こだわってカスタムした100系ハイエースが高めてくれる家族の幸福度
ハイエースが盛り上がっている。
アウトドアブームで荷物をたくさん積んで出かけたい人が選ぶのはもちろん、車内にテーブルやベッドを作った車中泊仕様のハイエースも多い。
また、オフロードバイクやサーフィンなどのトランスポーターとしても選ばれている。
今、街を走るほとんどのハイエースは現行型の200系だ。2004年8月に登場してから約18年、200系ハイエースはビジネス用途だけでなく、さまざまなレジャーシーンでも大活躍してきた。
今回お会いしたmikamiさんは2021年2月にハイエースを手に入れた。だが、選んだのは流通台数が多い200系ではなく、旧型の100系ハイエースバンだった。
「僕は100系のフォルム、中でも少し丸みを帯びたおしりのデザインが好きで。性能は200系のほうが圧倒的にいいのはわかっていましたが、どうしてもこの形に乗りたくて100系を選びました」
mikamiさんはもともとヤマハ セローやカワサキ Dトラッカーなどの2輪車に乗っていた。
初めて買った4輪車は初代トヨタ bB。これは10年ほど乗り、走行距離も16万kmを超えたという。
結婚して子どもが生まれたのを機にトヨタ ノアに乗り換える。そしてノアに乗るようになってからキャンプデビューを果たした。
「友人から『子どもも生まれたしキャンプに行こうよ』と誘われたのがきっかけでした。小さい頃に父親に連れられてキャンプに行った記憶はあるものの道具の使い方などは全くわからないので、キャンプに慣れた友人が一緒だったら安心だなと軽い気持ちで出かけたらすっかりはまってしまって」
mikamiさんはそこからどんどんキャンプ道具を揃えていく。そして家族でキャンプに出かけるうちに、他のキャンプサイトに停められたクルマが気になるようになったという。
中でもカッコよく見えたのはトヨタ ランドクルーザー。それもクラシックな60系や70系だった。
「妻もキャンプにはまっていて、僕と同じように『ランクル、自然の中で映えるね』と話していました。2人で興味をもったら、自然に『買い替えようか』という話になります。僕らも60や70のランクルを中古車店まで何度も見に行きました。でもあまりにも高くて手が出ませんでした」
mikamiさん夫婦が見ていたランクルはアースカラーにオールペンし、ビンテージ感を高めたカスタムモデルだった。
これらは30年以上前の車体で走行距離が10万kmを超えていても400万円以上の値がつけられることも珍しくない。
確かに2人の子どもを育てる若い夫婦が簡単に手を出せるものではないだろう。
キャンプサイトに似合うクルマをもつのは夢の話かな。mikamiさんは半ば諦めていたが、奥さんから思わぬ提案があった。
「チープな感じのバンに色を塗ってカッコよくするのってどうかな?」
これはmikamiさんの頭にはまったくなかった発想だった。でも奥さんに言われてSNSを見ると、いい雰囲気のバンに乗っている人がたくさん出てくる。
何よりランクルに比べて購入費用をかなり抑えられる。バンも悪くないな。そう思い、mikamiさんは100系ハイエースの中古車を探し始めた。
「ところがクルマを探し始めたら別の問題が出てきまして……。僕らは古くてもなるべく走行距離が少なくて修復歴のない中古車を買いたかったのですが、中古車サイトを見ると20万km前後走ったものばかり。
当たり前ですよね。もともと仕事で使われることが多く走行距離が延びやすいモデルなのですから」
mikamiさんたちは中古車販売店にも足を運んだ。でも「100系はやめて200系にしたほうがいい」と言われてしまう。
諦めかけていたときに、たまたまアウトドアに力を入れている中古車販売店を見つけたので、ダメ元で相談した。するとこの販売店はmikamiさんたちの話を真剣に聞き、時間がかかるかもしれないけれど探してみますと言ってくれた。
自分たちの夢が叶うかもしれない。mikamiさんたちは大いに盛り上がったそうだ。そして販売店からの連絡を待つ間、2人はスマホの写真加工アプリを使ってカスタム案を出し合ったという。
よく「クルマは納車されるまでが一番楽しい」と言うが、その楽しさを2人でとことん味わっていたことが容易に想像つく。
