『男のロマン』から『孫への贈り物』へ。未来につなぐ国産スーパーカーNSXと共に刻む時間
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ホンダ・NSX(NC1型)
ホンダが長年培ってきた技術と哲学を結集させた“走りと革新の象徴”とも言えるNSX。
市販車として世界初のオールアルミモノコック・ボディーを採用するなど注目を集めた初代モデルに続き、2016年に登場した2代目(NC1型)は、ミッドシップエンジンに加えて『SPORT HYBRID SH-AWD』を搭載したハイブリッドスポーツカーだ。
前輪を2つの電動モーターで駆動、後輪はV6ツインターボエンジンとモーターで駆動する最先端の電動四駆システムを採用。システム出力は580ps超と非常に高性能でありながら、高いスタビリティやスムーズな走りを実現している。見た目の美しさ、圧倒的なパフォーマンス、そして先進技術が融合したスーパーカーなのである。
現在はキックボクシングのジムを営むオーナーの『ササキ』さん。フェラーリやランボルギーニなど、名だたるスーパーカーが候補に挙がるなかで、最終的に選んだのはホンダのハイブリッドスポーツ・NSXだった。
2018年に新車で購入し、約7年経った現在の走行距離は1万2000kmほど。普段乗りにはあまり使用せず、主に眺めて楽しむ『自分へのご褒美』のような存在だという。
「フェラーリはあまり好みじゃないし、ランボルギーニは音が大きいイメージ。だったら、日本の技術が詰まったNSXが一番良いんじゃないかと。なによりホンダが作ったエンジンなら間違いないだろうというのが決め手になりましたね」
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(写真提供:ご本人さま)
「ちょうど良いタイミングでまとまった利益が出たから、買うなら今だなと思ったんです」と、NSXのために専用ガレージハウスも新築。そこには9台ほどのバイクも収容されており、週末には仲間と集まってバイク談義やコーヒータイムを楽しんでいるそうだ。
「ガレージは子どもの頃からの夢。自分だけじゃなく、みんなで遊べる秘密基地を作りたかったんです」と、笑顔をみせる。
「どっちかというと、昔からずっとバイク派だったんですよね」というササキさん。
高校時代に夢中になったバイク道楽は今も続行中で、ハーレーダビットソンやZなどの貴重な個体を所有。風を感じてのツーリングも良い息抜きになっているそうだ。
いっぽうでクルマの方はというと、運転免許を取得してはじめて手に入れたのはトヨタ・カリーナ(A61型)。本当はハコスカが欲しかったが予算が合わず断念し、車高を低めにした愛車でカーライフを満喫していたのだと、懐かしそうに振り返ってくれた。
その後、西部警察の影響で“鉄仮面”ことR30型スカイラインにも乗っていたが、仕事のために上京してからは、ずっとクルマを持たない生活を送っていたという。
そんな東京での生活を送る中でキックボクシングを始めたことがキッカケとなり、地元の石川県に戻ってからはジムを開業。その頃からクルマとの関わり方も変化してきたそうで、クラウンやハイラックス、最近ではレクサスRC Fなど実用性を重視して乗り継いできたという。
そして現在は、NSXの他にクラウンスポーツ、そして趣味のひとつである釣りの相棒としても活躍する軽トラックのハイゼットを所有する。普段の買い物や移動は軽トラがメインで「本当に気負わず乗れるのが良いんですよね。どんな状況でも大丈夫だし、ラフに使えますから」と、リアリティのある本音もチラリ。
実は購入するまではNSXのことすら知らなかったというササキさん。
「試乗した時、凄く静かなのにエンジンが掛かっているって言われて。はじめてハイブリッドなんだって気が付きました」という程である。
それでもNSXには特別な魅力を感じているそうだ。
