サバンナRX-7一緒に最後の最期まで…私にとっては無くてはならないクルマです!

  • GAZOO愛車取材会の会場である群馬県 つつじが岡公園で取材したマツダ・サバンナRX-7(FC3S)

    マツダ・サバンナRX-7(FC3S)



自動車は、数万点とも言われる金属や樹脂類などの部品で構成された無機物である。
しかしこの愛車取材をしていると、時折、オーナーさんとその愛車が出会うのは運命だったのではないか? クルマにも魂と意志があって通じ合っているのではないか? と感じることがある。
haruさんの愛車であるマツダ・サバンナRX-7(FC3S)も、18歳の時に運命的な巡り合わせで彼女の元へとやってきたクルマだ。

HaruさんがFC3S(以下、FC)の存在を知ったのはまだ小さかった頃。近所で見かけていた赤いFCがキッカケだった。

「親がクルマ好きだったこともあって、私も子供の頃からずっとクルマが好きでした。その中でも、特にパカッと開くリトラクタブルヘッドライトで、少し古めのカクカクしているクルマが好きだったんです。初めての愛車にFCを選んだのは、小さな頃に見かけたFCの存在と、ロータリーエンジンを積んでいるクルマが良かったからです」

「私がクルマに乗り始めた当時は、クルマ好きな若い人達はロータリー車だとFD3SやRX-8(SE3P)に興味があるという方が多くて、FCって若い人が乗っているイメージがなかったので、それもまたちょっと渋いかんじで良いなって」

haruさんはマニュアル免許を取得する前に、ご両親と一緒にロータリー車の専門店へと足を運んだそうだ。そこで、ある一台のクルマと運命的な出会いを果たす。

「お店には数台のFCが置いてあったんですけど、その中にあった赤いFCの運転席や助手席に座らせてもらったんです。それで『わぁ~、こんな感じなんだ! 絶対FCを買う!!』って、決意したんです」

「その後、また別のお店にクルマを見に行ったら、そこにも赤いFCがあったんですよね。なんか私は、赤のFCに出会うことが多いなーと思いながら、このクルマを買うことに決めたんですよ。で、ふと車検証を見たら、まだ前のオーナーさんの自賠責保険が残っていて、そこにはなんと自分が最初に見にいったクルマ屋さんの名前が入っていたんです。私が一番最初に触らせてもらった赤いFCがどなたかに買われ、1年弱でこのお店に売却されたのだと思います。同じクルマだと判ったのは、すごく綺麗な赤いボディで、助手席側のドアの立てつけが悪かったところも同じだったからですね」

そう、haruさんが“FCを買う”という決意へと導いてくれたクルマが、偶然にもまったく別のお店で彼女の前に再び降臨したというわけだ。しかも、彼女は当初それを知らずに購入しようとしていたのである。

「とにかく本当にびっくりしました。後に昔の中古車サイトの掲載情報を遡って調べたらこの子の情報を見つけたんですが、走行距離も同じでその他の仕様も同じ。『やっぱりこのクルマじゃん!』って。それを知った時は『この子は私のところに来たかったのかもしれない。だから私が一生乗り続けた方が良いんだろうな』って思って…」

こうして運命的な巡り合わせでharuさんの相棒となったRX-7は、彼女の人生に次々と変化をもたらしていく。

「この子が私のところに来て間もない頃は、当然クルマのメカ的なことは全然分からず、壊れては修理に出すということの繰り返しでした。けれど『えっどうしよう、バイト代が底をついた! 正社員にならないとダメかも…』といった状況に陥って、正社員の仕事に転職しました」

「そしてその頃、SNSの“みんカラ”でFC3Sメインのオフ会のお誘いをいただいて、ふらっと参加してみたんです。そうしたら皆さん良い人ばかりで、クルマに関しての色々なアドバイスを頂けました。ちなみに今でもそのグループの方々とは付き合いがあるんですよ」

実は、ロータリー乗りで整備士である旦那様と知り合ったのも、そのオフ会だったそうだ。旦那さんとゴールインした後は、ガレージに3台、家の中に1台、さらに敷地内に駐車し放題というクルマ好き夫婦の理想とも言えるマイホームも手に入れた。
そんなharuさんは、さらにクルマに対する愛情が深まったようで、とある決意をする。

