Z世代のオーナーを虜にした「ノスタルジーが味わえる」ホンダ・インテグラタイプR (DC2)

  • ホンダ・インテグラタイプR

幼少期からインターネットが身近にあり、情報収集はテレビや雑誌ではなく動画サイトやSNSで行うのが当たり前。そんなイマドキの10~20代を表す『Z世代』という呼び名は、流行語大賞のトップ10にも選ばれるほど世の中に浸透している。

「古き良きホンダらしさを感じる」と愛車のお気に入りポイントを教えてくれた24才の高橋慶多さんも、そんなZ世代のひとり。愛車は通称『96スペック』と呼ばれるホンダ・インテグラタイプR(DC2)の前期モデルだ。

  • ホンダ・インテグラタイプRのHマーク

クルマに興味を持ち始めたのは高校2年に差し掛かったころだったという高橋さん。

「姉がクルマを購入することになって、いろんなメーカーのパンフレットを集めている姿を見ていて、なんとなく『いいなぁ』と感じていました。そして姉はマニュアル車を選んだのですが、それに少し憧れたのが最初のきっかけですかね。

その後に、母は昔CBRに乗っていたし、父はS30Zに乗っていた時代もあったんだよと、両親もバイクやクルマが好きだったという話を聞きました」

  • ホンダ・インテグラタイプRのフロントビュー

クルマに興味を持ってから、情報は主にYouTubeで学んだという高橋さん。
なかでも特に興味を持ったのは、VHSやDVDで発売されていたホットバージョンやビデオオプションなどのビデオマガジンが、公式チャンネルにて過去の内容を動画としてアップロードしているコンテンツだったという。

そして、世界最速FF車だった時代のメーカーバトルでの活躍をはじめ、VTECを備えたB18型エンジンの性能、全高が抑えられたスポーティなクーペボディや、フォグランプ内蔵型のヘッドライトなどのスマートなスタイルなどについて知るうちに、DC2型インテグラがお気に入りの1台となっていたという。

こういったお話を伺い『これがZ世代のクルマ選びなのか!』とジェネレーションギャップを感じてしまったのは余談だ。

  • ホンダ・インテグラタイプRと友人のホンダ・CR-X

そして、順調にクルマに関する知識を増やしていった高橋さんに大きな影響を与えた存在が、大学生のときに中学以来に再会した大のホンダ好きの同級生。それが、今回の新潟取材会にご参加いただいたCR-Xオーナーの伊藤さんだった。

  • ホンダ・インテグラタイプRとオーナーの高橋さん

高橋さんが大学4年生になった頃、伊藤さんに「インテグラが欲しい」と相談したところ、スポーツカーが集まるミーティングに連れて行ってもらうことに。

「まずは憧れのスポーツカーがたくさん集まっていたことに興奮して。さらに、インテグラに乗っている方にお願いしたら快く運転席に座らせてもらえたんです。そのときの印象は『スポーツカーの目線ってこんなに低いんだ!』ということでした。その目線の高さも新鮮で、憧れが一層強くなりましたね」と当時の思い出を語ってくれた。

  • ホンダ・インテグラタイプRのリアビュー

その頃から本格的にインテグラタイプRを探し始めたという高橋さん。

発売当時のビデオを見て憧れたという彼にとっての「古き良きホンダのエンジンやスタイル」とは、まさにインテグラタイプRが発売されていた当時の状態のこと。そのため、なるべくカスタムが施されていないノーマルに近い状態の車両が理想だったという。

「状態を無視すれば何台も出てきたんですが、スポーツカーということで改造されて乗られていることが多くて。それでしばらく中古車情報サイトを見ていたら、相場よりも少し安いうえにかなり自分の理想に近い状態の車両が出てきたんです。

広島の車両だったので新潟から現車確認に行くことはできなかったんですが、何回か電話をして検討したうえで購入を決めました」

  • ホンダ・インテグラタイプRのエンジンルーム
  • ホンダ・インテグラタイプRのサイドビュー
  • ホンダ・インテグラタイプRのB18エンジン

タイプRの最大の特徴は、販売状態でもカスタムの必要性を感じさせないほどスポーツカーとしての完成度が高いことにある。
なかでもエンジンは、標準モデルのインテグラでもVTECによる2種類のカムプロフィールを用いて低回転のトルクと高回転の伸びが特徴的であった。

だが、当時のホンダはタイプR専用にB18エンジンをさらにカスタム。インテークシステムやエキゾーストマニホールドといった給排気系のアップデートはもちろん、エンジン内部も高圧縮比ピストンを採用し、カムシャフトもより高回転向きに設定。最高出力は8000回転で200馬力に達したのだ。

人生初の愛車として、自然吸気ながらもリッターあたり111馬力というレースエンジン顔負けのスペックを持ち合わせるインテグラタイプRを手に入れ、最初に乗ったときの感想は「楽しいよりも怖いと思いました」という高橋さん。

「今はもちろん怖い気持ちはなくなりましたよ(笑)。ちょっとアクセルを踏んだだけで、どこまでも気持ちよくスピードが乗っていく。例えば、ふと夜にスーパーに買い物に行くときに乗っていくだけでも十分楽しめるんです」

さらに、自然吸気とVTECのおかげで低回転を常用する街乗りでは燃費の良さも実感できる点もお気に入りとのこと。

  • ホンダ・インテグラタイプRのステアリング
  • ホンダ・インテグラタイプRのデジタル時計
  • ホンダ・インテグラタイプRのシフトノブ
  • ホンダ・インテグラタイプRのシート

また、エンブレムに代表されるタイプRのブランドカラーのレッドは、インテリアにもアクセントとして採用されていてオーナー心をくすぐるポイントとなっている。
ダッシュボードセンター部のデジタル時計は、経年で見えにくくなっているもののタイプR限定の赤文字モデル。
赤色でパターンが刻印されたチタン製シフトノブは、他車種への流用カスタムも行われたほど人気だったアイテムだ。

  • ホンダ・インテグラタイプRのマフラー

外観は購入時から交換済みだった無限製マフラー以外はノーマル状態をキープ。
「マフラーのほかにも、ステアリングと車高調も純正に戻したいですね。いずれ予算をかけて中古品をオーバーホールしてもいいから付け替えたいと思っています」と高橋さん。

  • ホンダ・インテグラタイプRの純正ホイール

現在も目標とする“発売当時の純正状態”へ戻すために様々な努力を行っている高橋さんが、最近実現できたというこだわりの『純正戻し』がこのホイールだ。

「もともと同じホイールが付いていたんですが結構汚れが目立っていたんです。この間キレイな中古品を手に入れられたのでこれを夏用に、古いのはスタッドレスタイヤ用に使い分けようと思っています」

このエピソードからも分かるように、高橋さんはインテグラを1年通じて通勤や普段乗りに使うマイカーは1台持ち主義。住まいは新潟でも豪雪地帯というわけではないため、年にいちどの下まわりのメンテナンスを除けば、それほど苦労することもないという。

  • ホンダ・インテグラタイプRと新潟の萬代橋

24才のオーナーから何度も語られた「古き良きホンダらしさを感じる」という言葉が印象に残った今回の取材。

全高の低いクーペボディに自然吸気の高回転型エンジンを搭載するインテグラタイプRは、低回転型のダウンサイジングターボやトルクフルなEVといった現代の自動車トレンドへのカウンターカルチャーとして、Z世代の若者がネオレトロに憧れる要素が詰まった1台なのかもしれない。

取材協力:万代テラス

(⽂:長谷川実路 / 撮影:岩島浩樹)

[GAZOO編集部]