30年ワンオーナーで乗り続けた4AG搭載FRコロナ(T141)

『出現! ツインカムターボ NEW CORONA』のテロップとともに、ロジャー・ムーアが乗った赤いマシンが飛び出す。
そんなインパクト抜群のCMとともに1982年に登場した7代目トヨタ・コロナは、歴代モデルのなかで最もスポーティな1台といえるのではないだろうか。

T14#系コロナは、A60系セリカやカリーナとプラットフォームが共通になったことから“3兄弟”と呼ばれ、最後の後輪駆動モデルということもあって現在もコアなファンが多いモデルだ。
2ドアハードトップと4ドアセダンが存在し、トップグレードのGT-TRには『鬼に金棒。ツインカムにターボ』がキャッチフレーズだった国産初のDOHCツインカムターボエンジン・3T-GTEUが搭載されて話題となった。

そして、そんな1800GT-TRの豪華装備を備えつつ、AE86などとおなじ4A-GEUエンジンを搭載した『1600GT スポーツ7パッケージ』を新車で購入し、現在も乗り続けているのが和歌山県在住のきすけさん。
「3Sエンジン搭載モデルが出るかも?とモデルチェンジ直前まで待っていたのですが結局出ず、しかもその後継はFFモデルだったので、諦めて最終型(1986年式)を買いました。21才の時です」

それから月日が経ち、走行距離が20万kmまで伸びた3年前、おなじ4A-G愛好家としてSNSを通じて知り合った近所のプライベーター(210ps仕様のAE86乗り)によって、心臓部の若返り手術が施されることになったという。
しかも、ただのオーバーホールではなく、ストックしていたAE92用シリンダーヘッド&ブロックに、AE111用コンロッドや戸田レーシング製256度カムシャフトを組み込み、フリーダムコンピューターでセッティングされた、バリバリのチューンドエンジンへと積み換えられたのだ。

「イベント参加のための遠征などで年間5000kmくらい走るんですが、楽しくてつい踏みすぎちゃうので、保険のためにアドバン・ネオバを履きました。それくらいパワーアップしましたね」と、きすけさん。
足まわりはいろいろ検討を重ねた結果、現在はしなやかさがお気に入りのビルシュタイン製サスペンションを装着している。車重がおなじくらいだから性能はじゅうぶんだろうと考えて流用したフィット用6POTフロントブレーキ(エンドレス・チビ6)も効果絶大で、今後はリヤブレーキも強化したいと考えているそうだ。

お気に入りはラアンスポーツ製のフロントリップ。「2人目の子供ができたときに、うれしくて走りに行ったら踏みすぎて刺さりまして…しかも廃盤になっていたので新品が手に入らず、仕方なく自分で直しました。ついでに丸型フォグランプも追加したりと手間がかかっているので愛着がありますね」とのこと。

そんなコロナのナビシートに、結婚前から乗り続けてきたという奥様にもお話を聞いてみると「クルマに詳しいわけじゃないので、細かいことはわかりませんけど、ボンネットが黒くなったときには、白い方が好きだったから塗ってくれと猛抗議しました」とのこと。
それを聞いて「変わってる感が大事なんじゃ〜」と言い返すきすけさん。そのカーボンボンネットには、最近人気が高まっているフラットタイプのボンネットピンを組み合わせているが「小さくて目立たないリヤ用をあえてフロントに使っています」というこだわりようだ。

このほか、エアロミラーやリヤディフューザー、追加メーター、海外メーカー製オイルクーラーなど“当時モノ”にこだわらないパーツセレクトが各部に散りばめられているのも、このコロナの特徴と言えるだろう。

「酒もタバコもギャンブルもやらない、唯一の趣味だから、と許してしまったのが間違いでした。農機具小屋だったはずの場所は、クルマのパーツはもちろん、溶接機やらエアコンプレッサーやらが占領していて、今やどう見てもガレージですもんねぇ」と、呆れながらも笑ってくれる伴侶がいなければ、このクルマを所有し続けることはできなかったはず。
しかし、家族とともに走り続けてきたコロナに対して、子供たちはあまり興味を示してくれず、いまはバイクに夢中だという次男の心変わりを密かに期待しているところなんだとか。

もちろん、ここまで乗り続けてきたので手放すつもりは一切ないというが「エンジンオーバーホールの時に純正センサー類が手に入らなくて困りました。トヨタさん、ほんと純正パーツをなんとかしてください(泣)。フジツボ製マフラーももうすぐ廃盤になると聞いたので、ストックとして1本買いましたよ」と、パーツを手に入れるのが困難になってきたのも悩みのタネだという。
このコロナがコンディションをキープしつつ、子供、そして孫へと受け継がれていくことを祈るばかりだ。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road