30年前にAE86と出会い、スポーツカーにのめり込み、たどりついたトヨタ86
TRD製パーツを装着し『86 TRD Griffon Concept』とおなじデザインに仕上げられたトヨタ・86(ZN6)。ボンネットを開けると、なんとエンジンは4スロットル仕様へとカスタマイズされている。このオーナーさん、最初の愛車を迎えてた時は車に興味はあまりなかったそうだ。しかしその後AE86と出会い車を趣味とするライフが始まった。彼の愛車歴などを紹介する。
これまでさまざまなスポーツカーを愛車として乗り継いできた安富祖 宴(あふそ やすし)さん。だが、意外にも18才ではじめての愛車ハッチバックのスプリンタートレノGT-V(AE86)を購入した際には、スポーツカーへの憧れやクルマへの興味が強かったわけではなかったという。
「最初に購入を考えていたのはEP71型スターレットでした。走り屋のクルマという印象を持たれる方も多いと思うんですが、当時の自分にはそんなつもりは全然なくて、ただ『乗りやすそうだな』という理由でした。でも、新車を買うにはどうしても予算が足りなかったんです。そんなときに中古車屋に勤めていた先輩から『ハチロクというクルマがあるよ』と中古車を見せられて、とりあえず手に入れたのが始まりでしたね」と安富祖さん。
そんなハチロクもただ日常の移動手段として乗るクルマという認識であり、最初はノーマルのままで乗っていたと当時を振り返る。
「ハチロクを買ってからも中古車屋さんとは付き合いがあって、店員さんがジムカーナに参加しているところを見に来てみないかと誘われたんです。そのときは自分では走らずにただギャラリーしていただけだったんですが、そこから思いっきりジムカーナにハマることになってしまいましたねぇ(笑)」
ジムカーナのチャレンジを始めるにあたって、愛車であるハチロクはちょうどいいクルマだった。サスペンション、L.S.D、マフラーといった入門セットともいえるパーツを装着して、3年間ほど趣味としてのめり込んだという。
「21才のときにジムカーナからは離れたんですが、ちょうどそのときにトレノをどうしても譲って欲しいという人が現れて手放しました。でも、その頃にはクルマがメインの趣味になっていたので、今度はおなじAE86でも2ドアのカローラレビンを購入して、エンジンもキャブ仕様で高回転まで回るヘッドチューンを施して乗っていました」
さらにその1年後には3台目となるハチロクに乗り換え。こちらはロールケージを全体に張り巡らせた2ドアレビンだったというが、けっこうなカスタムを施していたため、すぐに手放したという。
「その頃にハマっていたのがゼロヨンだったんです。それで当時流行っていた180SXに乗り換えて、定番の純正流用チューンをして遊んでいました」
前期型の日産・180SXに積まれた1800ccのNAエンジンをベースに、RNN14パルサーGTi-Rのタービン&ウエストゲート、BNR32 GT-Rの前置きインタークーラー、それにFC3S RX-7のオイルクーラーを追加。U12ブルーバードのターボエンジン用ピストンを組み込んだという。
まさに90年代前半の定番カスタムとも言える内容に親近感を覚える方もいるのではないだろうか? そんな愛車で週末にはゼロヨンを楽しむ日々を送っていたそうだ。
「次に2000ccのSR20エンジンが載っている180SXも買ったんですが、そっちはなんだか自分には合わなくて。思い切って車種を変えようと思っていたころに、たまたまFC3SのRX-7が近所で売られていたので手に入れました」
人生初のロータリーエンジン車でもあったという安富祖さん。「まわりに乗ってる人がいて気になってはいましたが、こんなに楽しいのかとびっくりしましたね。でも燃費が本当に悪くて(笑)。楽しかったですけど、苦労も結構ありました」
そしてRX-7から乗り換えるきっかけになったのは結婚だったという。
