はじめての愛車と3ヶ月で1万キロ。整備士の卵がインプレッサと過ごす愛車ライフ
はじめて自分の愛車を手に入れた日のことを覚えているだろうか。電車やバスのようにルートを定められることなく、自分がその時に思った方向へと走れる解放感。まさに翼を手に入れたと同様の自由を感じた人も多いだろう。
目的地を定めずになんとなくクルマを走らせる。たとえそれが普段見慣れた近所であっても、これまでとは違った風景として記憶に残っているかもしれない。
そんなはじめての愛車をこの春に手に入れ、時を同じくしてトヨタ東京自動車大学校に入学。将来の夢に向かって整備士への道を歩み始めているのが、この2011年式スバル・インプレッサ1.5S(GH2)オーナーの飯田さんだ。
インプレッサというと、まず頭に浮かぶのがWRCで活躍したWRXシリーズだろう。特にスポーツカー好きの間では歴代モデルいずれも人気が高く、今もWRカーのレプリカを製作する人は後を絶たないほどだ。
そんなインプレッサシリーズの中でも普及グレードとしてラインアップされていたのがこの1.5S。ハッチバックのボディスタイルに水平対向のNA1500㏄エンジンを搭載し、駆動方式はAWDやFFが存在するほか、トランスミッションが4速ATだけでなく5速MTも選択できるのも特徴である。
飯田さんの1.5SはFFに5MTを組み合わせたGH2で、パワーこそ上級グレードほどではないものの、気軽に操作する楽しみが満喫できるという。
そんなGH2オーナーの飯田さんは、クルマに乗りはじめてまだ数ヶ月のため初心者マークは欠かせない。しかし、その間に走った距離はすでに1万キロを超えているというから、はじめての愛車ライフを存分にエンジョイしているようだ。
「このインプレッサは家のクルマだったんですが、MTの練習にはちょうどいいということで、免許を取った時に父から譲ってもらったんですよ。もともと父は代々インプレッサを乗り継いでいて、僕が生まれた頃は丸目のGDBに乗っていたそうです。僕の記憶としてハッキリと残っているのは、叔母が乗っていたインプレッサを譲ってもらって長らくファミリーカーにしていたあたりですね。その後にこのGH2に乗り換えたので、合計3台のインプレッサが我が家のファミリーカーだったということになります。ちなみに叔母はインプレッサを父に譲った後、またインプレッサを買いました(笑)」
ボクサーエンジンのフィーリングは一度体験したらヤミツキになるという人も少なくない。飯田さんの父や叔母もまたそんな魅力に取り憑かれたオーナーだったというわけだ。
インプレッサのアイデンティティとも言えるボクサーエンジンだが、GH2に搭載されるのはそれまでのシングルカムからツインカムに変更となって出力アップが行われたEL15だ。110psの出力は街乗りで使うなら必要にして十分。むしろレギュラーガソリン仕様のため学生にとってはお財布に優しい良き相棒とも言える。
普通自動車免許自体のMT免許となると取得者の15%ほどしかいないと言われている。もっとも、新車でMTを選択できるモデルが少なくなっているだけに、どうしても乗りたいクルマがMTだという理由がなければ、AT限定免許を取得するという選択も理解できるだろう。
「譲ってもらうインプレッサがMTだったということもありますが、進学先の整備科はMT免許が必須だったんです。確かに整備に入ってきたクルマがMTだった場合、AT免許では動かすことができないじゃないですか。場合によっては一般公道での試運転なども必要になることを考えたら、ATもMTも運転できなければいけないんですよね。その点で今からMT車の運転に慣れておくのは、将来の仕事のためにも必要なことなんです」
MTであると同時にスポーティな雰囲気のインテリアも飯田さんのお気に入りポイントのひとつ。ステアリングやシートなどレッドのステッチが随所にあしらわれ、さらにシートは適度なサイドサポートによってホールド性も十分。MTの操作感を盛り上げてくれるコクピットのデザインは“インプレッサらしさ”を感じさせてくれるのだとか。
