンにソレックス2連キャブや専用のサスペンションセッティングなど、そのスペックは標準車とは別物で、総生産台数も1400台前後という貴重なモデル。さらにGT系では前期フェイスに変更されている車両が多いため、ブラックマスクのノーマルデザインを残しているのはさらに希少といえるだろう。
幼稚園児の頃にサーキットで走っているベレットを見たのが最初の記憶という加藤さん。草レースでもお父さんが走らせていたこともあり、現在27才ながらもベレットはスポーツカーという印象が刷り込まれていたという。
23才でベレットオーナーとなった加藤さんだが、その車歴を伺うと、はじめての愛車はマツダ・ロードスター(NB6C)で、すぐにアルファロメオ・145も増車。さらにもう1台の145を追加してサーキットにも通っていたのだとか。クルマだけではなくモータースポーツ好きのDNAも父親からしっかり受け継がれているようだ。
「エンジンやスタイリングは基本的には父が乗っていた当時のまま復活させています。ベレットでは前期グリルの方が人気みたいですが、自分にとってベレットはこの顔じゃなきゃって気がしますね。破損してしまったミラーなど部分的にはtypeRのノーマルとは違うところもありますが、できるだけこのスタイリングを崩さず乗り続けていく予定です」
保管されていた期間は15年ほどだが、その状態はすこぶる良好。エンジンはジェミニ用の1800㏄をベースに2000㏄まで排気量をアップしてあったが、ショップでの保管状態が良かったため、機関系の腐食などもなく簡単なクリーニングと調整で無事に復活を遂げることができたという。
しかも、いちどエンジンを降ろしてエンジンルームをブラックで塗装。装着されていたNISMO 44φ PHHキャブレターもオーバーホールし、ブレーキマスターも高年式の部品に変更されている。
また、エンジンルームのリフレッシュに合わせ、ボンネットは新車時にオプションとして設定されていたブラックカラーに合わせて塗り直し。トランクリッドは旧車専門店でリリースされているカーボン製に交換するなど、部分的にオリジナリティをプラスして徐々に自分の色に染め上げているというわけだ。
マフラーはワンオフの砲弾タイプで、ホイールはクロモドラ。足まわりのセッティングなどもお父さんが草レースで使っていた当時のままの仕様だという。
「お世話になっているショップの代表が気を使ってくれて『本当に乗れるのか?』とお試し期間を設けてくれたんです。その後に乗り出したんですが、当時付き合っていた彼女がドンガラの内装を嫌がったので、ロールケージを取り外しカーペットも自作して入れ直しました」
そんなわけで50年以上前のクルマとは思えないほど綺麗に仕上げられている。そのためファーストカーとして通勤はもちろん、サーキット走行も楽しむことができる実用性を手に入れているというわけだ。
ちなみに鈴鹿のフルコースで3分を切るタイムで走れるというから、そのポテンシャルは十分といえるだろう。
サーキット走行に対応するため運転席はバケットシートに4点式ハーネスを装着。ちなみにこのシートはマツダ・ロードスターM2純正品で、初の愛車でもあるロードスターに載せていたものだという。そのためシートバックにはロードスターの開発主査である貴島孝雄氏のサインが入れられている。
現在ははじめての愛車であるロードスターは所有したまま、このベレットに加えて前期GTRやセダンなど合計6台のベレットを所有しているという加藤さん。1台は部品取りとして活用しながら、その他はすべて修理して路上復帰させることも密かに計画中だという。
最期にお父さんを助手席に乗せる夢は叶わなかったものの、ベレットで走っている時間は亡きお父さんと過ごしているような気分にもなり、走らせ続けることで親孝行にも似た特別な感情が生まれているという加藤さん。
車齢51年、走行距離はすでに40万キロを超えているが、お父さんが握ったステアリングをこれからも握り続け、ベレットを楽しんでいくことだろう。
取材協力:ジャストマイテイストミーティング
(文:渡辺大輔 / 撮影:土屋勇人 / 編集:GAZOO編集部)
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