10年前、ロードスターに憧れるキッカケを与えた個体との運命の再会、そして愛車に
物事がトントン拍子に進む時はたいてい運や巡り合わせが良かったりするものだ。「まさか10年前にロードスターに憧れるきっかけとなった1台に、自分がオーナーとして乗ることになるなんて」と、運命的な巡り合わせで愛車のロードスター(NA6CE)を手に入れたのが、今回ご紹介する熊本県阿蘇郡在住の高村喜威(よしたけ)さん(50才)だ。
高村さんがこのロードスターを手にいれるに至るまでの経緯、そしてそのロードスターを手に入れてから一変したという彼のカーライフをご紹介しよう。
青いけど赤い糸でむすばれている
高村さんのカーライフは、音楽好きとクルマ好きがたくさんいる大手カーオディオメーカーに就職した20才の時にスタートする。小学生のころからクルマのプラモデルを作って遊んで育ち、ドラムも嗜む音楽好きの高村さんにとっては、ドンピシャな職場だったという。
「就職してすぐクルマが欲しくなり、当時のRVブームにのって最初に買ったのがトヨタ・ハイラックスでした。モトクロッサーとかを積んで遊びに行っていましたね。そのあと結婚して子供が生まれたのでホンダのSMXをファミリーカーとして2年くらい、さらに2人目ができてからは日産セレナを2台トータルで16年乗っていました。そのあとは生活環境の変化に合わせて燃費のいいプリウスに乗り替えたんですよ」
「セレナに乗っている頃にSNSの『みんカラ』に出会って、セレナつながりで全国に友達ができたんです。それまで遠出はあまりしたことがなかったんですけど、熊本から東京まで走って会いに行ったりするようになりました」
家族を第一にファミリーカーをチョイスしながらも、クルマ繋がりの友だちを増やすなど充実したカーライフを送っていたようだ。
そして、セレナに乗っていた当時、近所に住んでいたロードスター乗りの先輩の横に乗って九州最大のロードスターイベント『ロードスタージャンボリー』に同行したことがあり、それが今の愛車との最初の出会いとなる。
「鶴亀幌車愛好会というオーナーズクラブのみなさんにご一緒させていただいたんですけど、そのロードスター軍団がとにかくカッコよくて、それからロードスターが僕の憧れになりました。ただ、子供3人いるのに2人乗りのクルマを買いたいなんて嫁さんには言えず、いつかは欲しいなという憧れだけを持ち続けている状態でしたね」
そして時は経ち、子供たちが大きくなり、25年間在籍した消防団を退団したことを機に『自分へのご褒美』としてついに憧れのロードスターを購入しようと行動を開始したのが2年ほど前の話だという。
「探し始めた頃に、たまたま近所をウォーキングしていたロードスターの先輩にバッタリ会ったのでそのことを話たら『昨日のツルカメのブログに、NAが売りに出とると書いてたよ! 行くしかないばい!』と教えてくれたんです。こんなチャンスは2度とないと思ってすぐに連絡をとったんです。そして、その売りに出ているクルマというのが、10年前に憧れたロードスター軍団の中の1台だということがわかったときには『なんという偶然のめぐりあわせだろうか!』と胸が熱くなりました。うちの奥様にも了承を得て、晴れて我が家にやってきたわけです」
このロードスターの初代オーナーは鶴亀幌車愛好会代表の息子さんで、次に乗っていたオーナーさんが諸事情により手放すことになり、引き取り先を探すべくオーナーズクラブのブログで告知を掲載したのだという。
しかも、先輩が“ロードスター売りたし”の告知ブログを見つけたキッカケは、高村さんが偶然地元のテレビ番組に映ったのを見た愛好会の代表が「高村さんが映っていたねー」と先輩に連絡をしたからだというから、まるでドラマや小説のような話だ。
つまり、高村さんがロードスターを探し始めたタイミングに、たまたま高村さんがテレビ番組に出演しているのを鶴亀幌車愛好会の代表が見つけたこと、その話を聞いた高村さんの先輩が懐かしさから久々にツルカメブログに目を通したこと、そこでたまたまロードスター売り出しの告知ブログがアップされていたこと、そして先輩がブログを見た翌日に高村さんと会ってロードスターの話になったことと、さまざまな偶然が重なって、高村さんの手にこのロードスターが渡ったというわけだ。
しかもその売り出し車両が、自分がロードスターを手に入れたいと思うようになったキッカケを作った1台だというのだから、高村さんが運命を感じるのも当然と言えるだろう。
謳歌する
憧れのロードスターを最高の形で手にしたことにより、高村さんの生活は大きく変化していく。
