ホンダ好きになったきっかけのシビックに原点回帰。シビックタイプR(FK2)で楽しむ素敵なカーライフ
ホンダ好きな方には、ホンダ車一筋という方が本当に多い。そしてそんな方々が共通して話す理由は、本田宗一郎氏の独自の経営理念や人生哲学に対するリスペクトだ。
そしてスーパー耐久第5戦ツインリングもてぎで出会った千葉県在住のmugen-cd6さん(55歳)もこれまでホンダ車一筋で、現在はシビックタイプR(FK2)を愛車に持つ。
FK2型のシビックタイプRは、日本には2016年に抽選で750台のみ販売された超希少な限定モデルで、当時の抽選倍率は10倍以上。
mugen-cd6さんは、なぜ中古車市場で高騰している希少なFK2型シビックタイプRを愛車として選んだのか、そしてホンダ車に惹かれるその理由についてお話を伺った。
「私が免許を取得して一番最初に乗ったクルマが、ハッチバック型のシビックのSiRでした。で、その頃からJTCCが好きになってこういう普通のタイプのクルマがいいなと思い、アコードのSiRに乗りました。これは知るひとぞ知る…というクルマだったと思います。その後はSUVのアヴァンシアにスポーツカーのS2000、そしてファミリーカーとしてステップワゴンを買いこれを今でも所有しています。そしてこれに3年前、このシビックタイプRを増車したわけです」
JTCCは1994年から1998年まで開催された全日本ツーリングカー選手権のことで、4ドアセダン以上で2L以下の自然吸気エンジンが対象のレース。オーナーの“普通のタイプのクルマ”とはガチガチの2ドアスポーツカーではなく、JTCCに参戦していたようなスポーツ性能の高い4ドア車ということだろう。
そして冒頭でご紹介したとおり、彼のこれまでの愛車はすべてホンダ車。興味を持ったきっかけは、最初にシビックに乗ったことだったのだという。
「当時はまだ本田宗一郎さんがご存命で、彼が書いたいろんな書物を読んで“負けるものか、根性でいつかはてっぺんに登ってやる”というようなフィロソフィに共感しまして。私自身も這い上がるタイプなので…。もちろんトヨタさんを始め他メーカーの経営者の方にもそれぞれのポリシーがるのはわかるんですが、自分は気がつけば本田宗一郎さんの本ばかり読み漁っていましたね」
mugen-cd6さんのホンダ車愛の根底にあるのは、やはり本田宗一郎氏へのリスペクトなのだ。
ちなみにそんな父親の背中を見て育った息子さんは、ご自身の意志で現在はホンダディーラーに就職。現在は営業マンをされているのだというから、親子揃って生粋のホンダ党というわけだ。
そんなmugen-cd6さんがこのFK2型シビックタイプRを購入したのは、3年前の2020年のこと。
「それまではファミリーカーとしてのホンダステップワゴンだけだったのですが、子育てもひと段落ついたので、最後にもう一度マニュアル車に乗りたいなって思いまして。まあ、よく聞くような話だと思いますが(笑)。
自分は70歳までクルマに乗ったら免許を返納しようと思っているんですね。であればそれまではマニュアルのスポーツカーで運転を楽しみたいなと。そして買うなら自分の原点であるシビックに戻りたいと思ったんです。
私にとってのシビックの形はこのハッチバックの丸っぽいスタイル。その中でスポーツカーとなると多少お金がかかってもこのFK2型に乗りたいと思い、中古で探しました。正直これを買う時には次の型のタイプRも発売されていたんですが、そっちを買おうとはまったく思わなかったです」
そしてmugen-cd6さんが探し出して購入したクルマが、この2016年式ホンダ・シビックタイプR(FK2)。走行距離3000kmという極上の新古車だ。
2016年に国内750台の限定発売となったFK2型のシビックタイプRは、欧州仕様の5ドアハッチバックをベースに2リッターVTECターボエンジンを搭載。最高出力は310psで、2015年にニュルブルクリンク北コースの最速タイムを更新したことも話題となった。
「今はスポーツカーが高騰していますが、このクルマを買った2020年頃はちょうどその価格高騰が始まったころで、このクルマも新車価格より100万円くらい高くて500万円を超えていたんですね。妻には『500万円あれば他にいいの買えるじゃん』て言われたんですけど、『俺はこれがいいんだ』って言い切りました(笑)」
こうして、価格高騰の波に負けずにハッチバック仕様のシビックタイプRというマニュアルスポーツカーを手に入れた、mugen-cd6さん。実際に乗ってみてその期待通りの乗り味を感じることができたのだろうか。
「正直、これまではここまで過激なクルマに乗ったことがなかったので、すごく刺激的でしたね。というのも、私の中でホンダのスポーツカーは昔の若い頃で止まっていて、当時は高回転で回してっていうクルマばかり乗っていましたから。でもこのクルマは刺激的ではあるけれどもクラッチもすぐ繋がるし運転がすごい楽だなって」
