20年以上たっても飽きることのないはじめての愛車 インプレッサWRX STI
はじめて手に入れた愛車に長く乗り続けているというオーナーさんに出会うことは少なくないが、「昔から憧れていたクルマだった」「大切な人から引き継いだ」など、手に入れる前からそのクルマに強い思い入れがある場合がほとんどだ。
しかし、スバル・インプレッサWRX STI(GC8)を初めての愛車として購入し、20年間乗り続けているという鹿児島県鹿児島市在住の上水流秀一さん(40才)は、購入時点ではインプレッサに深い憧れや思い入れがあったわけではなく、どちらかというと実用性や自分の環境を考えてそれに見合った1台として選んだという。
それにもかかわらず、いまだに乗りつづけているのは、上水流さんが送ってきたカーライフの楽しみ方にポイントがあるようだ。
上水流さんは20年間、インプレッサとどう付き合ってきたのか?
「僕は中学高校のころにゲームのグランツーリスモをプレイするまではクルマにまったく興味がなかったんです。家の近くにあるミニクーパーが可愛いなーと思っていた程度でしたね。でもゲーム内でいろんな車両を知って、そこから実際のクルマにも興味を持つようになったんです。クルマって近くに乗っている人や趣味としている人がいないと、なかなか世界が広がらないじゃないですか。そういう意味では、僕にとってはゲームがいいキッカケだったなと思います」
こうしてゲームをキッカケにクルマに興味を持つようになった上水流さんは、20才で普通自動車免許を取得する頃にはすっかりクルマ好きになっていたという。
「当時一番欲しかったのはR34型スカイラインGT-Rだったんですけど、現実的にお金がなかったので…。4ドアがよかったのでインテグラとこのインプレッサを比べていたんですが、ウチのまわりは冬になると雪が積もることもあるので4WDがいいなと思ったのと、自宅にあったクルマがスバルのヴィヴィオとサンバーでスバル車に馴染みがあったこともあり、インプレッサを買おうと決めました」
「ちょうどスバルがラリーで活躍している頃だったので、そのイメージが強かった初期型に的を絞り、中古車情報誌で見つけた程度のいい車両を福岡まで見に行って、実車を確認してすぐに『これにします!!』って決めたんです」
上水流さんが購入したのは1996年式のインプレッサWRX TypeRA STIバージョンⅢ。購入当時の走行距離は5万kmほどだったが、手に入れてから最初の頃は1年で1万km以上乗り、20年経った現在はトリップメーターが約15万kmに達している。
そして、ここからが上水流さんがこの愛車と長年を共にすることになった理由とも言える部分。
「クルマを買ってからまずハマったのがカーオーディオです。ショップでしっかり作ってもらって、イベントにも参加できるレベルでした。自分のなかでオーディオは一通りやり尽くしたなと思いましたし、雑誌で紹介してもらったこともありました。今はもうオーディオは取り外してしまいましたけどね」
上水流さんがオーディオカスタムを一通りやり尽くした次に興味を持ったのが、チューニングだった。そして通っていたオーディオショップにたまたま遊びに来ていたお客さんとの繋がりから、鹿児島県出水市にあるチューニングファクトリー部動屋で本格的なチューニングに乗り出す。
「部動屋さんはうちから100kmくらい離れていますが、鹿児島市内だとチューニングショップがあまりなくて…。チューニングは主に性能面に力を入れていて、タービン交換をしたりインタークーラーを前置きに変更したりとひと通りいじったあと、エンジン もボアアップして排気量をアップし、コンピューターも“フルコン”と呼ばれるハイエンドなものに交換してセッティングしてもらいました。外からの見た目はホイールが変わっているくらいなので、ほとんどノーマルに見えると思いますけど(笑)」
ちなみに一緒に住んでいるご両親には、チューニングのためにショップに預けているときも修理に出していると思われているそうで「壊れているなら乗り替えろ」とよく言われているそうだ。