「もっと燃費が良くて、気軽に乗れるクルマがいいなと。でもずっと乗ってきたのでスポーツカーがいいなとは思っていて、ヨメさんからは『4ドアだったらいいよ』と言われたので、だったらランエボかインプレッサだな、と。これもたまたま中古車屋にあったランエボVIを選んだわけですが、ちょっとやり過ぎだったみたいでヨメさんには怒られましたね(笑)」
このとき出会った三菱・ランサーエボリューションVIは、そこから現在の愛車である2012年式トヨタ・86を新車で購入するまで、家族を乗せるファミリーカーとしてはもちろん、独立して手掛けることになったデザイン業のお仕事で使う営業車という役割もこなし、10年以上に渡って所有を続ける愛車となった。
ちなみに、安富祖さんがお仕事で武器とするのが、自身の筆文字で描くデザイン。かつて、沖縄の観光品として有名な『海人(うみんちゅ)Tシャツ』の製作を手掛ける会社で働いていたころから独学で筆文字のデザインの練習をはじめ、それが好評だったことから専業としての業務を始めたのだという。ランエボはそのころの相棒でもあったというわけだ。
「ランエボはとても愛着があるクルマだったんですが、長く乗っていたこともあって少し手を加えてみたいなと思うようになりました。ランエボはもともとターボエンジンが積んであるクルマだけど、自分は高回転も回るメカチューンのNAエンジンが大好きで、いずれミラージュに積まれているMIVEC 搭載の4G63エンジンに載せ換えて、4スロットル化しようということを考えていました」
トヨタ・86のデビューが話題となったのは、まさに安富祖さんがランエボVIのカスタムプランを構想していた2011年のことだった。
「新しい86が発売されることを知ってからは、ヨメさんからも86になら乗り換えていいよと言われたこともあって、ランエボのエンジン載せ換えをすることはやめて、発売までのあいだを我慢して新車を購入しました」
そんな安富祖さんのトヨタ・86(ZN6)は、TRDがタイムアタック向けのコンセプトカーとして製作した『86 TRD Griffon Concept』のデザインをもとにエクステリアをカスタム。「東京オートサロンに出典していたころの写真を隅々まで見て、再現してもらいました」といい、エアロパーツも同様にTRD製でコーディネイトしている。
そして、エンジンチューンはサード製の4スロットルキットを導入。ランエボVIに高回転型のNAエンジンを積もうと考えた安富祖さんらしく、自然吸気の持ち味を引き出すパーツ選びといえるだろう。「まるで旧車みたいな吹け上がりの音の良さに変わりました」と、サウンドチューンとしての効果もバッチリのようだ。
「思い出のクルマを聞かれると、やっぱり最初に3台乗ったAE86のことが頭に浮かびます。走りのウデも磨けたし、当時のショップの仲のいい人達とチームの仲間もできて、いろんな遊びができた。だから、いまの86でもたくさん楽しもうと思っています」
昨年、沖縄市のモータースポーツマルチフィールド沖縄で全国サーキットツアーイベント『XaCAR 86BRZ SONIC!!』が行われた際にはグリップ走行枠に参加。そのときに見たドリフト走行への意欲もわいてきて、サスペンションパーツのアップデートや、熱対策のオイルクーラーや導風のためのアルミ製アンダーパネルを追加するカスタムなどを行ったという。
購入から10年、走行距離23万7000キロを迎えそうな現在にあって、安富祖さんの86とのカーライフはさらに勢いを増しているのだ。
「来年はそろそろエンジンのオーバーホールをしようかな。この86にはあと10年乗らないといけないので」
未来を見据える理由は、息子に自分の86を託したいという目標があるからだという。だからといって、手を抜かずに本気でスポーツカーとしての楽しみ方も満喫するという。
これまでも、そしてこれからも、安富祖さんの愛車との付き合い方は変わらずに続いていきそうだ。
取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ
(⽂:長谷川実路 / 撮影:平野 陽 / GAZOO編集部)
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