「まず、安全。タイヤが素直に食いついてくれるし、多少滑っても4WDのおかげでなんとかなる。だから雨が降っていても安心感があるし、今まで乗ったクルマの中でも一番軽快だなと思えるクルマですね。しかもシートの出来が良くて、運転していて楽なところも良いですね。東京まで往復しても疲れませんでしたから。腰痛持ちなのでクルマの乗り降りが大変なのがネックですが…(笑)。クルマ自体もこれまで一度も故障したことがないし、買って良かったと思います」
おそらく、北陸で最後に納車されたNSXだというササキさんの愛機。その魅力は見た目にもある。特に気に入っているのがボディサイドのインタークーラーダクトだそうだ。
「普通のクルマじゃないなって、見た目でわかるでしょ? そんなワイド感があって、迫力もあるところが気に入っていますネ」
ドアミラーの開閉が手動であることについては「最初は、2000万円以上もするのにコレかよって思った(笑)」と、冗談交じりに話す。
「ホンダの担当者さんいわく、モーターを入れるとデザインが崩れるからという理由らしいんです。確かにスタイリングは抜群にカッコ良いですけどね」
インテリアで選んだのは、アルカンターラの内装と赤いシート。オーダー式で細部まで好みに合わせられる点も気に入っているそうだ。
「昔から赤シート=スーパーカーのイメージだったので、それだけは譲れなかったですね」
一方で、オプションのカーボンブレーキは選ばなかった。「取り扱いが難しいって聞いたし、ローター交換コストがとにかく高くて、通常ブレーキの倍くらい掛かるとか。サーキットを走るわけじゃないし、街乗りメインだから普通のブレーキで十分です」
投資家としても成功を収めているササキさんだが、NSXは一生手離すつもりはないという。それは、孫に譲ることを前提に所有し続けているからだ。
「孫が大きくなったら、ガレージごと譲ろうかなと。まだ1歳ですけど、英才教育中です(笑)」
家族はそれほどクルマに関心があるわけではなく、奥様も『また何か買ったの?』というようなスタンスだそうだが、それでもNSXの価値を次世代に残したいという気持ちが強くあるという。
「まさに男のロマン。見栄とか張り合いみたいな部分があるのは否定できない。でも、それがクルマの魅力だと思う。最近はクルマに興味を持つ若者が減っていると聞くけれど、やっぱりクルマとかバイクに惹かれてほしいね」
そうした思いもあってか、カーイベントへの参加も積極的に行ってきたという。
スーパーカーの展示も併催された、地元敦賀の『新幹線開業イベント』では、子供達に運転席に座ってもらうなど、クルマとのふれあいの場を提供した。
「子供達が笑顔になってくれるだけで、純粋に嬉しくなるよね。シートが汚れるとかキズが付くとかはまったく気にならないし、どんどん乗ってくださいって感じですよ。あ、子供と女性限定だけどね(笑)、ウソウソ。このイベントの帰り道でも、ちびっ子達がみんな手を振ってくれましたヨ。そういう体験を通して『将来はスーパーカーに乗るぞ』って興味を持ってもらえたら良いなと思います」と目尻を下げながら優しい笑顔で話してくれた。
若い頃はやんちゃなことも散々してきたと話すササキさんだが、その穏やかな表情からは、人生の酸いも甘いも経験してきたひとが持つ、独特な暖かみが感じられた。
こうしてNSXと共に歩むササキさんのスーパーカーライフは、単なる趣味の枠を超え、次の世代へと夢を繋ぐライフスタイルそのものとなっている。当初は自身のために手に入れた“男のロマン”は、今となっては見栄がどうこうというよりも、孫への贈り物として、その価値は増しつつある。
「いつかこのクルマが、誰かの憧れや原動力になれば」
そうした想いを胸に秘めて、今回の撮影会に臨んでくれたであろうササキさんの背中から、一台のクルマに込められた思いの深さと、それを分かち合いたいという優しさが滲んでいた。
(文: 石川大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 福井大学 文京キャンパス(福井県福井市文京3-9-1)
[GAZOO編集部]
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