「生涯の相棒」なハイエースのキャンピングカーと共に楽しむ、DIYライフと至福のソロキャンプ
「このクルマに出会えたことが、自分にとって最高の幸せ。人生を楽しむために欠かせない、最高の相棒です」
愛車のハイエースを前に笑顔でそう語るのは、埼玉県在住の大谷英樹さんだ。ハイエース以他に、ルノー・メガーヌRSやトライアンフのバイクも所有しており、クルマやバイクを自分流にカスタムしたり、バイク用のガレージをDIYで製作したり、キャンプ道具を自作したり、ソロキャンプを楽しんだりと、仕事と趣味の時間を両立させながら充実した毎日を送っている。
まさに「人生を楽しんでいる」という言葉がぴったりの、趣味人だ。
大谷さんの愛車は、ハイエース・スーパーロングをベースにしたキャンピングカー。キャンピングカービルダーのRVランドが製作した、「ランドワゴン・リノ」というバンコン(バン・コンバージョン)だ。
2011年に新車で購入してから、今年で12年目。これまで12万5000kmを共に走破した、大谷さんにとってかけがえのない相棒だ。
「ルノー・メガーヌRSも所有していますが、やっぱり一番思い入れが強いのはこのクルマですね。遊びや趣味を共にしてきた大切な相棒だし、目的もなくドライブをするだけでも楽しい。運転していると、『やっぱりこれだなぁ』としっくりくるというか。ルノーとリノのどちらか1台を手放さなければいけないとしたら、迷わずルノーを選びますね」
ランドワゴン・リノは、ハイエース・スーパーロングの内装を架装したキャンピングカーだが、大谷さんの愛車はそこからさらに多数のDIYカスタムを施して、「世界に1台のオリジナル仕様」に仕上げている。ディテールにまでこだわり抜いた各部の作り込みは、DIYとは思えない完成度の高さだ。
「自分が使いやすいように、ありとあらゆる部分をカスタムしました。実用性はもちろんですが、純正のデザインを崩さない美しいビジュアルにもこだわっています」
広大な車内空間を最大限に活かした、開放感あふれるインテリア。セカンドシートの後方には大型のU字型ソファが装備され、クルマの中とは思えないほど快適な居住空間を作り出している。リアエンドにはキッチンスペースもセットされ、シートを展開すれば大人数でも就寝可能なベッドになる。
もともと8ナンバーのキャンピングカーなので、既成の状態でも十分快適に過ごせるはずだが、大谷さんはさらに自分流のカスタムを追加。例えば、ベッドスペースの邪魔にならない絶妙なサイズのテーブルは、足元をすっきりさせるためにワンオフの脚を組み合わせた、こだわりの自作アイテムだ。
MDFとビニールレザーで仕上げた、シーリングの照明パネルも自作品。LEDのダウンライトと間接照明を組み合わせ、スライドドア連動&調光式で光らせ方にもこだわった。リアエンド上部の自作スピーカーボードは、センターにブラックホールLEDをインストールすることで、さりげなく存在感を演出したのがポイントだ。
コクピットは、リアの居住空間と同様のイメージでカラーコーディネートされている。
ロングドライブも快適にこなせるように、運転席と助手席はホールド性に優れたレカロシートにコンバート。
インパネはアイボリーのビニールレザーで美しくトリムし、ウッドパネルやラムース張りのダッシュボード上部と組み合わせることで、スタイリッシュなイメージを演出した。アームレストや収納スペース、ドリンクホルダーを完備したセンターコンソールも、もちろんDIYで製作したものだ。
リアエンドには、荷物を整理して収納できる2段式のラゲッジトレーと引き出し式のスライドラックをDIYで設置。キャンプ道具などの大きな荷物もラクに積み下ろしできるように、工夫が凝らされている。
「もともとモノ作りが大好きなんです。高校時代にバイクのヘルメットを自分でペイントしたのを手始めに、バイク、クルマ、キャンプ道具など、あらゆる物に自分流のこだわりをプラスしてきました。
DIYだと手間も時間もかかるし、結果的にプロに頼むよりお金がかかってしまうこともありますが、本当の意味で『自分だけの仕様』を作り上げることができる。完成した時に味わう達成感や満足感は、何にも代えがたいものがありますね」
自分の理想のカタチに仕上げた愛車と共にソロキャンプを楽しむのが、大谷さん流のキャンピングカーライフだ。
キャンプ歴は20年以上で、昔は子どもたちと一緒にファミリーキャンプを楽しんでいたが、子どもの成長と共に気ままなソロキャンプへとスタイルが変化していったという。
混雑を避けるため、キャンプに行くのは基本的に平日のみ。愛車にお気に入りのキャンプ道具を詰め込んで前日の夜に出発し、キャンプ場の近くで前泊する。翌日は朝一番でキャンプ場にチェックインし、焚き火をしながらのんびりとした時間を過ごしてテント泊。チェックアウト後は、キャンプ場周辺の日帰り温泉に浸かって帰宅する。
キャンパーの少ない平日のフィールドで、お気に入りのギアに囲まれながら1人だけの時間を満喫する贅沢なひと時……。驚いたことに、ソロキャンプで使用するギアのほとんどは、自らの手で製作したオリジナルだという。
「仕事や日常から切り離されて自由な時間を過ごすのもソロキャンプの醍醐味ですが、『自分で作ったギアを使ってキャンプをする』のも楽しみのひとつです。キャンプで不便を感じたら、それを解消できるような道具を自作して、次のキャンプで実際に使って試す。それが、自分流のソロキャンプの楽しみ方ですね」
ほんの一部だが、いくつか大谷さんが自作したキャンプギアを紹介しよう。
まず、DIYとは思えないスタイリッシュなデザインのサイドテーブル。所有しているトライアンフのバイクをイメージして、12mm厚のベース板の上に4mm厚の板をパズルのように貼り、ユニオンジャック風のデザインに仕上げている。
テーブルの上に置かれたキャンドルランタンは、キャンプ場に落ちている枝をホットボンドで接着したもの。キャンドルに火をともすと、枝のすき間から漏れる柔らかな光が、テーブルの周囲を優しく照らし出す。
キャンプ道具の運搬に使用するキャリーカートも、大谷さんの手にかかればアッという間に便利な収納付きテーブルに早変わりする。天板の上にあるコーヒードリッパーやシングルバーナー用の風よけも、すべて自然の素材を活かした自作ギアだ。
「キャリーカートはとても便利で活躍する機会も多いのですが、荷物を運び終えた後でただ置いておくのはもったいない。そこで、カートのサイズにピッタリ合う天板を作って、サイドに小物用ラックを装着できる有孔ボードを設置しました。ちょっとしたアイデアですが、これだけでもコーヒータイムや調理をする際に十分使えるスペースになります」
ハイエース・スーパーロングをベースにしたキャンピングカーで、DIYライフとソロキャンプライフを満喫している大谷さん。趣味やキャンプで膨大な時間を共にしてきたランドワゴン・リノは、大谷さんにとって「生涯の相棒」と言える1台だ。
「新車から乗り始めて12年目になりますが、まったく飽きないし、乗っているだけで楽しい。家族には『もし自分が死んだら、このクルマで葬儀場に運んでほしい』と話しています(笑)。大げさではなく、自分にとってこのクルマは、それほど特別な存在なんです。走行距離が20万kmを超えても、ずっとそばで一緒に時間を重ねていってほしいですね」
(取材・文:岩田一成 / 撮影:佐藤亮太 / 編集:ダズ)
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