ミニカーのモデルにもなったフルオリジナルのトヨタ・マークⅡ(GX71)

『コロナ・マークII』は、コロナにハイパワーエンジンを搭載した『ゴールデンシリーズ』の後継として1968年に登場した。
以降、自家用車の普及とともに多様化した需要にあわせてボディの大型化や高級装備の追加などが進み、コロナから独立して『トヨタ・マークII』と名乗ったのが1984年に発売された5代目のX70型。
クレスタ、チェイサーとともに『マークII三兄弟』と呼ばれ、ハイソカーブームの中心的存在とも言えるモデルだ。
特に、3代目から設定された最上級グレードの『グランデ』は、最新システムやや高級装備を採用し、オーナーには羨望の眼差しが向けられた。
ボディタイプはハードトップ、セダン、ワゴンの3種類で、なかでもブラックアウトされた『クリスタル・ピラー』が特徴的なハードトップのグランデは、1985年のグッドデザイン賞を獲得して話題となった。

そんなマークIIグランデを「乗り換えるから廃車にしちゃうけど欲しい?」と、知人から超格安で譲り受けたというワンダーさん。
1986年(昭和61年)5月に初年度登録された寒冷地仕様の前期型で、現在の走行距離は11万4000km。2000ccの1G-EUを搭載したAT車だ。
譲り受けた当時から状態が良かったこともあり、漢字1文字表記のナンバーをはじめ、できるだけオリジナルを維持することにこだわっているという。
その結果「GX71の市販プラモデルを製作するためのモデルとしてじぶんの愛車が使われるという、貴重な体験もできました」なんていう羨ましすぎる話も!!

当時のカタログをめくるような気分で各部をチェックしてみると、ハードトップの象徴とも言えるCピラーは未だに美しい輝きを放っていた。衝撃吸収式カラードウレタンバンパー、カラードマットガード、電動格納ミラーなど、当時の高級装備も今となっては懐かしい。

オリジナルと異なる数少ないポイントがホイール。グランデ標準装備は細いフィンタイプの樹脂ホイールキャップが装着された14インチだったが、GTグレード用の15インチアルミホイールを履いている。

新車カタログで『高級家具の趣き』とうたわれたボタン引きのシートはグランデ専用品。内装もGTツインターボなどのスポーティグレードとは異なり、バブル時代の高級キャバレーのようなふんいき。

リヤシートには"トヨタ初左右調整式リヤヘッドレスト"も採用。レース素材のシートカバーももちろん当時モノ。『MARK II』の刺繍文字も状態よくキレイなまま残っている。

ステアリングコラムに設けられたダクトから温風が放出され、低温時にステアリングを握った手を温めてくれる『クイックハンドウォーマー』。注文装備だったけれど、寒冷地仕様では標準装備だったとか。このほか、ドアのサービスホールには隙間風を防ぐための目張り蓋が装着されているなど、寒冷地仕様ならではの違いがいくつか存在するという。

エンジンはM型に変わって登場した直列6気筒2000ccの1G-EUを搭載。軽量・小型・低燃費・高性能が特徴の『LASRE(レーザー)』シリーズで、スムーズな回転が高級セダンらしさを感じさせる乗り味となっていた。
今後もオリジナルを維持しながら乗り続けていくつもりで「フューエルポンプの交換をしていないので、次は燃料まわりのメンテナンスをしたいですね」というワンダーさん。
ここで、おなじような年式の愛車を持つオーナーたちが「古いのでパーツの入手に苦労する」と口をそろえるのに対して、ワンダーさんは「どうにかなっているので、いまのところ苦労はないですね」との回答。

もともと人気車だったので車両や部品のタマ数が多いという側面もあるだろうけれど、おそらくその秘密はほかにあるのではないかと想像する。
それは、ワンダーさんのまわりにいるクルマ仲間や知人の存在だ。
このミーティングにもコロナのオーナーさんたちと一緒にクルマを並べて参加しているなど「きっと周囲との関係作りがとても上手なオーナーさんなのだろう」と感じたし、そもそもマークIIを手に入れた経緯から始まって、クルマ好きの知り合いからパーツを譲り受けたり購入したりという話題が、インタビューのなかでいくつも出てきたのだ。
おそらく、こういったネットワークが、旧車を維持していくための強い武器となっているに違いない。

きっと来年も仲間たちと一緒にこのオーナーズミーティングに参加し、コンディションをキープした愛車の横でクルマ談義に花を咲かせていることだろう。

<ガズー編集部>