気付けば38万km超え、月まで行ける距離を共にしてきたアルテッツァ

  • GAZOO愛車取材会の会場である群馬県 つつじが岡公園で取材したトヨタ・アルテッツァ(SXE10)

    トヨタ・アルテッツァ(SXE10)



コンパクトな4ドアスポーツセダンとして1998年に登場したトヨタのFR車・アルテッツァ(SXE10)。セダンとしての快適な居住性と、広いトランクスペースという実用性。そして走る楽しさを兼ね備えた1台として、長く愛用し続けるオーナーも少なくない。
しかし、それでも『地球から月に到達する距離(38万4400km)』を走破したオーナーは稀有な存在である。今回ご紹介するTOSHIさんは、現在月からの帰り道となる42万km地点を走っているオーナーだ。

しかし、TOSHIさんがアルテッツァを購入した当時は、実用面を重視して割り切って購入したクルマだったという。それにも関わらず、これだけ長い間手放さずアルテッツァを愛用し続けるのは、このクルマが“必要に迫られて買った実用車”から“お気に入りの愛車”へと、大幅に格上げされたからだそうだ。

子供の頃からスポーツカーが大好きで、学生の時からAW11型のMR2に8年、さらにロータスエスプリ、ケータハムスーパー7など様々なスポーツカーをはじめ、MR2時代から並行して、街乗り兼トライアル競技車として10年間でジムニーを3台乗り継ぐなど、カーライフを満喫していたTOSHIさん。

そんな彼がアルテッツァを購入することにしたのは、2001年のこと。普段乗りだった社用車の軽自動車が事故に遭い、当時の愛車がエスプリとスーパー7という2シーター車だけだったため、使い勝手の良いクルマを増車することにしたのだという。

「やっぱりスポーツカーだと冠婚葬祭があったときや、ゴルフやスキーなどに使うには向いていないじゃないですか。となると、人数が多く乗れて荷物も載せられる4ドア車、さらにコンパクトなクルマが好きで、燃費も考えるとNAエンジン車。それでいて乗り慣れているマニュアル車で、リヤ駆動を希望するとなると…、当時は選択肢がアルテッツァしかなかったんですよね」

エスプリやスーパー7というスパルタンなクルマに乗っていただけに、発売されたアルテッツァを見た時は興味の対象ではなく、購入することはないだろうと思っていたという。
「それでも生活的に4ドア車が必要となって…つまり僕にとってアルテッツァの購入は半ば妥協だったんです」

TOSHIさんが2001年に購入したトヨタ・アルテッツァは、スポーツユニットとして人気のあった4気筒3S-GE型エンジンを搭載し、最高出力210psを発揮する『RS200』。積載能力はもちろん、スポーティな走りも楽しめるグレードだ。

「アルテッツァに乗ってみたら、想像以上に運転が楽しかったんです。峠道を走っていても安心して踏んでいけるし、コントローラブルで本当に扱いやすい。今までは特色のある趣味的なクルマを買っていたのですが、大好きがゆえ大事にし過ぎていて、乗るのが勿体なくなってお飾りになっちゃうことが多かったんです。でもアルテッツァは実用車としてナーバスにならずに乗ることができたのが良かったんだと思います」

実際、フリースタイルのスキーが趣味だというTOSHIさんは、冬場はずっとこのアルテッツァに乗っているそうで、週1で埼玉県から群馬や新潟のスキー場を往復していたそうだ。雪道にリヤ駆動は向いてないのでは? とも思うが、スタッドレスタイヤを履いて何度も通っていれば問題なしとのこと。また、凍結防止剤でクルマ汚れた時は、下まわりも含めしっかり洗車しているという。

結果的にアルテッツァの楽しさに目覚めることに繋がり、気がつけば走行距離は42万kmに。それだけの距離を走っていると、途中で乗り換えを考えたことはなかったのであろうか?

