ミニバンという愛車のカタチ…三菱デリカD:5というクルマの真価

妻と出会ったことで世界が広がった。そしてその後「どこへでも走って行けるミニバン」と出会ったことで、その世界はさらに広がった。

何の話かといえば、2007年式の三菱 デリカD:5を使って登山やキャンプ、カヌーなどを楽しんでいるデザイン事務所代表、内木サトシさんの人生(の一端)についてである。

今でこそ山登りやキャンプ、カヌーなどをライフワークのひとつとしている内木さんだが、東京生まれの東京育ちということもあってか、少年時代や青年時代は、アウトドア活動についての興味は「まぁ人並み程度」だったという。

だが25歳のときに結婚した妻が、内木さんの生活をある意味変えた。

内木さんいわく「まんが日本昔話に出てきそうな感じの場所」だという長野県内の山間部で生まれ育った妻に誘われ、休日は山へ行き、川へ行く生活に変わった。日本語で言うところの野営すなわちキャンプも、あちこちでやってみた。

するとすぐに、それらは「本当に楽しく、素晴らしく、都会に住む人間にとって最高のリフレッシュ戦術である!」ということに気づいた内木さんは、ある意味妻以上にハマっていった。

当時乗っていたクルマは、中古で買ったスバル レガシイ ツーリングワゴン。マニアは「BP」と呼ぶ4代目で、走りにも積載性にも十分満足していた。

だがある日、アンラッキーなもらい事故でレガシィは残念ながら廃車に。

代わりに購入したのが、4代目フォルクスワーゲン ゴルフワゴンの中古車だった。これまた走りにも積載性にも十分満足できるクルマで、荷室に登山道具やキャンプグッズを載せ大活躍していたのだが、あるとき、キャンプへ行く途中でエンジンが壊れてしまった。

「で、急きょ借りたレンタカーがトヨタのミニバンで、車種は確かノアだったと思います。そのとき、ミニバンというものの積載性の高さに、今さらながら驚いてしまったんですね」

当然ながら1泊2日ぐらいのライトなキャンプや登山なども楽しんでいた内木さん夫妻だったが、長めの休みが取れたときには「目的地も日程も特には決めず、ただひたすら北へ北へと野営しながら向かう」というような旅も行っていた。

「そうなると、当然ですがステーションワゴンよりミニバンのほうがたくさんの荷物を載せられるわけで、たくさんの荷物が載るということは、より多くの日数、東京に帰らないまま放浪を続けられるということになります(笑)。代車のミニバンを借りたことでそれがわかってしまったため、『次はミニバンだな……』って心に決めたんですよね」

とはいえ、すぐにゴルフワゴンからミニバンに買い替えたわけではなかった。エンジンがブローしたゴルフワゴンは結局、エンジンを載せ替え、その後もしばらく乗り続けたという。

「クルマって、なんというかこういろいろな“記憶”が詰まってるものじゃないですか、車内に。なので、僕の場合は『壊れたから、じゃあ次のクルマに』とはなかなかできないんですよ」

その後、エンジン載せ替えで生き返ったゴルフワゴンもさすがに少々古くなってきたということと、2人の息子さんもどんどん大きくなってきたということで、ついに内木さんは例の「ミニバンへの買い替え作戦」を実行することに。車種は、三菱 デリカD:5の一択だった。

「主に買い物とか普通の旅行とかに使うなら、デリカD:5じゃなくてもいいと思います。でも我が家はそれだけじゃなく、荒れた山道とかもごく普通に走る家なので(笑)、やはり悪路の走破性にもかなり優れているらしいデリカD:5しかないだろう――ってことで、ほかの車種は検討すらしませんでした」

今から8年前に購入したそれは、2007年式三菱デリカD:5のGパワーパッケージ。走行距離約5万kmの中古車だった。

特にクルマに詳しいわけでもないという内木さんだが、そんな内木さんの予想、つまり「三菱 デリカD:5は、少なくとも我が家にとっては最高のクルマであるはず」との予想は、完璧に正しかった。

「家族全員で乗っても荷物はかなりたくさん積めますし、高速道路でも、まぁ僕はクルマの走りについての評論とかはぜんぜんできませんけど、すっごく安定してる気がするし」

「走りのことはわからない」と謙遜する内木さんだが、実は歴戦のバイク乗りでもあり、デリカD:5以外に、足グルマとしてイタリアの「アバルト595ツーリズモ」というホットハッチも所有している。その内木さんが「すっごく安定してる気がする」と評するデリカD:5は、やはり「走れるミニバン」なのだろう。

閑話休題。先を続けてもらおう。ちなみに今回のインタビューは「登山しながら」のインタビューであるため、話すほうも大変だとは思うが。

「あとはガレ場(岩や石が散乱している斜面)みたいな道でも、D:5は噂どおりほとんどスタックしませんしね。……ステーションワゴンも、あれはあれで素晴らしい乗り物でした。でも“どこへでも走って行けるミニバン”は、なんと言いますか、総合的に見てそれ以上に素晴らしい道具であり、僕や家族にとっての“かけがいのない相棒”になってると思いますね」

走行距離約5万kmの中古車として購入したデリカD:5は、その後の8年間で12万kmまで距離計を刻んだ。だがコンディションは相変わらず絶好調だ。

「まぁ整備だけはディーラーでちゃんとやってますからね。ボディのキズとかは気にしないでほぼそのまま放置してますが、足回りのブッシュとかは早め早めに、ケチらずにまるっと交換してもらってます」

その甲斐もあって、走行12万kmの13年落ちデリカD:5は前述のとおり絶好調であるため、買い替えの予定は「特にはない」という。それこそ仮にエンジンがブローしても、内木さんはおそらくどこかから中古のエンジンを見つけてきて載せ替え、今以上にキズだらけとなった初期型の三菱デリカD:5で山々を走り続けるのだろう。ときにはひとりで。そしてときには、家族みんなを乗せて。

いわゆるカーマニアからは毛嫌いされることも多い「ミニバン」というカテゴリー。嫌うその気持ちもわからないわけではない。だが登頂を終え、最高の青空の下、頂上付近で沸かしたお湯で作ったカップ麺をおいしそうに頬張る内木さんの笑顔を見ていると、クルマのボディタイプに関する「論争」みたいなものが、心底どうでもよく感じられてくる。

クルマとは、果たして何のためにある機械なのか?

その答えはさまざまであり、一概には言えない問題だろう。だが少なくとも、以下のことは言えるはずだ。

「クルマとは、人がその人生をより楽しみ、より充実させるためにある、動力源と車輪およびその他が付いた箱である」と。

(取材・文/伊達軍曹 撮影/阿部昌也)

[ガズー編集部]

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