NSX購入計画のために転職&資格の勉強&倹約。NSXは楽しさと悩みをくれる自分の分身

  • ホンダ・NSXと富士山

NSXを一目見て、惚れてしまったというおぎさん。勤め先をはじめ、がらりと環境を変えなければNSXの購入は果たせない……。そう気付いたおぎさんは、勇気を持って“変わること”に踏み出しました。今回はNSX×おぎさんのお話です

――多くの人がNSXを二度見されて行きます。すごい注目度ですね

目にする機会が少ないクルマですからね。皆さんが見たいのはNSXで、私ではありませんが、オーナーとして身だしなみには気を配るようになりました。

  • ホンダ・NSXとオーナーのおぎさん

――たしかに興味の対象がクルマであっても、どんな人がオーナーかは気になりますね。おぎさんがクルマに興味を抱いたきっかけを教えて下さい

まず、父親がトヨタの(4代目)スプリンタートレノに乗っていたこと。いわゆる「86トレノ」は子供目線にも格好良く、大好きでした。とあとは『頭文字D』の影響ですね。中学生の頃は、ずっと『頭文字D』のゲームで遊んでいました。

――となると、(ゲームの『頭文字D』では)やっぱり使用車種はレビンで?

いえ、そこはキャラクターの好みで、ホンダS2000とインテグラ・タイプRに乗っていました。

――原作付きゲームの醍醐味ですね。ではゲームから離れ、実車の愛車歴を教えて下さい

専門学校に通っていた頃に運転免許を取得。自動車整備工場に勤める知人に頼み、ホンダのCR-Zをオートオークションで落としてもらい購入しました。3年後、車検を機にCR-Zから(4代目)シビック・タイプRに乗り替え。その3年後に(2代目)NSXを購入しました。

――NSXへは、シビックからの乗り替えですか?

いえ、増車です。ただスポーツ指向のクルマを二台、所有するのもどうかと思い、程なくしてシビックは手放しました。代わりに実用性を求め、ホンダの(現行型)ヴェゼルを契約したのですが、納車まで1年半くらいかかるという話だったんです。そこで場つなぎに、かねてから乗ってみたかったポルシェ(現行型)ケイマンを購入しました。

――ヴェゼルの納車待ちにケイマンですか!?

そうです。期間が決まっているからこそ、購入に踏み切れました。価格もヴェゼルの購入費用、プラスα程度でしたので。あと父親がポルシェに憧れており、この機会に乗ってもらいたかったというもあります。

ところがヴェゼルが半年で納車されたため、一時的にNSXとケイマン、ヴェゼルの3台所有になりました。もう少し乗っていたかったのですが負担が重く、後ろ髪引かれる思いでケイマンを売却。NSXとヴェゼルの2台所有となって今に至っています。

  • オーナーさんが子供の頃に乗っていたトヨタ・スプリンタートレノ
  • ポルシェ・ケイマン

――現在、所有されるNSXとヴェゼルをのぞいて、印象深かったクルマはなんでしょう?

シビックですね。当時は社会人一年目で蓄えがなかったため、ローンで購入。ボーナスを全額つぎ込んで、無限パーツを一揃え装着しました。

――すごい熱の入れようですね。シビックを購入した理由と、魅力や思い出を教えて下さい

  • ホンダ・シビックタイプR

見た目が好きというのもありますが、やっぱりタイプRへの憧れですね。シビックはパワーもあり、乗っていてすごく楽しいクルマでした。その前に乗っていたCR-Zも楽しいクルマでしたが、タイプRは特別な仕様というのを、あらためて教えてくれました。

オフ会への参加も、シビックに乗るようになってからです。もっとシビックオーナーの話が聞きたかったので、SNSで呼びかけてオフ会を開いたこともあります。

――次に乗ることになるNSXはスーパーカーで、値段も桁が違います。どうして購入に至る決心をしましたか?

初めてNSXを目の当たりにした時の衝撃は、今でも忘れられません。仕事終わりに、何気なくウェルカムプラザ青山に訪れた日のこと。ロビーにバレンシアレッド・パールのNSXが展示されており、一瞬で心を奪われました。デザインの格好良さ、ボディカラーの美しさ、全身から放たれる強烈な存在感……。NSXを前に「いつか、絶対に乗ってやるぞって」って誓ったんです。

帰宅後、さっそく『NSX購入計画書』をExcelで作成。その結果、投資を始めたとしても、今の職場ではNSXを買えるだけのお金は貯められないことが判明しました。

――まさかNSXを買うために転職をされたんですか?