「免許を取得したのは2月で、すぐにこのインプレッサに乗りはじめたんですが、友達と江ノ島へ遊びに行ったり、バイトへの往復で乗ったりしているうちに走行距離は1万キロくらい伸びました。気づいたらつい遠回りしながら帰っていたりしているんですよね(笑)。乗っている時間も長くなってきているので、最初の頃と比べるとかなり運転には慣れてきたんじゃないかなって思います」
取材時は5月だったため、免許取得からわずか3ヶ月。進学して新しい生活をはじめて1ヶ月ほどしか時間が経っていないにも関わらず、ものすごい勢いで愛車と過ごした時間を増やしているというわけだ。
とは言っても、慣れてきたと思った頃が一番油断しがちなタイミング。すでに手痛い洗礼を受けてしまい、改めて気を引き締め直しているのだとか。
「慣れてきたなんて言っちゃいましたが、先日右フェンダーをぶつけてベッコリ凹んじゃって…。改めてクルマを運転することに対して、気を引き締めなきゃって感じました」
カーライフとともに専門学校生としての新生活をスタートしたばかりの飯田さん。これまでとは違った刺激を受けながら、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいと考えているという。
そのひとつがモータースポーツ。幼い頃からインプレッサが身近に存在していただけにラリーにも興味が湧いていて、学内のラリー系サークルへの入部も考えているのだとか。
「クルマの構造や整備方法などは勉強として学べるんですが、もっと広い視野でクルマを楽しむならサークルに入った方が実感しやすいと思うんです。だから興味のあるラリーに関するサークルに入って、モータースポーツの世界も体験してみたいですね」
また基本的なスタイリングはノーマルでも十分に満足しているものの、好奇心の旺盛な18才だけに乗るだけでなくカスタムによって自分なりのインプレッサを作っていきたいという欲求も高まっているとのこと。
今後はモータースポーツやカスタムなど幅広いクルマ遊びに目を向けて、存分にクルマを楽しむことも飯田さんが目指す理想のカーライフなのである。
まず手始めにカスタムしたいと考えているのはタイヤとホイール。ノーマルでも不満はないのだが、交換することによって愛車感が高まるんじゃないかと考えている。
とは言ってもガソリン代などの出費もかさむため、学生の身分としてはすぐにというわけでなく、長く乗りながら好みのアイテムを検討していこうという段階だ。
いっぽうで、リアゲートのSTiエンブレムは父から譲り受けた後に自分で装着したというワンポイント。ステッカーやエンブレムひとつでも自分だけの愛車感が増し、さらにクルマが好きになるキッカケになるというのは、クルマ好きなら誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。
飯田さんが入学したのは整備科だが、前述の通り取材時は入学から1ヶ月ほどしか経っていなかったため、授業はまだオリエンテーションがメインで整備などの勉強は始まっていないタイミング。そのため今後は授業でしっかりとクルマのことを学び、ゆくゆくは自分の手で愛車の整備やカスタムを楽しめるようになりたいというのは夢のひとつだと語ってくれた。
また、将来的には整備科で2年学んで2級整備士を取得した後、上級過程のトヨタセールスエンジニアリング科に進み、技術と知識を持ったディーラーマンになるのが目標だという。
バスの運転手だった父や、その友人に幼い頃からいろいろなクルマに乗せてもらったことでクルマ好きへと成長した飯田さん。次第にスポーツカーに興味を持ちはじめ、ファミリーカーがインプレッサであることにも刺激されたという。将来クルマと触れ合える仕事に就くためトヨタ東京自動車大学校へと進学したのは、いつもインプレッサが身近にあったからといっても過言ではないだろう。
18才の夢や希望がたっぷり詰まった飯田さんのインプレッサ。この先、若きオーナーをいろいろな場所に連れて行ってくれるのはもちろん、様々な経験をもたらしてくれるに違いない。そのひとつひとつが思い出として心に刻まれ、いずれ大人になって思い起こすことになるはずだ。
取材協力:トヨタ東京自動車大学校(東京都八王子市館町2193)
(⽂: 渡辺大輔 撮影: 平野 陽)
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