「最終的にカスタムプランは妻の案が採用になりました。僕はフロントバンパーも黒くしたかったのですが、『それだと口が黒い柴犬みたい』と言われて(笑)。センスは妻のほうが圧倒的によかったですね」
数ヶ月後に販売店からいいクルマが見つかったと連絡があり、mikamiさんは購入を即決。そしてカスタムに取りかかってもらい、2021年2月に100系ハイエースがmikamiさんの元にやってきた。
納車されたハイエースを見てmikamiさんは「嬉しすぎて脳汁が出まくった」と笑う。
フロントバンパー以外にもこのハイエースにはmikamiさんたちのこだわりがたくさん詰まっている。それを紹介しよう。
- ホワイトルーフ:実はこの白は元々のボディカラー。2トーンにすることで今っぽさが出るとともに塗装代も抑えられた。
- ウインドウ:ベース車両は荷室部分の3枚がプライバシーガラスだったが、クラシックなイメージを出すためにクリアガラスに変更。
- カリフォルニアミラー:助手席側のミラーがお気に入り。2人は納車されたらカリフォルニアミラーをつけるつもりだったが、すでに装着された中古車が見つかったので出費を抑えられた。
- TOYOTAエンブレム:クラシックなイメージを出す上でこれは欠かせないと購入後に装着。
そして何よりこだわったのがインテリアだ。ここはmikamiさんがDIYした。
荷物スペースと居住スペースを分けるために荷室を上下2段にして、天井にはウッドを貼った。
荷室左側には折りたたみテーブルを設置。クリアにしたガラス部分には目隠しのカーテンがつけられている。
ハイエースが納車された後、mikamiさんはInstagramに専用アカウントを作ってキャンプの様子などをアップしている。
クルマ好きの友人はこのハイエースを見て絶賛してくれるが、クルマに詳しくない友人だと「個人でなにか仕事を始めるの?」というリアクションもあった。
mikamiさんが一番嬉しかったのは、アパレル出身でファッション感度の高い友人からも好評だったこと。彼らから、
「めちゃくちゃいいね!」
「自分でやったの? すごい!」
という言葉をたくさんかけてもらえたことはすごく嬉しかったし、自分に対する自信にもつながった。
「キャンプ場でも『クルマ、見せてもらっていいですか?』と声をかけてもらったりするし、SNSでもいろいろなコメントをもらえたりする。自分が気に入っているクルマにリアクションがあるのは嬉しいですよ。
SNSで僕と同じようにバンライフを楽しんでいる人とつながることもできました。クルマを通して仲間が増えるのはおもしろいです」
この100系ハイエースと暮らすようになってから、大型ショッピングセンターに出かけるとレストランやフードコートではなく、テイクアウトして景色のいい場所まで走り車内で食事をすることが増えたそうだ。
「心地良い風が吹いている場所で食事をするのが気持ちいいんですよね。この1年で家族の幸福度が上がったことを実感しています」
ハイエースが納車されたのはコロナ禍の真っ只中だった。そのため遠出をすると他県ナンバーということで嫌な顔をされるのではないかと思い、実は近場にしか出かけられていないという。
今の目標は奥さんの出身地である宮崎県をドライブすること。
「宮崎にはこのクルマで走ったら気持ちいいだろうなと思える、景色がきれいな道がたくさんあるんですよ。宮崎に向かう時も途中で高速道路を降りていろいろな風景を見てみたい。いつかたっぷり時間をかけてのんびり旅を楽しみたいと思っています」
確かに納車された時はゆっくり旅を楽しむ雰囲気ではなかったが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置はすべて解除になり、ようやく好きな場所に自由に行けるようになった。
そう遠くない未来には、ユルい雰囲気をまとったこの100系ハイエースで宮崎をのんびり旅するチャンスがやってくるに違いない。
【Instagram】
pablo.h1ace
(取材・文/高橋 満<BRIDGE MAN> 撮影/篠原晃一 編集/vehiclenaviMAGAZINE編集部)
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