宇宙飛行士になる! 父親のデッカイ夢を支えるMAZDA3と過ごす休日

以前この企画で、spodsという一般社団法人を立ち上げ、仲間と千葉県印旛郡酒々井町に古民家を借りてさまざまな社会実験を行うトヨタ ランドクルーザープラドのオーナーを紹介した。その取材で興味深い人と出会ったので、今回はその方のカーライフを紹介しよう。

お会いしたのは宇宙ロボットを開発する企業で事業開発を担当する田口優介さん(45歳)。本業で忙しい時間を過ごしながら、なんと本気で宇宙飛行士になることを目指して準備をしているという。

昨年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「2021年秋、国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士を選抜する」と発表した。田口さんは幼い頃からの夢を叶える最後のチャンスと、これに応募することを決めている。

我々が話を伺った数日後には、今年予定されているISSでの実証実験のためにアメリカ・ヒューストンに旅立つことになっていた。

酒々井には多忙な日々の合間を縫い、息抜きのために訪れているそうだ。愛車は2019年にフルモデルチェンジした、マツダ MAZDA3ファストバック。

「私は父の仕事の関係で、4歳から14歳までアメリカで過ごしました。当時はスペースシャトルの黄金期で、テレビをつければシャトルの話をやっているような環境です。同年代の子どもの将来の夢は大統領か宇宙飛行士。私もいつか宇宙に行ってみたいと思っていました」

思い続ければ夢は叶うというのは本当だ。田口さんは大学で天文学を専攻。大学院を卒業後、ソリューションビジネスを手がける企業に就職するが、宇宙に関わりたいという夢を抱き続けていた。すると友人から声がかかり、宇宙飛行士の訓練インストラクターとして転職することができた。そこから現在まで、宇宙に関わる仕事を続けている。

田口さんが少年時代のアメリカ生活でもう一つ憧れたのが、クルマだ。

「父が働いていたステーキレストランにはクルマ好きの方がいて、ランボルギーニ カウンタックやフェラーリ テスタロッサ、ホンダ NSXなどに乗っていました。父も日本のスポーツカーが好きで、僕が生まれた頃は日産 フェアレディZに乗っていました。アメリカは16歳からクルマの運転ができるようになります。私も高校生になったらクルマで学校に通うのを楽しみにしていたのですが帰国することになり……。拍子抜けしました(笑)」

大学生の時、田口さんは移動の足としてバイクに乗るように。本気でクルマ購入を考えたのは結婚して2人のお子さんが産まれ、現在住んでいる千葉県に引っ越してからだった。検討したのはSUV。いくつかのモデルに試乗して選んだのはマツダの初代CX-5だった。

「最初、マツダに乗ることはまったく考えていませんでした。試乗も“ついで”くらいの気持ちだったのですが、乗ってみたらクリーンディーゼルエンジンのトルクフルな走りに衝撃を受けまして。結局気に入っていたクルマのことはすっかり忘れて契約書にサインをしていました」

そして2016年12月にCX-5がフルモデルチェンジすると、田口さんはすぐに新しいCX-5に乗り換える。選んだのはもちろんクリーンディーゼルモデル。

「CX-5に乗っていた頃は週末に家族でドライブするのが楽しみでした。千葉から神戸の実家までクルマで帰ったりもしましたね。でも成長とともに子どもたちも忙しくなって、家族で出かける機会はほとんどなくなった。もうCX-5のような大きなクルマは必要ないと思い、MAZDA3ファストバックに乗り換えたんです」

MAZDA3ファストバックという選択は、いわゆるダウンサイジング。一般的に大型車から小型車に乗り換える際は走りや装備などで妥協せざるを得ない部分も出てくるもの。それが嫌でダウンサイジングに踏み切れない人もいる。

田口さんにとってMAZDA3ファストバックは妥協を感じない最良の選択だった。

一つ目のポイントはエンジン。田口さんはマツダのクリーンディーゼルエンジンの走りに魅了されてCX-5を2台乗り継いできた。マツダはSUVだけでなくコンパクトなハッチバックにもクリーンディーゼルエンジンを設定。排気量はCX-5より小さくなったものの、トルクフルな走りは健在だ。

もう一つのポイントはインテリアだ。ディーラーで展示車両を見た時、シンプルで品のあるデザインはもちろん、使われている素材の質感の高さにも驚いた。コンパクトなハッチバックであることを忘れさせてくれる高級感。田口さんがMAZDA3ファストバックを選ぶのに迷いはなかった。

走りとデザインに惚れ込んで手に入れたクルマだが、多忙な田口さんが運転を楽しめる時間はわずか。多くの時間は買い物などで奥様が使っている。

「実は、妻は学生時代にMT車で走り回っていたらしいんですよ(笑)。今は『別に何でもいい』と話していますが、このクルマの走りは結構気に入っているみたいです」

  • (田口優介さん提供)

田口さんがMAZDA3ファストバックのステアリングを握るのは、趣味を楽しむ週末になる。田口さんは学生時代にアメフトにのめり込み、現在も社会人チームに加入して毎週日曜日の午前中に練習している。

アメフトで使うヘルメットやプロテクターは全部で10kgほど。数が多いので結構な荷物になるという。CX-5に比べると狭くなったもののMAZDA3ファストバックは荷室容量がそれなりにあるので、プロテクターなどを積むのに困ることはない。

「もっとも我が家ではクルマの主導権が妻にあるので、『休日は私がクルマを使う』と言われたら、大きなバッグにプロテクターを詰め込んで自転車で練習に向かいます。頻度は自転車で行くことの方が多いかもしれません(笑)」

田口さんにとってもうひとつの大切な時間が、酒々井での活動だ。頻繁に参加することはできないが、タイミングが合った時は、ここで出会った仲間と畑を耕したり、移動式サウナの製作テストを行ったりしている。

「初めて参加したのは2年ほど前。知人から『大人の遊び場みたいなことをやろうと思っている』と誘われたのがきっかけでした。ここに集う人は年齢も職業もさまざま。でも立場などを気にせず、いい意味でユルく繋がることができるのがとても心地いいですね。久しぶりに訪れた時も、自然に溶け込むことができます」

自宅から酒々井の古民家までは、高速道路を使えば数十分で到着する。だが田口さんはあえて下道で向かうことが多い。休日は気持ちをリセットする貴重な時間だからこそ、のんびりドライブを楽しむ。そこには滅多に乗れないお気に入りの愛車を少しでも長く運転していたいという気持ちもあるはずだ。

休日ということもあり渋滞に巻き込まれることもしばしば。そんな時も「まあいいか、その分長く運転できるし」と、メーター内に表示される運転スコアを伸ばせるようにていねいな運転を心がけながら、多くの人にとって苦痛でしかない時間を楽しんでいる。

宇宙に憧れ、宇宙を学び、宇宙を仕事にすることで少しずつ自分の夢を実現した。人は歳を重ねると目の前の現実に追われ夢を持つことを忘れてしまうものだ。だが、田口さんはこれまでのキャリアを活かし、45歳という年齢で途方もない夢にチャレンジしようとしている。

「もちろん狭き門ではありますが、でも可能性はゼロではないと思っています。待ちに待ったチャンスがついにやってきたこと。そこにチャレンジできることにワクワクしています」

アメフトや酒々井での活動は、大きな夢に向かって動き出そうとしている田口さんにとって、気持ちをリセットするための大切な時間。そこにMAZDA3ファストバックが大きく貢献している。大袈裟だが、もし田口さんが夢を実現したら、MAZDA3は田口さんが宇宙に行く手助けをしたクルマと言っても構わないだろう。

(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/柳田由人)

[ガズー編集部]

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