9台目となるワンダーシビックSi。35年間乗り続けようと思った理由



輸入車専門店で働いていた頃、お客様の下取り車として入ってきたというワンダーシビック。そのクルマに営業車として乗ったことが、「上さん」がその後9台もワンダーシビックを乗り継ぐキッカケとなったそうです。暖気は不要だし、乗り心地も良い。壊れないし、扱いやすく、最高だと話してくれました。

今回は、上さん×ワンダーシビック の お話をお届けします。

―――営業車として乗り始めたのが、そもそものキッカケだったのですね。

そうです。だから、乗りたくて乗ったというわけではなく、とりあえずという感じでした。でも、乗ってみるとサイズ感も丁度良いし、お客様のところに行く時も角が立たなくて無難なキャラクターなので、2台目の社用車もワンダーシビックにしたというわけです。

今はとんでもなく高値になっちゃったんですけど、2台目を購入した30年前は底値の20万円で、お財布事情的にもちょうど良かったですしね。

―――ちなみに、今は何台目のワンダーシビックなのですか?

9台目です。

―――えっ!?先ほど、とりあえず乗ったとおっしゃっていましたが……大好きですよね?

……はい。というのも、2台目から、徐々にこのクルマの良さに気付き始めていったんです。まずは、よくよく見るとデザインがとても良かった。平べったくて、リアはストンと切り落としたみたいにカクカクしていて、シンプルなんだけど全てが四角いフォルムは、一目見てワンダーシビックと分かる唯一無二の外観だなと感じるようになりました。

次にエンジン。9台とも全て“Siグレード”を選んでいるのは、載っているエンジンがF1技術を投入した1.6L DOHCのZC型で、これに惚れ込んでしまって抜け出せなくなってしまったからなんです。

軽くてよく回るし、何より速い!ハンドリングも特徴的で、FFだから踏んで曲げていくというか、切り込んでいくのが面白くてね。限界を越えてしまうと外に振られてしまうから、クルマの性質を理解しながら走るというのも楽しかったんですよ。

―――もしかして、9台も乗り換えているのは少々ヤンチャな走りをしたからですか?

いやいや!全くそんなことはなくて、ずっとワンダーシビックに乗っていたいからこそ、程度がいいのが見つかると乗り換えるという感じなんです。むしろ、部品も出なくなってきているから、維持のことを考えて丁寧に乗るタイプかと思います。

―――スポーティーな無限のエアロでカスタムされていたので、そうなのかな?と勝手に思っておりました。

あはは(笑)。それでいくとね、この無限のエアロは、4台目から大切にずっと引き継いでいるんですよ。かれこれ20年くらいこのスタイルを貫き通しているから、長い付き合いの友人ですら箱が変わったことに気付かないくらい。1台1台を大切に乗って、乗り換える度にパーツを移植しています。

―――でも、ボディの色合いで分かりそうな気も……?

購入すると、すぐに真っ白にオールペンして、無限のエアロを取り付けちゃうんです。個人的に色がガチャガチャしているのが嫌いなので、できるだけ1つの色でシンプルにまとめたいということもあり、ウィンカーのレンズもオレンジから透明に変えるんです。

ちなみに、ボディの白にもこだわりがあって、パールも何も混ざっていない、そのままベタっと塗ったような白にすると決めています。

―――ボディの劣化具合で分かるのでは?と思っていたけど、それなら気付けませんね……。

なんせ、外観だけだと僕ですらどこが変わったのか分からないくらいですから(笑)。ファッションや髪型と一緒で、これじゃないとだめ!というのが自分の中にあるんです。なにより、ずっと同じ白を使っていると、色合わせやリペアがしやすいし、維持するにはもってこいという利点もあるんですよ。

そういう風に乗っていたんですけど、8台目のシビックがフロント部分に突っ込まれて壊れてしまった時、流石に降りてしまおうと思いましたね。その時はすでに旧車ブームで良い個体も見つからなかったし、全部が嫌になってしまって、修復歴をこまめに載せていたサイトも削除してしまいました。

―――また乗ろうと思ったのはなぜですか?

同じワンダーシビック乗りの友人が、「僕のをお譲りしますから、まだ降りてはダメです!」と言ってくれたんです。それでもう一度乗ってみようかなと思ったというのと、詰まるところ……。これが1番の理由なのですが、このクルマが好きなんでしょうね。

ワンダーシビックでないとダメな“何か”が絶対的に自分の中にあるんですよ。新型車のような快適装備はないし、安全装備もない。速いか?と言われると敵わないかもしれないけど、それでも楽しいと思わせてくれるクルマなんです。だから、僕はこれからもワンダーシビックに乗り続けますよ。

オフ会に参加したり、スーパーへの買い物など家車としても使っているため、メンテナンスをしっかりしながら乗り続けていきたいということです。

35年前に出会ったワンダーシビックは、気付けば奥様よりも付き合いが長く、離れられない存在と話してくれた上さん。これからも、大切に楽しんで乗っていくそうです。

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さん

(文:矢田部明子)