どうやら、ご本人の期待に見合う楽しいスポーツカーだったようだ。
そんなmugen-cd6さんのシビックは、基本的にはノーマルのままステッカーでドレスアップするスタイル。唯一、内外装で社外パーツにしているのがホイールとタイヤだ。
「前オーナーが乗っていなかったからか、買った時のタイヤが硬くてゴツゴツした感じがありまして…。そこで半年ほど前にタイヤを最近評判の良いミシュランに換えたんです。でも純正の19インチだと扁平が薄くてサーキットで走ると縁石でガリっとやりそうになるので、18インチに落として扁平を厚くしてタイヤの幅も少し広げてみました。そうしたら然乗り心地が良くなって、高級なクルマになりました。しかもサーキットを走ってもちゃんとグリップがしてくれるので乗っていて楽しくなりましたね。
そしてタイヤを18インチにしたことでホイールも変えなきゃならない。ちょうどその頃スーパー耐久に参戦するHRDCチームがBBSさんと組んだので、自分もBBSを履こうかなって。ただ、このクルマに合う少し前の世代のBBSホイールで、サイズが合うものを探して探して探して…。ようやく見つかったのがこれでした」
HRDC=Honda R&D Challengeはホンダの従業員が有志で立ち上げたプライベートチームで、mugen-cd6さんのホンダ愛が垣間見える素敵なエピソードといえる。
そしてそんな彼の愛情は、スポーティな雰囲気を演出する自作ステッカーにも表れている。
「昔からステッカーを貼るのが好きで、ヘルメットも全部ステッカー施工です。ボディへのステッカーの貼り方はお手本があるのでそれに倣って貼っているのですが、HRCのステッカ-はこれより小さいサイズしかなかったので、これだけは目立たせたいと自分でサイズを測って艶消しのシートを買ってきて自作しました」
mugen-cd6さんは、普段は電車通勤のためこのクルマを動かすのは月に1回ほどで、走る時はお気に入りのグローブを装着。またせっかくのマニュアルスポーツカーということで、サーキット走行も楽しむようになったそうだ。
「サーキットを走るのは動体視力や体が衰えないようするためですね。このクルマでは袖ヶ浦のサーキットを中心にあちこちで走っています。ただ、今はちょっと脊髄を痛めていてドクターストップでお休みしていますが…(苦笑)」
とはいえ、エンジン関係では吸気系とコンピューターを交換して走りを楽しむセッティングにしていることからも、それなりに本気で楽しんでいる様子が伺える。
ちなみに月一回の走行程度にもかかわらず取材時の走行距離が2万4000kmと3年間の間に伸びたのは、息子さんが一時期通勤用に使っていたからなのだとか。
「買ってからしばらくはホンダディーラー勤めの息子が通勤で使っていたんですが、『いい加減自分のクルマを買った方がいい』と説得しまして、最近になって息子は新型シビックを買いましたね。それからこのクルマは大体月1稼働です」
また、趣味のひとつでもあるレース観戦はしばらく離れていたものの、このシビックに乗るようになってから再び楽しむようになったという。
「1999年くらいまでは妻とよくレース観戦を楽しんでいました。ただ、妻は元トヨタのディーラー勤めだったので、レース結果によっては帰りの空気が重かったですね(笑)。子育てが落ち着いてこのクルマを買ってから最近またよく観戦に行くようになりました」
生粋のホンダファンのmugen-cd6さんは、ホンダの本拠地ツインリンクもてぎで開催されたこのS耐第5戦でもお気に入りのホンダシャツを着て、一見関係者かと見間違えそうなくらい様になっていたのが印象的だ。
そんなmugen-cd6さんは、今後のカーライフについても素敵なプランを立てている。
「実はこのクルマをあと数年乗ったら、最後は上がりの1台としてNSXに乗りたいなと思っています。で、70歳になったらスパッと免許返納したいと。それにその頃にはレシプロエンジンやマニュアル車も無くなっちゃうかもしれないですよね。だからこそ今のうちは運転が楽しいマニュアル車に乗っていたいんですよ」
そう嬉しそうに目を細めて話してくれた。
ホンダ車一筋で愛車のシビックタイプRにも自作のHRCステッカーを貼り、ホンダレーシングのTシャツを着てレース観戦も楽しむmugen-cd6さんを見ていると、改めて本田宗一郎という人の途轍もない影響力と偉大さを感じずにはいられない。世の中にはmugen-cd6のような方がまだまだたくさんいるのだから。
そしてこのFK2型のシビックタイプRは、そんなmugen-cd6にとっては走る楽しさを教えてくれた原点回帰のクルマでもあり、いつかNSXに乗り替えるその日まで唯一無二の愛車であり続けることだろう。
(文:西本尚恵 写真:中村レオ)
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