「ホイールはボルクレーシングCE28の17インチを履いているんですが、ちょっと大きくて上がフェンダーにあたってしまうので純正の16インチに戻そうかなと思っています。外からの見た目で気に入っているのは顔面ですね。フロントバンパーは2000年に走っていたラリーカーをイメージしてラ・アンスポーツというメーカーの社外品にしています。ヘッドライトは後期の純正なんですが、材質がプラスチックでなくガラスなのがいいところです。それからリアスポイラーは僕のバージョン3よりも年式が新しくて高さがあるバージョン5用を流用しています」
ボディの塗装なども塗り直しなどは行うことなく程度の良い状態をキープしていて、競技向けモデルであるRAならではの装備『ルーフベンチレーター』も実稼働状態を保っている。
車内も実用的に役立つシートやステアリングを交換している以外は、純正が活かされている状態だ。
「運転席は座ってみて一番しっくりきたレカロシートを選びました。腰回りがすごく楽になって、それこそアクセルを踏んでいる足のほうが痛いくらいです(笑)。メーターは純正にもともとこういう感じのデザインがあったんですが、もう廃盤になっていたので純正っぽくしようと思い昔のデフィ製を装着しています。ステアリングは社外品に純正のホーンボタンを付けてみました」
そんな上水流さんは、チューニングがひと段落した現在、今後も乗り続けるためにメンテナンス維持に力を注いでいく予定だという。
「メンテナンスは自分で原因が分からない部分や特殊な工具が必要なときは部動屋さんにお任せしますけど、できる範囲は自分でやります。最近だとアイドリングが不安定な症状が出ていたのを修理したところです。最近は90年代のスポーツカーが異様に高騰していますし、今後はパーツも無くなっていくと思うので、必要なパーツだけは先に注文しておいて、いざとなったら取り替える予定で準備を進めていこうと思っています」
メンテナンスをしながらこれからも大事に乗り続けていきたいという上水流さんだが、これまで乗り換えを考えたことはなかったのだろうか。
「実は新しいインプレッサが出るたびに試乗に行くんですけど、正直エンジンは一緒だし加速とか四駆の安定感など何も変わらないんですよね。トヨタの86に乗せてもらったときも、やっぱり同じスバルのボクサーエンジンだと加速のフィーリングも一緒に感じました。型式が新しくなってもフィーリングが変わらないって、僕が乗っている初代がどれだけ良かったかって話ですよね」と、現在の愛車の性能にベタ惚れの様子。
好きな車種での乗り換えは検討してみたのの、上水流さんがGC8から買い換えたいと思わせてくれるモデルが現れなかったということだろう。
「僕は自分が興味あるものは一生懸命調べる性格で、それが楽しいし趣味とも言えるでしょうね。このクルマを買ってからは自分のクルマについてたくさん知りたいと思って、載っている雑誌を見つけたら全部調べました。グランツーリスモも、僕がハマっていた頃はそれぞれのクルマの説明がしっかり載っていたので、そういうところも楽しかったんです。最近のシリーズはレース寄りの印象でしたが、3月に発売される新作グランツーリスモ7では原点回帰で昔のようにクルマの説明も載っている方向になるみたいなので楽しみです。それをプレイすることで僕のようにクルマが好きになる人が増えればいいなと思っています」
ちなみにゲームをキッカケにクルマ好きになった上水流さんだが、バイクのCB1100も所有していて、晴れている日はCB1100で出かけることも少なくないそうだ。
上水流さんが20年もの間、飽きずにGC8に乗り続けることができたのは、彼がこのGC8について隅から隅まで徹底的に調べるとともに、購入当初はたくさん走り回り、その後はオーディオカスタムを突き詰め、さらにはチューニングも徹底的に…というように、その時その時でこのGC8との楽しみ方を探り続けたからに他ならない。
上水流さんの愛車取材を通して改めて感じたのは、自分のクルマに対して「知りたい」と深く興味を持つことが『所有車』から『愛車』へと昇華するキッカケのひとつだということ。深く知るからこそ自分にあった楽しみ方も見つけることができるし、長く愛車として付き合うことに繋がるのだと思う。
ご自身の手元に来てから20年。上水流さんにとってかけがえのない愛車となったGC8は、これからもきっと大切に乗り続けられていくだろう。
取材協力:鹿児島県立吉野公園
(文: 西本尚恵 撮影: 西野キヨシ)
[GAZOO編集部]
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