10年以上のブランクを経てカムバック!クルマ遊びを楽しむ相棒のトヨタ86改

18才からスポーツカーを乗り継ぎながらゼロヨンなどを楽しんでいたものの、30才でクルマ遊びの趣味をやめて、仕事と家族に時間を費やしたという渡具知さん。しかし44才の時にクルマ遊びを復活させる。最初は軽い感じであったものの、今では愛車トヨタ86(ZN6)を手に入れて、どっぷりはまっているという。そこまで彼をとりこにするクルマへの想いは、純粋なことだった。

沖縄県在住の渡具知(とくち)学さんのトヨタ・86(ZN6)は、いま一番ハマっている趣味の“ドリフト”を最大限に楽しむための愛車だ。
「自分はいま47才ですが、若かったころはゼロヨンがメジャーで、沖縄の若者はみんなクルマで遊ぶのが当たり前という感じでした。S30のフェアレディZとかケンメリ、ジャパン、RX-3に乗っている先輩に憧れて、自分も180SXを買ったのがはじまりでしたね」

18才だった渡具知さんが人生初の愛車に選んだのは、2ℓターボエンジンSR20DETが積まれた中期型の日産・180SX(RPS13)。ひと世代上の先輩たちが、いわゆる旧車と呼ばれる年代のクルマを選んでいたのに対して、渡具知さんとその友人たちの世代はシルビア、180SX、RX-7といった新車で購入できる年代のスポーツカーを選ぶひとが多かったという。
なかでも渡具知さんが180SXに惹かれたのは、リトラクタブルヘッドライトとハッチバックのスタイルが好みだったから。
「180SXは中期を2台乗り継ぎました。2台目は最初からかなりイジられていたクルマで、そこからさらにドグミッションを入れたり、太いタイヤを履きたくてフェンダーを交換したりと、やりたいことをどんどんやりましたね」

「ゼロヨンが流行っていたのも自分たちの世代までで、ちょっと下の世代からはドリフトが流行り始めたんです。それで27才くらいのときにS14型シルビアに乗り換えて、これも後期と前期の2台を乗り継ぎながら、ほんのちょっとかじる程度ですけど2年くらいドリフトもやっていました」
免許を取ってからいまに至るまで、クルマ以外の趣味は全く通ってこなかったという渡具知さん。それだけに、スポーツカーに自分好みのカスタムを加えて走りに出かけるというサイクルは、もはや当時の渡具知さんにとってライフスタイルそのものだったと言えるだろう。

そんなカーライフに転機が訪れたのは渡具知さんが30才に差し掛かったころ。
「不動産関係の会社を立ち上げることを決めたことと、結婚して子育てもするタイミングが重なって、いちどクルマの趣味から離れようとシルビアを手放すことにしました」
それまでの優先順位で最上位だったクルマを離れ、仕事と家庭のために全力を尽くす決意を固めた渡具知さん。その後10年以上にわたって大好きなスポーツカーに乗る趣味を断つことになるが、その甲斐もあって現在は仕事も家庭も順調に続いているという。

「そろそろ自分の趣味に戻ってもいいかな、と思ったのが44才になったころでした。遊び半分でマツダのRX-8を購入したんですが、安い個体だったせいもあってとにかく故障が多くて(笑)。そんな時にレンタカー落ちの86が相場よりも安く販売されているのを見つけたんです。高年式なスポーツカーに乗ってみたいと前々から気になっていましたし、衝動買いで飛びつきましたね」

スポーツカーを手に入れたとは言っても、20代の頃のようにゼロヨンやドリフトにチャレンジしようという気はまったくなく、日常の足やドライブのお供として楽しむもりでいたという。
しかし、ある出会いがキッカケとなり、その方向性は大きく変わっていくことに…。

「とりあえず足元をドレスアップしようと思ってホイールを交換して、不要になった純正ホイールをSNSで売りに出したんです。そしたら偶然にも買い手の方が『沖縄86&BRZ+owners Club』の方で、自分もオーナーズクラブの活動に誘っていただいたんです」
そうして『沖縄86&BRZ+owners Club』のメンバーとなった渡具知さん。クラブの年齢層は10代から50代まで幅広く、ツーリングやミーティングといった活動に参加することでメンバーとの交流を深めていったという。

「86でいろいろやってみたいなと思うようになったのは、クラブに入って2年目でした。以前からサーキットに興味があると話していたメンバーと、モータースポーツマルチフィールド沖縄に走りに行くことになり、自分も86で定常円や8の字を走ってみたら、意外とドリフトができそうだなって思ったんです」
そして、180SXに乗っていた20代のころを思い出すように、サーキットを走ることへの情熱をどんどんとり戻してきた渡具知さん。それをキッカケに、10年以上ぶりの嬉しい再会もあったという。

「20代のころ一緒に走っていた仲間がプロショップを経営するようになっていて、そこにこの86をカスタムして欲しいと持ち込んだんです」
そのショップというのが、県内でも有数のドリフト選手として知られる嘉手苅さんが代表を務める沖縄県宜野湾市の『クラフトファクトリー』。
サーキット走行に10年以上のブランクがあった渡具知さんにとってはとても心強い存在で、愛車の86をもっとドリフトしやすいクルマに仕上げるためのカスタムやセッティング、部品交換に伴う公認車検から日頃のメンテナンスまでまるごとお任せしているという。

エクステリアは今風のワイド感あるボディにしたかったという理由でロケットバニーブランドのエアロパーツを中心にドレスアップ。移設する必要のできたサイドマーカーは、レクサスに使われているデザインのものを選んだという。
ドリフトには欠かせないフロントタイヤの切れ角をアップさせるためのショートナックルも導入している。

自然吸気のFA20エンジンは、HKS製のフラッシュエディターというECU書き換えツールを使ってリセッティングをおこない、フィーリングやパワー向上をはかっている。さらに、ファイナルギヤをハイエースから流用してローギヤード化することで、ドリフト走行中のパワー不足を補っているそうだ。

また、安心して高回転まで回せるように、冷却系はラジエターのフロント側にオイルクーラーを追加し、追加電動ファンによる強制冷却も行えるようにしているという。フロントグリル部分も肉抜き加工して、空気をたくさん取り込めるような工夫も行われているのが特徴的だ。

「自分もここまでハマるとは、86を買ったときには思っていなかったです(笑)。ただ乗るだけよりもいろいろと手を加えていくのが大好きで、ここを変えたらどうなるんだろうと、乗って違いを感じるのが楽しいです」と渡具知さん。

こうして86をドリフト仕様に仕上げてきたいっぽうで、現在は新たにBRZも購入予定だというお話も。そちらはジムカーナを前提として「これもノーマルを手に入れて、イチからコツコツとやっていくつもりです」と、86/BRZの2台持ち体制でさらに充実したカーライフを送っていくに違いない。

取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ

(⽂:長谷川実路 / 撮影:平野 陽 / 編集:GAZOO編集部)