はい。短期的に見れば、転職することで収入は下がります。けれど転職先でスキルを身につけつつ、勉強をして資格を取得。得たスキルや資格を活用し、より多くのスキルを得られる職場に転職。そうやって収入を上げなければ、とてもNSXには辿り着けません。

当時の私は、自分を売り込むスキルを持っていませんでした。後々を考えると、最優先で補わなければならない。最初の転職先は、短所を補うスキルを身につけられる職場を探しました。

――いや、すごい覚悟と行動力ですね!

働きながら学校に通い、空いた時間は勉強。併せて無駄遣いを避けるため帳簿をつけ、日々、出費を確認。日曜日は溜まったストレスを発散すべく、オフ会やイベントで大はしゃぎ……。

当初は35歳までに購入資金を貯める計画でしたが、二度の転職を経て思いの外、蓄えができ、26歳で目標をクリアすることができました。とはいえ、この3年間は本当に疲れて、疲れて……。若さと熱意で過ごせましたが、もうしたくありませんね(笑)

NSXを購入した今は、(NSXを)楽しむ時間を作るため、ギヤを落として余裕のある職場に転職しました。もちろん収入は下がりましたが、倹約をすることでメンテナンス費用を捻出しています。

――倹約とは、どのような?

例えば日々の昼食は、いわゆるワンコイン弁当です。同僚とファミレスに行った際も、多くオーダーしないよう気を付けています。でも友人や家族、パートナーと一緒の時は別ですよ。そこはメリハリというかリミッターを解除し、美味しいものを食べたいだけオーダー。皆との賑やかな食事を楽しみます。

――NSXの裏には血の滲むような努力と、コツコツした倹約が隠れているんですね。話は戻り、いよいよNSXの購入ですね!

  • ホンダ・NSX

はい! ある程度、購入資金の目処がついたところで、理想のNSXを探し始めます。数ヶ月後、岐阜県のショップで売られていたバレンシアレッド・パールの個体を発見。クルマを見る目の確かな知人に依頼し、現地へ確認に行ってもらったところ、「程度はとても良く、買ってもいい個体だ」との連絡をもらいました。なので翌週、今度は私も一緒にショップへ向かいました。

――購入するかもしれないNSXを目の辺りにした時の気持ちは、いかがでしたか?

3年前は触れることすら叶わなかったNSXが目の前にあり、決断すれば購入できる。それをあらためて実感し、笑みがこぼれるのを抑えきれませんでしたね。

エンジンを始動してもらったら、その排気音で感極まってしまい、試乗をすることなく「このNSX、買います」って告げてしまいました。もちろん、知人の鑑定を信じていたからですよ。

ただ契約後、代金が引き落とされた通帳を見て、それはそれでショックを受けて泣きたくもなりましたね……。いえ、NSXの価格に不満はありませんし、購入を後悔はしていませんよ。それだけの価値や背景のあるクルマですから。

――8桁もの額が一度に引かれれば、理由はどうあれ泣きたくなると思います。ローンでの購入ではなかったのですか?

NSXにかぎりませんが、スーパーカーは維持にお金がかかります。ローンでの購入を否定はしませんが、私の場合だと、ローンと急な出費が重なった際、支払いきれるかどうか……。自身に「NSXは一括で買えなければ、買ってはいけないクルマだ」と言い聞かせ、お金を貯めました。

――では、ついにNSXの納車ですね

納車日には、SNSで繋がるシビック仲間やホンダ仲間、頭文字D仲間が集まり、納車式を開いてくれました。私も嬉しさで気をよくし、皆にドライバーシートに座ってもらいましたね。

  • 納車時のホンダ・NSX
  • ホンダ・NSXの運転席

――こちらまで、嬉しさが伝わってくるようです。初めてNSXを運転した感想は、いかがでしょう

ずっと欲しかったクルマです。興奮して、なにも考えることができませんでした。

――冒頭で触れましたがNSXに乗っていると、周りからの視線はすごいのでしょうね

それはもう(笑)。ただ、やはり皆さんが見たがっているのはNSXです。カメラを向けられたら、私は写らないよう、さりげなく下がることを心がけています。

――初対面の方から、いきなり話しかけられることも?