「この子を維持するために、泣く泣く正社員にはなったものの、いろんな業界を転々としているうちに、やっぱりクルマに関わる仕事をしたいって思うようになったんです。そこで転職時に職業訓練制度を利用して、昨年から2級整備士の資格が取れる整備士学校に通っているんですよ」

クルマ好きの女性はそれなりにいるものの、本格的に整備士学校に通うほどの情熱を持つ女性はそれほど多くはない。やはりharuさんが生粋のクルマ好きなのがよくわかる。

「学校の仲間にはロータリー乗りがいなかったので、私が初めてこのクルマで学校に行った時には『このクルマお姉さんの!?』ってみんなから見られました(笑)。そんな学校の仲間たちとも仲が良くて、ウチで皆とバーベキューした時は『いつか自分たちもこんな家を持ちたい』って楽しそうにしてくれていました」

さらにharuさんは、学校で知識を学ぶことで、愛車の不調原因もなんとなくわかるようになってきたそうだ。

「なんとなく授業を聞いてノートを取っていると、実際自分のクルマが不調の時も『ここがダメなんじゃないのかな?』っていう推測が立てられるようになってきたんですよね。ただ、ロータリーエンジンとなると、教科書に全然載ってないんです。もうちょっと深掘りしてくれてもいいんじゃない? って(笑)」

そんなharuさんにRX-7のカスタムやお気に入りの部分について尋ねてみた。

「納車時にRE雨宮のリヤスポイラーをつけてもらいました。マフラーは車検対応のJICマジック製を装着しています。そして真っ白なスピードラインのホイールもお気に入りです。塗装に関しては、私が所有してきた9年間は洗車時に撥水スプレーをかける程度で、とくに何もしていないんですよ。元々は関西の鈑金屋さんのデモカーだったらしくて、恐らく20年近く前だと思いますが、純正と同じ色でオールペンしているそうです。長い間青空駐車だったのに色褪せずにこれだけキレイってことは、それだけ上質で強い塗装だったんでしょうね」

愛機FC3Sは、群馬に引っ越してくるまではイベントに参加するくらいだったそうだが、今ではクルマ通勤ということもあって、フルに稼働しているそうだ。
「いつどんなトラブルが起きるかわからないので、最低限の工具とクーラント、エンジンオイルとオイルフィルター、あと洗車道具を積んでいます。それと夏や冬はスロットルポジションセンサーの調整は必ずするようにしています。そうしないとアイドリングが安定しないんですよね」

たくさん乗る分、トラブル対策にもしっかりと気を遣っているところは、さすがは整備士の卵。そして実は彼女、すでにスバル系の企業に整備士として内定しているという。

「ハイブリッドやEVではなく、ガソリンエンジンのクルマに携わっていたかったので、就職するならスバル系が良いなって思っていました。だから、そこから内定を頂けて嬉しかったですね。2025年の春頃には就職している予定なので、それに合わせてスバルWRXのSTiを買いたいと思っているんです。実は旦那もWRXに乗っているんですけど、たまに旦那のクルマに乗ると快適ですからね」

そして、このWRX増車計画に伴って、パワーアップ予定だったRX-7の方向性も変わってくる可能性があるとのことだ。

「実は学校に通う前にハイフロータービンに変えたんですけど、セッティングを取り直していなかったんですね。なので、社外のフルコンピューターを買って、できれば280psくらいを狙いたいと思っていたんです。けれど、それには40万くらい掛かってしまうし、学校に行きはじめたこともあって後回しになっていたりして…。そしてこの先、WRXとの2台体制となると、速さや快適さはWRXに任せて、FCはノーマルのまま長く大事に乗り続ける方がいいのかな? という考えにもなってきているんです」

「この子は私にとって一生一緒のクルマです。旦那よりこの子との付き合いが長いですし(笑)。この子がいたから旦那やいろんな人とも知り合って仲良くなることができたし、私がこの子と一緒にいた期間以上のものを貰っていますから。自宅に保管場所もあるし、できたらこのクルマを棺桶にしたいくらい。知り合いのスクラップ屋さんには、私が死んだら一緒にスクラップにして欲しいって頼んであるんです」

自動車は、数万点とも言われる金属や樹脂類などの部品でできた無機物である。
けれども、haruさんとこのRX-7はお互いに惹かれあって、出会うべくして出会ったのではないか? やはりそんなふうに思えてならない。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)

許可を得て取材を行っています
取材場所:つつじが岡公園(群馬県館林市花山町3278)

[GAZOO編集部]