「とにかくめちゃくちゃ楽しいですね! それまでもいろんなクルマの繋がりがいっぱいあってミーティングに遊びに行くのも楽しかったんですけど、ロードスターは世界が全然違うんです。例えば僕は阿蘇山の周りに住んでいて今まで何度も走っていたはずなのに、ロードスターに乗ると景色がまったく違う。何時間でも走っていたくなるんです。それにツルカメの仲間たちと一緒にいろんなところにツーリングに行くんですけどそれもすごくおもしろいんですよね。ロードスター乗りが集まるところに行くといろんな人と出会うんですよ。みんな、ロードスターへの愛し方がハンパなくて、エンジンまでピカピカだったりと、僕はこれまでそんな人たちとあまり会ったことがなかったので感動しましたね」
ちなみに、高村さんが着ているMA-1のジャンバーは、鶴亀幌車愛好会10周年を記念して作ったもので、愛好会メンバーとの集合写真も大事な記念だ。
そしてすっかりロードスターにハマった高村さんが、最近特に楽しんでいるのが『ロドキャン』と呼んでいるキャンプ。積載スペースが少なくキャンプ向きではないと思えるロードスターだが、高村さんによると「これが結構載るんですよ!」とのこと。
「ロドキャンは多い時はいろんなところで月3回くらいやります。寒い中で冬キャンプするのも楽しいですよ。家族は今は誘っても誰も行かないので、ソロキャンプする先輩と一緒に阿蘇山周辺でグループキャンプすることが多いですね」
最近のキャンプ道具はコンパクトで性能のいいものがたくさん出ていることもあり、ソロキャンプなら十分楽しめるというのも納得だ。
そしてもうひとつ、高村さんが力を入れていることがある。それがロードスターから体感できる阿蘇の魅力をYouTubeで配信することだ。
「一昨年の冬にカメラを付けて阿蘇を走ったら、めっちゃ綺麗だったので、阿蘇を知らない人にもその景色をぜひ見て欲しいなと思ったんです。その冬は時間もあったので映像があるならユーチューブをやってみようかなと思い『喜チャンネル』を立ち上げました。阿蘇ってこのあいだも噴火があったりして観光客が遠のいたりしているので、阿蘇のいいところを発信して少しでも地元を盛り上げられたらという想いもありましたね。それに、ロードスターをオープン状態にして走りながら撮る映像は、屋根の上で撮るのとはまた違った良さがあるんですよ!」
高村さんのユーチューブチャンネルで公開されている動画を拝見してみると、オープンカーならではの開放感あふれる映像が並んでいる。
大好きなロードスターで大好きな阿蘇の魅力を配信する、そんな充実したカーライフを送る高村さんに、愛車のお気に入り部分や注目ポイントを伺った。
「一番は少し前に悩みに悩んで買ったカーメイクコーンズさんの鉄チン風のホイールです。同じ色のデモカーにこのブロンズのホイールが装着されているのを見て、一目惚れしてスタッドレス用として購入しました。うちは阿蘇の麓なので冬は凍結するんですけど、バリバリ走りたいので。ちなみに夏はワークのエクイップ01を気に入って装着してます! あとはメーターパネルをロードスター用にオリジナル制作しているオープンカフェガレージさんのものに変えています。そのほか内装はそんなにいじっていないけど、カメラがごちゃごちゃ付いているところは僕の活動ならではですよね」
ちなみに高村さんのロードスターは、そのほかにも車高調やマフラー、ステアリングなどが交換されていて、タワーバーなどのボディ強化パーツも追加されているが、これらはすべて初代のオーナーである鶴亀幌車愛好会代表の息子さんが乗っていた時に行ったカスタムだという。自分で乗る前に愛車に取り付けられたパーツやその経緯を直接聞いて知ることができるのも、高村さんにとってはとても有益だ。
「メンテナンスは同級生が整備工場をやっているのでそこに持っていったりもするけど、クルマをバラすのは得意なので自分でもやります。買ってすぐ壊れたエアコンも自分でなおしましたよ」
実は高村さんの本職は70年ほど続く老舗の電気屋さん。当然エアコンの修理もお手のモノというわけだ。
「ぼくは仕事でも3代目で、このロードスターオーナーとしても3人目にあたるので、周りからは“3代目”と呼ばれています(笑)。今後やってみたいことですか? ロドキャンで富士のキャンプ場をはじめ、遠くまでキャンプしに行きたいですね。走行距離数はもう23万キロになるけど、まだ手に入れて2年ですし、このロードスターにまだまだ長く乗り続けていたいです。あと、このクルマの初代オーナーにもたまに会うんですけど『これだけ楽しんでくれたらこっちも嬉しいよ』と言ってくれるのが僕も嬉しいですね」
偶然の巡り合わせが重なり高村さんの手元にやってきた憧れのロードスターは、新たな大切な仲間との出会いやロドキャン遊び、阿蘇の魅力を配信するYouTuber活動など、彼の世界をプラス方向に大きく変化させた。そしてきっとこれからもっと高村さんに新しい世界を見せるきっかけを与え続けるに違いない。
このロードスターと高村さんは、きっと出会うべくして出会う運命だったのだ。
取材協力:鹿児島県立吉野公園
(文: 西本尚恵/ 撮影: 西野キヨシ)
[GAZOO編集部]
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