全日本カートを父子で遠征 目指すはF1パイロット
- 夜明け頃から機材下ろしが始まる。サーキットは朝が早い。
全日本選手権に参戦して4年目
モータースポーツの朝は早い。今回訪れた鈴鹿サーキット南コースにも、夜明け直後の朝6時頃にはエントラントが集まってくる。その中の1台、黒いボディとカスタマイズされたハイエースが現れ、黙々と機材を下ろしていく。全日本カート選手権に参戦する佐野博光・雄城くん親子だ。
カートに参戦するのは現在12歳の雄城くん。カートに初めて乗ったのは4歳だ。父親がむかし楽しんでいたカートに試しに乗せてみたところ、怖がりもせず楽しく乗り始め、ついには競技の世界に足を踏み入れた。その後キッズカートを始め、年齢があがると共にステップアップし、現在は全日本カート選手権のひとつのカテゴリーである「ジュニアカート選手権 FP-Jr部門」でシリーズ2位を走るまでに成長した。今回は鈴鹿選手権シリーズにParilla X30クラスでエントリーしている。
- 佐野博光・雄城くん親子 愛車のハイエースと今回使ったカート
全日本選手権と地方選と合わせて、多い年で年間20戦程度、少なくても18戦程度、全国のカート場へ遠征しレースを行なっている。月に2回以上はレースをしている計算になる。そのほかにも練習走行や、現在は海外での世界戦でも活躍もあるというから、週末はほぼカートを行なっているそうだ。
- 親子で協力してカート下ろす。
父の博光さんは自動車関連の仕事をしていることもあり、マシンの通常メンテナンスは博光さんが担当している。車の中にはパーツや工具などが満載だ。「これでも昔より減ったのですが、やはりどこが壊れるか分からないので、スペアパーツは多く持っています」と語る。確かにカートはちょっとした接触でパーツが壊れることがあるほか、レギュレーションで許されているパーツ交換でも変化が大きく、その時のコースの条件や、気候などに合わせたパーツ選択が必要となる。そのためには予備のパーツが多く必要になるわけだ。
- ハイエースにはフレームや機材が満載の状態で各地のサーキットを遠征する
- ハイエースには機材が満載。DIYの棚を設置して空きスペースにも荷物が載るようにしてある。
遠征にはカートのフレームはもちろん、エンジン(今回は4機)にタイヤやハブ、ケミカル類や工具、そして大事なウェアやヘルメットなどを満載して鈴鹿にやってきた。自宅のある静岡県を深夜に出発して、早朝に鈴鹿入りとなる。運転は博光さんが行い、雄城くんは休みながら現場入りをする。博光さんが機材を下ろし始めると雄城くんも手伝っていく。なんとも頼もしい姿だ。
- 休憩する場所にもなるトランポ仕様は使い勝手が良い
平成27年式ハイエース・スーパーロングの後席をリクライニングできるシートに変更。ここが、雄城くんの休憩所になる。後方の荷室にはフレームや機材が満載だ。自作の棚の上にはケミカル類や予備パーツを搭載している。大きい工具箱やカートのフレームを左右に効率良く納め、真ん中にその他のパーツや工具を積む。これだけの機材が積めるのもスーパーロングならではだ。
雄城くんが小さい頃はフレームも小さかったので、ミニバンでも積載できというが、今の大人用のフレームになってからは乗らなくなり、ハイエースをトランポ仕様に改装して数台乗り継いでいる。
博光さんも「積載量も多く運転が楽なので、やはりハイエースのスーパーロングが1番です。1度トラックにしたことがあるのですが、機材が積めるのは良いのですが、休憩する場所を確保する、という意味合いでもちょっと大変でした」とハイエースの良さを実感する。
- 長距離運転でも疲労が貯まらないように、運転席助手席ともにレカロシートに交換されている。
- 来シーズンは全日本カート選手権と、さらにステップアップを目指す。その眼差し一人前のレーサーだ。
目指すはF1パイロット。親子で目指す頂点への道
今回取材をしたタイミングは鈴鹿選手権シリーズ第7戦カートレース IN SUZUKA。雄城くんは、予選ヒートで4番手を確保しながら、決勝では残念ながら7位で終えてしまった。しかし全日本選手権でシリーズ2位を走る実力を持つ選手だ。来シーズンは多くのレーサーを輩出している、鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)に申し込み、うまく軌道に乗れればフォーミュラへの道が開ける。そして夢のF1パイロットへの道へ繋がる。SRSへの挑戦と並行して、全日本カート選手権や、地方選へも今まで通り遠征を繰り広げる。ハイエースとともに全国のカート場への遠征はまだまだ続く。
(写真・文:雪岡直樹)
[ガズー編集部]
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