よくあります。スーパーカーオーナーの方は興味津々って感じで話しかけてくれますし、ホンダ車オーナーの方は、私が“スーパーカー好き”なのか“NSXやホンダが好き”なのかを探りながら、話しかけてくれます。あと同じNSXユーザーの方が「実は私もオーナーなんですよ」って話しかけてくれ、それまでいなかったオーナー仲間が急に増えました。

印象に残っている出来事として、まだ小学校に入ったばかりくらいの男の子がNSXを見て、急にどこかに行っちゃったんです。しばらくしたら走って戻ってきて、私にNSXのミニカーを見せてくれました。親御さんの話ではミニカーを取りに、家に帰ったそう。これにはジーンときましたね。宝物を見せてくれたお礼に、彼にはNSXに乗ってもらいました。後日、親御さんより、とても喜んでいたとの連絡をいただきました。

  • ホンダ・NSXのリア

――素敵な出来事です。未来のNSXオーナーを増やしちゃいましたね

そうなったら、嬉しいですね。

NSXに乗り始めてから、ディーラーのイベントやスーパーカークラブのイベント、動画への出演など、「催し物に協力して欲しい」と、声をかけられるようになりました。シビックに乗っていた時には、なかったことです。

色々な人と接し、会話を重ねてきたことで、「NSXと接することが、なにかのきっかけになってくれたらうれしい」と、考えるようになりました。なので興味を持ってくれた人にはドライバーシートへ座るよう勧め、ステアリングに触れてもらっています。

――機会があったら、私も座らせて下さい。では話を変え、ヴェゼルについておうかがいします。まずどういった動機でヴェゼルを購入されたのでしょう

  • ホンダ・ヴェゼル

実用性の高いクルマが欲しかったからです。NSXは日常使いもこなせるクルマですが、やっぱりサイズが大きく、足回りもアウトドアレジャー向きでは無いので。

現在、主流のボディタイプはセダンではなくSUVですよね。私はSUVを所有したことがなかったので、この機会に乗ることにしました。同じホンダのZR-Vと検討し、より感性と合致したヴェゼルを選択。既にヴェゼルを所有するパートナーの家族から、勧められたというのもあります。

――初めてのSUV、乗ってみていかがですか?

高速道路での合流や上りの急勾配で、パワーの無さを感じることもありますが、それ以外は完璧なクルマですね。乗り心地や使い勝手は良く、シートがフラットになるので車中泊の際に助かります。最近ではすっかりと愛着が湧き、ヴェゼルのオフ会にも参加しました。

――パートナーのご家族もヴェゼルに乗っているということは、身近に2台のヴェゼルがあるということですか?

その通りです。彼女とご両親は山登りを趣味にしており、そのため長距離移動の機会が多く、ヴェゼルの乗り心地や利便性を高く評価しています。それでSUVを探していた私に、ヴェゼルを勧めてくれました。

また、パートナーと付き合っているうちに、私も一緒に山登りをするようになりました。山へは2台のヴェゼルで移動しています。

――SUVの本領を生かした活躍っぷりですね。おぎさんは多くのオフ会やイベントに参加されています。これまでで印象深かったオフ会、あるいはイベントを教えて下さい

いくつもありますが、あえて挙げるならケイマンに乗っている時に参加した、ポルシェのイベントでしょうか。『ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京』で開催されるイベントで、参加するにはポルシェのオーナーであり、その上で抽選に当選する必要がありました。

会場を見回せば、911GT3やGT2、ケイマンGT4といった本気モデルの姿が。私のケイマンはベースグレードで、「これは場違いかな……」と、思っていたのですが、参加された皆さんは本当に優しく、「よければ乗ってよ」って、ドライバーシートに座るよう勧めてくれたんです。聞けば(当時の)私と同じように、ポルシェとNSXを所有されている方もいらっしゃいました。

この時、知り合えた方々は、私がケイマンをおりた今でも仲良くしてくれています。スーパーカーオーナーの心得を、教えてくれたイベントですね。できるならもう一度、ポルシェオーナーになって、参加したいです。

――貴重な体験談です。現在は、どのようなオフ会に参加されているんですか?

  • ホンダ車のオフ会
  • ホンダ・NSXのオフ会

NSXオーナーかホンダ車オーナー限定のオフ会がほとんどですね。あと私が主催となって、ホンダ車オーナーで、かつ同年代限定のオフ会を開催しています。

――それでは最後になりますが、おぎさんから見たNSXとヴェゼルとの関係性を教えて下さい

ヴェゼルは「ツール」のつもりで購入し、いつの間にか「相棒」に変わっていました。今ではパートナーと一緒の時間を楽しむため、無くてはならない存在です。

NSXは今の私を作り上げた、「分身」の様な存在ですね。 NSXと出会った日から、私の人生はガラリと変わりました。分身だからこそ、今後のことも自分のように考えなくてはならない。NSXは楽しさだけでなく、悩みもくれます。その悩みも楽しめないと、乗り続けられないクルマですね。

  • ホンダ・NSXとヴェゼル

どうすればNSXを購入できるかを見定め、困難に臆すことなく決断。描いたルートを邁進し、見事に購入を果たしたおぎさん。これからはNSXと一緒に、夢を持つ人の背中をそっと押してあげることでしょう。

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(文・糸井賢一)