「クルマを買った当時は10年も乗れれば良いかなと思っていたので、常に次の実用車を探してはいました。でもどうしても乗り換えなきゃという理由がなかったんですよね。一度レクサスISが出た時には良いなと思ったんですけど、今更AT車に乗り換える必要もないし…と思っているうちに、長い付き合いになっています」

ちなみに趣味車としては、お子様が生まれたタイミングで管理が大変なエスプリとスーパー7を手放し、代わりにロードスターの限定仕様車『M2-1001』を所有。現在はアルテッツァとの2台体制となる。しかし、M2-1001は大事にしまってあることが多く、年間2000km走るかどうかだそうだ。

「社外品に変わっているのは、ホイールとマフラー、それと運転席と助手席のシートだけです。ホイールは毎回タイヤ交換の際にネットオークションでホイール込みの4本セットを安く購入するようにしているんですが、今履いているスパルコ製のホイールは気に入っていて、元々ブロンズだったのを明るい雰囲気にと自分でシルバーに塗装しました。マフラーは10万km走った時点で純正がダメになってしまって、それからは中古の物への入れ替えを繰り返しています。現在はフジツボのチタン製マフラーで、純正も含めると3本目になります。あとはこのレカロシートですけど、これも10年くらい前に純正シートのスポンジがボロボロと落ちてしまって、お尻が痛くなってしまうので、ネットオークションで購入したものに入れ替えました」

「スキーに行く際、ルーフキャリアにスキー板を積んで走りたくないので、クルマを注文する時に長物でも車載できるようにトランクスルー(リヤセンターアームレスト)を追加してもらったんです。おかげでスキー板を室内に格納して、家族4人でスキー場に行くことができるんです」

これだけ長く乗り続けているとなると、車両の修理やメンテナンス、日頃のケアなどはどうしているのだろうか。何せ42万kmという走行距離とは思えないほど、とにかく綺麗な車両なのだ。

「洗車はドライブに行った都度しています。エンジンルームも拭き上げていますよ。ヘッドライトは曇らないように定期的に磨いています。それとオイル交換などの簡単なメンテナンスは自分で、車検は近所のガソリンスタンドにお任せです。トラブルや修理の時は近所のネッツトヨタさんのお世話になっていますね」

内容に合わせてしっかり依頼先を使い分けているところもだが、買った当初からの整備記録もすべて保管してあるというからさすがだ。ただ、エンジンは流石にこれだけ乗ると悲鳴を上げたようで、36万kmでリビルトエンジンに載せ替えたそうだ。

「エンジンオイルの漏れが酷くなって、これでは流石に車検を通すのが難しいと言われてしまって。乗り換えも考えたんですけど、マニュアルミッションのクルマがなくなってきている中で、せっかくだから乗れるだけ乗り続けようと思ったんです。ディーラーさんに相談したら、リビルトエンジンへの載せ替えを提案してもらい、そうしました。100万円かかりましたけど、これであと30万km乗り続けられるなら、安いものかなと思っています」

ちなみにこのエンジン載せ替えのタイミングで、初めてクラッチ交換も行った。交換前のクラッチ板はこれだけ乗ったにも関わらずまだ十分に使えそうなほど綺麗だったそうで、TOSHIさんのちょっとした自慢でもあるらしい。

「このクルマは簡単には壊れず、いつまでも乗っていられるような安心感があることが大きいですね。36万kmでエンジンを載せ替えたので、今度はその倍の70万kmを目指したいです! それと、今思うと自分が好きだって思ったクルマは意外と合わなくて、アルテッツァのように力を抜いて買ったクルマが合ったりするものなんですね」

TOSHIさんは、そう目を細めて微笑んだ。

彼がアルテッツァをこれだけ長く乗り続けるほど気に入ったのは、このクルマがライフスタイルと走りの好みにベストマッチする一台だったからに違いない。

遥かなる70万kmを目指して、彼は今日も愛車と一緒に走り続ける。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)

許可を得て取材を行っています
取材場所:つつじが岡公園(群馬県館林市花山町3278)

[GAZOO編集部]