幼き日に観た555カラーのインプレッサに憧れ、GC8初期モデルとのカーライフを実現
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スバル・インプレッサWRX(GC8)
1958年にスバル360という大ヒットモデルを生み出し、水平対向エンジンや4WDという、他メーカーにはない独自のメカニズムを有していた富士重工業(現:スバル)。
昭和時代のスバル車は、クルマの印象を左右するエクステリアデザインに、“クセ強”なモデルも存在し、熱狂的なファンがいた反面、一般的には好みが分かれるケースもあった。
しかし、1989年。これまでのスバル感を一変させた新型車が登場する。初代レガシィがそれだ。水平対抗4気筒エンジンや、4WDというスバルが独自に進化させてきたメカニズムはそのままに、誰もがスタイリッシュと感じるスタイリングのボディと組み合わせたことで、大人気を博したモデルとなったのだ。
そして、そんなスバル車の変化をより印象付けたのが、ここに登場する初代インプレッサ(GC8)であろう。レオーネの後継として登場したレガシィが、ボディサイズ、エンジン排気量共に拡大したため、レオーネ同等の車格を担う新型車種としてインプレッサは誕生する。
そのスタイリングは、レガシイ同様に誰が見ても『カッコイイ』と思わせるもので、この2台の登場が、スバル車=カッコイイというイメージの醸成に一役買ったといっても大袈裟ではないだろう。
そんなスタイリングの変化と共に、語らないワケにはいかないのが、世界ラリー選手権(WRC)での活躍である。イギリスのプロドライブ社とタッグを組み、1990年からレガシィで本格参戦を開始。毎年ラリーカーとしてのポテンシャルアップを図り、1993年シーズンには初勝利を遂げたのだ。
インプレッサは、WRCでの活躍も視野に入れて開発されたと言われており、レガシィよりもコンパクトで軽量なボディに、レガシィ同様のEJ20型水平対向4気筒DOHCターボ&フルタイム4WDを組み合わせている。レガシィでWRCの勝利を得るまでにノウハウを蓄えたスバルは、当然、インプレッサにWRCの制覇を期待し、それを見事に実現してしまうのである。
インプレッサがWRCにデビューしたのは、レガシィが初優勝を飾った1993年、シーズン終盤の1000湖ラリー(ラリーフィンランド)。デビュー戦ながらトップ争いを演じ、2位でフィニッシュするなど期待通りの結果を残した。そしてついにシリーズタイトルを獲得したのは1995年のこと。コリン・マクレーが8戦中5勝するという圧倒的な強さを誇り、ドライバーズタイトルの獲得だけでなく、コンストラクターズもスバルワールドラリーチームが獲得したのだ。
このWRCの活躍で、インプレッサの人気だけでなく、スバルブランドの人気までが世界中で急上昇したのである。現在のスバルのイメージの大部分は、この時期に形成されたものといって良いだろう。
そんな、世界中に多くのスバルファンを生み出した初代インプレッサWRX。日本国内においても、もちろんインプレッサの活躍を観て、スバルファンになったクルマ好きも少なくないはずだ。
ここに登場いただく1993年式インプレッサWRX(GC8)のオーナー『きのくにライダー』さんも、そのひとりだ。
「小さい頃、ずっとWRCのビデオを観ていたんです。恐らく父が持っていたビデオだったんでしょうね。555カラーのインプレッサが走る姿がカッコよくて、繰り返し何度も観ていた想い出があります」という、きのくにライダーさんは現在29歳。物心がついた頃にオンタイムのWRCのビデオを観ていたとすれば、2000年頃であろうと推測される。
「ビデオに出ていたインプレッサの、小っちゃいリヤウイングの形がカッコ良くて、記憶に残っていたんですよね。後々、アプライドAだけに装着されたリヤウイングだって知ったんです」
ちなみに“アプライドA”とは、分類番号のこと。一般的な国産車の場合、マイナーチェンジを挟んで、前期/後期などと分類するが、インプレッサWRXのように多くの改良が加えられたモデルは、前期後期では分類しきれない。そこでスバルは、GC8であればアプライドAからアプライドGまでの分類番号を型式に加えている。アプライドAに該当するのは、1992年11月〜1993年9月のWRXセダンと、WRXセダンType RAとなるそうだ。
そんな幼少期の体験を経たきのくにライダーさんに、自動車免許を取得し自分の愛車を選ぶタイミングが訪れる。WRCを走るインプレッサから、スバル車に興味が広がっていたきのくにライダーさんは、初めての愛車を選ぶ頃には『絶対サンバーに乗る』と決めていたという。
「4気筒エンジンで足まわりは4輪独立懸架、さらにリヤエンジン・リヤドライブっていう他にはない変わったところが好きだったんです。探し始めたらATだったんですけど、ちょうど良いサンバーが見つかって、初心者マークを付けて乗り始めたんです」
サンバーに乗って、きのくにライダーさんはますますスバルにハマっていく。
「スバルというか、富士重工って素晴らしいって実感できたんです。WRCのインプレッサで興味をもって、博物館などにも色々と行って、富士重工の歴史を調べたりしていたんですが、そこで学んだ知識通りのクルマだったんですよ、サンバーって」
と、サンバーについて熱く語ってくれたのだが、それではなぜインプレッサに乗り換えたのであろうか?
