若き日産レパード乗りたちの『あぶ刑事』&クルマ愛 気分はタカ&ユージ
1986年にスタートし、過激なアクションと演出で大人気となったテレビドラマ『あぶない刑事』。そこに“劇中車”として登場する代表的なクルマがニッサン・レパードで、ドラマのブームに乗じてレパードの人気も高まったという逸話を持つほどだ。
のちにシリーズ化や映画化されたとはいえ、この話が刺さるのは40歳代以上のジェネレーションかと思うが、なんと『クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023』で出会った2人の若きレパードオーナーも『あぶ刑事』にハマったのがキッカケでクルマを手に入れたという。
取材日から遡ること4年前、森さんが19歳の時に初めての愛車として購入したのがレパードだった。
レパードを探し始めた当時、相場は既に300万円台からといった感じに高騰していて、購入は半ば諦めかけていたが、インターネットの個人売買に格安で出品されていたのを発見。出品者さんが遠方だったこともあって、初めてのクルマ購入にも関わらず現車を見ることなく購入を決めたのがこのクルマというわけだ。
コツコツと貯めてきたアルバイト代のすべてを投入することに緊張したし、周囲にも心配されたけれど、何より運命を感じたのだから仕方ない。
そうして手元にやってきたレパードは「値段なり」といったヤレ具合で、出品者さんからは「不具合はない」と聞いていたものの、受け取って1週間ほどで動かなくなってしまったという…。
「まあ、少しずつ直していくのも楽しみのひとつかな」と割り切って、自分で直せる所はなるべく自力で修復していくことを決意し、これまで手を入れてきた部分は、オイル漏れ、タイミングベルト交換、冷却系のリフレッシュ、足まわりや内装の手直しに、バンパーリップの自家塗装など、すべてを挙げたらキリがない。
「つい最近は、ブレーキが固着してしまったので、直すついでにR32用キャリパーを移植しました」といった感じで、修理ついでにグレードアップするという、タダでは起き上がらないという術も身につけたという。
“手のかかる子ほど可愛い”とはよく言ったもので、通勤からレジャー、ドライブなどフル活用しているので、購入時に11万kmだった走行距離は、みるみる増えて、現在では16.6万kmまで増えたという。
実は森さんとレパードとの縁は長く、かつてお父さんの愛車もレパードだったこともあり、その頃の写真を見て「カッコいい!」と、幼い頃から憧れを抱いていたそうだ。そして高校を卒業後に自動車整備専門学校へと進学すると、『あぶない刑事』の映像を見てますますレパードに惚れ込んでいったのだとか。
現在は、自動車の開発系の仕事に就いたばかりの社会人1年生だが、仕事の内容とは反対にその興味は古いクルマの事ばかりである。
例えばこの『ボルクレーシング・グループA』は30年ほど前のホイールだが、ネットオークションで見つけて、初任給が出る前に買ってしまったという思い出のアイテム。「あの頃の若者だったら、きっとこんな感じだったんだろうなぁ」と思いを馳せながら、当時モノにこだわったカスタムを意識しているという。
かつてレパードオーナーだったお父さんのお下がりパーツも大切に受け継いでいる。PIAAのエアロワイパーはかなり昔に廃番になった商品だが、直射日光が当たらないように保管されていたこともあってか、まったく劣化していなかったという逸品で、今でも愛用。汎用ルームミラーも父から譲り受け、親子2代での「レパード愛」をしっかりと継承している。
そんな『2000ccターボ』の森さん(右)に対し、多摩川さんのレパード(左)はおなじ1991年式でありながら『3000ccのNA』という仕様。
多摩川さんがクルマ好きになったキッカケは、自動車メーカー勤務のお父さんの影響。ギャランやレグナムといったスポーツ志向のクルマが多かったので、やはりその手のクルマが好きになったという。初めての愛車は「本当はレパードが欲しかったけれど、その時期、映画『さらばあぶない刑事』の影響もあってか、中古車価格は400~500万円くらいまで高騰していて金銭的に困難だったので、レグナムを購入しました」とのこと。
「中学校時代にお世話になった先生が、とにかく刑事ドラマ大好きで、とくに『あぶない刑事』がお気に入りだったんです。自分は放送委員だったのですが、その先生が担当で、校内放送のBGMに『あぶ刑事』のオープニングテーマを使っていたくらいですからネ。放送室の棚をよく見ていたら、先生のコレクションである『あぶ刑事』の録画ビデオがいっぱい保管されていたんです。そんな流れで、先生に薦められてビデオを借りているうちに、後期のダークブルーツートンのレパードに惚れ込みました。『あぶ刑事』と言うと前期のゴールドが有名ですけど、自分的には後期が好きなんです。そして、劇中車と同じアルティマを探したんですが、高騰しすぎていて買えませんでした」
やむを得ず、探す条件を“後期のフルノーマル”へと緩和し、業販オークションで見つけたのが現在の愛車となった。
憧れのクルマを手にして約1年。「ビデオで見た、『あぶ刑事』の主役になったような気分を味わっています。当時の映像から30年も経っているので、昔のままの景観が残っている場所は減っていますけど、横浜方面へ行って、中華街や山下公園など、ドラマのロケ地を聖地巡礼するのが楽しいですね。このクルマを通じて仲間が増えたというのも、購入して良かったと思えるポイントです!」
その一方でマシントラブルも多く、僅か1年余りの間にエンジンが止まるという経験を4回も味わっているという。それらの原因は、パワートランジスタの不調、クランク角センサーの不良、水温センサーや配線コネクタの不良といったもので、総じて電気系のトラブルが多い模様。
「走行距離はまだ9万kmなので、これでもトラブルは少ない方じゃないですかね? これから色々なトラブルが出てくるんだろうな…」と語る多摩川さん。レパードの純正部品も入手しにくくなってきているので、現物を修復したり、リビルト品を活用するなどはもちろん、他車パーツの流用もカギになってくるはずだ。
「まず、しばらくはフルノーマルで乗ろうと決めていました。それから1年が経ったので、ぼちぼち自分らしくイジっていこうかな、と。劇中車はサンルーフ付きだったり、ターボエンジンだったりするので、自分のクルマでは劇中車になりきれないんです。なので開き直って、車高を下げてカッコいいホイールを履いたり、アルティマターボ仕様にして、ちょっと悪っぽくするのもアリかなと思っています…と、言ってはみましたが、やっぱり最初の憧れが『あぶ刑事』のノーマル車なので、オリジナルを崩したくないというジレンマにも陥っているんですけどネ!」
そして、そんなアツい20代のふたりを楽しそうに見守っていたのは、この日のイベントに一緒に参加していたレパードのベテランオーナーさんたち。その優しい目線と雰囲気が、おなじ趣味があれば年齢も住んでいる場所も関係なく一緒に楽しむ仲間になることができるのだということを無言で語ってくれた。
30年以上も前のクルマと刑事ドラマが与える影響力や、人を繋ぐ縁。なんだか、これこそ“ドラマチック”な展開ではないだろうか。
取材協力:クラシックカーヘリテイジカーミーティングTTCM2023
(文:TOKYO CIAO MEDIA / 撮影:岩島浩樹)
[GAZOO編集部]
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