相棒として19年、リトラ&タルガトップにこだわって手に入れた“永遠のセカンドカー ホンダNSX
クルマ好きなら誰しも、いつかは手に入れたいと夢見る憧れの1台が存在するはずだ。
その憧れの対象が新車で購入可能な現行モデルならば予算や環境さえ整えば購入することが可能だが、販売終了したモデルでなおかつ人気の車種となるとそのハードルはどんどん高くなっていく。そもそも中古車は市場で出回っている数に限りがあり、さらに年式やグレード、走行距離やメンテナンス歴といったコンディションまで吟味すると、理想の個体を見つけるのはまさに“宝探し”のようなものだろう。
そんな千載一遇の“宝物”と巡り合い、愛車として迎え入れたのがmiraiさん。愛車は1995年式のホンダ・NSXタイプT(NA1)だ。
ホンダ・NSXの初代モデルは1990年から販売が開始され、2006年まで販売され続けたロングセラー。当時量産市販車としては初となるオールアルミモノコックボディを採用し、さらにアイルトン・セナや中嶋悟といったF1のトップドライバーが走行テストに参加したことも話題を呼んだミッドシップスポーツだ。現在も世界中で高い人気を集めプレミア価格で取り引されている。
そんなNSXをmiraiさんが手に入れたのは今から19年前となる2004年のこと。
タイミング的には新車販売もギリギリ行われていたものの、マイナーチェンジによって固定ライトに変更されており、リトラクタブルモデルでなおかつタルガトップを採用する『タイプT』にターゲットを絞っていたmirai さんにとっては対象外。必然的に中古車を探すしかない状態となっていたのだ。
「小学生のころにスーパーカーブームを経験していたので、やっぱりリトラクタブルライトは憧れの存在でしたね。その後、1980年代の終わりにホンダの第二期F1ブームが起こって、ホンダ車への興味が湧いてきたんですよ。つまり、リトラとホンダという組み合わせは、自分の欲求をすべて満たしてくれる最高傑作というわけなんです。だから自分の希望通りのモデルが見つかった時は、このチャンスを逃したら2度と出会えないと思って購入しちゃいました」
リトラクタブルライトはNSX人気を支えるアイデンティティでもあり、さらに低く構えた2ドアクーペのフォルムや、ミッドシップレイアウトに合わせて設けられた吸気/冷却系への導風ダクトデザインなど、そのスタイリッシュなデザインは現行車にもひけをとらない。加えてVTECエンジンの軽快かつ刺激的な走りを併せ持つのだから、日本を代表する名車として数えられるのも納得というものだ。
そんな完成された純正のスタイリングには極力手を加えず、純正やそれに準じた部品を使用しながらヤレた部分を手直ししていくのがmiraiさん流。
足まわりはホンダ純正アクセサリーメーカーのホンダアクセスが販売していたサスペンションキットを利用してリフレッシュ。トランクスポイラーもおなじくホンダアクセスから発売されていたオプションパーツを装着している。
オリジナルにこだわっているのはインテリアも同様で、純正のカセットデッキやCDチェンジャーも当時のまま。ただし当然ながら長年乗り続けていると各部の経年劣化やダメージはあらわれてくるもので、CDチェンジャーは故障しており、学生時代の思い出の曲が詰まった当時モノのカセットテープを今でもよく聴いているのだとか。
また、使い込んだシートやステアリングにもダメージが蓄積していたそうで「運転席は専門のお店で3年前に張り替えてもらったんですよ。予算の都合で助手席までは手をつけられませんでしたけど(汗)。それからステアリングも先月に張り替えが完了したばかりです。どちらも純正リフレッシュなので大きな代わり映えはないのですが、身の回りのヤレがなくなったので気分も一新できた感じですね」
ちなみにNSXには2つのパワーユニットが存在しており、1990年〜1997年までの1型ではV6 3.0L DOHC VTECのC30A型エンジンのみ、それ以降はV6 3.2L DOHC VTECのC32B型も併売されていた。miraiさんのNSXはC30Aエンジン搭載のATミッションモデル。エンジンルーム内に装着されている三角形のタワーバーはタイプTのみに与えられた装備で、タルガトップ化によるボディ剛性の低下を補うためのパーツなのだとか。
mirai さんがリトラクタブルライトと共にこだわったのが、脱着式ルーフを装備するタルガトップモデルであること。
「長期の休みを利用して、これまで北は北海道から南は四国あたりまでツーリングに出かけていますが、やっぱり景色がいいところはオープンで走ると気持ちいいんですよ。タルガだと屋根の閉まりや雨漏りを懸念して開けないって人が多いって聞きますが、せっかくなんだから満喫したいじゃないですか。気候的に開けて気持ちよく走れるタイミングは春と秋くらいなんですが、それでもオープンエアで走る気持ちよさは格別ですよ」
愛車として迎え入れてから19年、ドライブが大好きだというmiraiさんのNSXは購入時の3万5000キロから18万キロオーバーまで走行距離を伸ばしているという。
「飾っておくならスケールモデルで十分だし、好きなクルマは実際に走らせてナンボじゃないですか。逆に所有していて走らせないなんてもったいないですよ」
そんなmiraiさんの愛車として万全のコンディションを保ちながら乗り続けるには、希少なクルマだけに部品調達やメンテナンスのために横の繋がりも重要となる。そのため日本最大のNSXオーナーズクラブ『NSXクラブオブジャパン』に加入しているのはもちろん、2022年まで開催されていたホンダ主催のイベント『fiesta』にも欠かさず参加してきたという。
そして、そこで繋がりを持った仲間と情報交換することで、パーツを入手したり信頼できる主治医をみつけることができたそうだ。
「昨年はいろんなアクシデントがあって、NSX独特の持病などもひと通り経験しましたね。でもパーツもなんとか入手できて復活できたので、今はひと安心です。憧れていたクルマなんだから、もう直すことができないって状態になるまで乗り続けたいじゃないですか。そういった意味でもホンダがリフレッシュプランを展開してくれたのはうれしい限りです。さらにNSX乗りのあいだで“駆け込み寺”のような存在になっている埼玉県のT3TECでメンテナンスをお願いしていますが、信頼できるショップを見つけられたことも乗り続けるためのモチベーションに繋がっていますね」
「免許を取ってはじめてのクルマはグランドシビックを購入しました。以来ずっとホンダ車に乗り継いでいるんですが、基本的にはマイカー通勤だったこともあり、どの愛車も走行距離はグングン伸びていっちゃって。以前に乗っていたプレリュードは33万キロまで頑張ってくれましたよ。NSXに長く乗り続けることを考えて普段乗りのために増車したCR-Z(ZF1)も13年間で26万キロ走行しています」
miraiさんにとって、現在は通勤やふだんの生活で乗っているCR-Zのほうがメインカーという位置付けではあるものの、タイミング次第では乗り換えることも考えているという。
しかし、NSXはこれから先も手放すことなく『永遠のセカンドカー』としてさらに走行距離を伸ばしていくことになるだろう。
取材協力:大磯ロングビーチ(神奈川県中郡大磯町国府本郷546)
(⽂: 渡辺大輔 撮影: 中村レオ 編集:GAZOO編集部)
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