「サンバーが素晴らしいのはわかったんですが、MTに乗りたいっていうのと『やっぱりスバルなら、水平対向4気筒2ℓターボのEJ20型エンジンだよなぁ』って思って探し始めたら、ちょうどこれが出てたんですよ」
それが今から4年前のこと。見つけたインプレッサは、たまたまだったそうだが、きのくにライダーさんがスバルに興味を持つきっかけとなったGC8型のアプライドAで、しかもまたとない状態の良さを保った車両だったという。
「販売していたお店に足を運んで、現物を見て『これだ!!』と、その場で契約しちゃいました」
きのくにライダーさんが手に入れたインプレッサは、前述の通り1年弱という短い生産期間の極最初期となるアプライドA型。今となっては非常に希少な個体となる。
「前のオーナーさんが、大事にされていたんでしょうね。ほぼオリジナルの状態で、走行距離も5万km台。そして、どの部分もすごく程度が良かったんです」
ボディカラーはインプレッサとしては珍しいレッド。色褪せしやすい色なのだが、きのくにライダーさんが手に入れたインプレッサWRXは、工場集荷時の塗装のままで、現在の状態を保っているのだ。その証拠といっていいかどうかわからないが、エアダクトなどの樹脂パーツは、やや褪色しているのである。もし全塗装していれば、当然、樹脂パーツも再塗装するはずなので、色褪せているはずはない。
「ABSとか電動サンルーフといったメーカーオプションも装備されていたんです。特に電動サンルーフ装着車はかなり珍しいみたいで、インプレッサが集まるイベントに参加しても、ほかに見たことはありません。オプションパーツカタログを持ってないのでなんとも言えませんが、恐らくフルオプションに近いんじゃないでしょうか?」
程度が良いとは言え、ラインオフからすでに30年以上が経過した車両である。これまでに何かトラブルに見舞われたとこがないか聞いてみると、フロントブレーキが引きずりを起こすというトラブルが発生したそうだ。
「整備してもらおうとディーラーに行ったんですが、新品部品が出ないので、もう修理できませんと言われてしまったんです。仕方なく知り合いの整備工場で修理してもらったんですが『社外のシールキットならまだあるから、それでオーバーホールする方法と、社外の大容量キャリパーに交換する方法があるけど、どちらにします?』と聞かれたので、迷わずオーバーホールしてもらう方を選びました」
トラブルの話から外れてしまうが、きのくにライダーさんはできるだけオリジナルの状態を保って乗っていきたいという考えをお持ちだ。そんな思いがあるから、ホイールの中とはいえども、しっかりと目につくキャリパーを変更するというのは避けたかった。よって、純正キャリパーをオーバーホールする方法を選んだのだ。
とは言えまだ29歳。カスタマイズ的なこともしてみたいお年頃でもある。
「オーディオは壊れてしまったので、GC8が現役だった1990年代に流行っていたという、派手なイルミネーションが特徴の当時モノ2DINオーディオに付け替えています。それからブースト計も、当時モノの大森製を追加で装着してます!」と楽しそうに、そのこだわりを語ってくれた。
スバル車を愛するきのくにライダーさんならば、インプレッサWRXがまだ現行車として走り回っていた1990年代のような輝きを保って、クラシックカーと呼ばれるようになるまで乗り続けていくことだろう。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 稲田浩章)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:ジーライオンミュージアム&赤レンガ倉庫横広場 (大阪府大阪市港区海岸通2-6)
[GAZOO編集部]
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