クルマを運転することの楽しさを教えてくれたランクル70と共に、これからも
クルマ趣味の醍醐味と言えば、何と言っても走らせる楽しさだろう。もちろん、ひと言で走らせるといっても、仲間や家族と一緒に遠くまでドライブしたり、サーキットやダートコースといった専用エリアで愛機の限界性能を試してみたりと、その走らせ方も人それぞれ。
しかしどんな走らせ方であっても、ドライビング以外では得られないワクワク感は最大のスパイスであり、クルマを走らせるからこそ新たな景色も見えてくるというもの。
2000年式トヨタ・ランドクルーザー70LX(HZJ76V)を手にしたMarikoさんもまた、新たな景色と出会い、知見を広げ続けているという。
ランドクルーザーと言えば、言わずと知れたトヨタが世界に誇るクロスカントリー車。ルーツとなるBJ型から数えると、すでに70年を超える長い歴史を刻み、単一車種名を継続し続ける日本最長のモデルだ。
中でも70系は第一世代が1984年から2004年までの20年、その後も海外輸出向けに製造し続け、時代に合わせてバージョンアップが繰り返されている。
2014年には日本国内の第二世代モデルが“30周年記念限定”として再販されたのが大きな話題となり、さらに2023年には現行モデルとして正規ラインアップに復活。搭載エンジンは変更されているが、76の型式は継続されているため、こちらは第三世代というわけだ。
そんなランクル70をMarikoさんが相棒に選んだのは10年ほど前のこと。オフロード走行の楽しさに気づいてしまったことがキッカケなのだとか。
「免許を取得してしばらくは初代のトヨタ・bB(NCP30)に乗っていたんです。でもこの頃は運転するのが好きかって聞かれてもわからなかったというのが正直なところ。それでも仕事で舗装路以外を走ることが多かったので、そういった悪路を走っていると楽しいって気が付いたんです。思い起こせば学生の頃から山登りとかが好きで、暇があれば山に登ったりしていたんですよね。だから自然の中に入り込める四輪駆動車だったら、運転がもっと楽しくなるんじゃないかって思って、ランクルを探すようになったんです」
ランクルを探しはじめたところで、問題はどの型を選ぶか。bBからの乗り換えなら乗用車テイストが色濃いプラドや、100系、200系といった現代的に進化したモデルにたどり着くのが通常だろう。しかしMarikoさんの選択は、シンプルな構造と卓越した走破性をバランスさせた70系。競技系オフロードでも信頼されるヘビーデューティなモデルだったのだ。
「どうせ乗るなら乗用車的なものではなく、本気で使い倒せる四駆が欲しかったんです。その頃だと60系の中古車は多かったんですが、やっぱりデカすぎて取り回しが悪そうだなって。その点でも70系はちょうど良いサイズで、何よりもカクカクしたボディに丸目ライトが欲しかったというのが70系を選んだ理由ですね」
搭載されるエンジンは4163㏄の1HZ型ディーゼルエンジン。世代的には4WDにも高速道路での快適性が求められていた時代にもかかわらず、質実剛健なパワーユニットを選択しているのが特徴だ。ターボ付きモデルと比べると絶対的なパワーこそ劣っているが、低回転域から発生するパワー&トルクバンドが広いため、オフロードでの扱いやすさは抜群。その優位性を生かして今もランクルシリーズの人気を支える存在でもある。
ドライブトレインに関しては、Marikoさんのランクル70は5速MTをチョイスしている。近年ではAT技術の進歩によって悪路でも駆動配分などを電子制御によって自動で選択してくれる機能なども搭載されているが、やはり運転を楽しみたい人にとって、自らギヤを選択できるMT車という要素は外せない。
当然、ランクル70購入時の条件では『MT限定』だったという。
ランクル70のサスペンションは1999年までが前後ともにリーフスプリング、以降はフロントにコイルスプリング、リヤにリーフスプリングという組み合わせになる。このリーフスプリングはシンプルな構造と高い耐荷重性能、さらに耐久性にも優れているとあって、ランクルの質実剛健さを支える装備のひとつである。
同型の初代プラドでは前後ともにコイルスプリングを採用し、乗り心地を改善したことからも、リーフスプリングが原始的な装備であることは明白。しかし、ユーティリティ性能ではなく、タフな走破性を求めるランクルにとっては欠かすことのできない特徴とも言えるのだ。
基本的にはノーマルのスタイリングが好きではあるが、ダートを走るために足まわりは2インチほどアップし、タイヤも外径アップしたAT(オールテレーン)タイヤに変更。もちろんオフロードコースだけでなく通勤や街乗りにも使用するためMT(マッドテレーン)ではなくライトユースにも適したタイヤをチョイスしている。
とは言っても、ランクル70との組み合わせならATタイヤでも十分な走破性を実現してくれる。実際に雪が降った際にも林道に突撃して難なく走行を楽しめたのは、長年の経験もあるが、ランクル70だからこそと言えるだろう。流石は『どこへでも行き、生きて帰って来られる』という金言を唱えるだけはある。
「このランクル70は、欲しいって思って探していた時に、地元の4WDショップにあった車体なんですよ。まだ売り出す前のタイミングで、この状態だったのですぐに購入を決めました。ちょうどその頃に転職を考えていて、地元の大分から群馬まで引っ越すことになったんですが、そのまま自走で持ってきちゃいました。だから地元ではあんまりオフロードを走らせる機会がなかったんですけど、転職先の先輩にジムニーオーナーの方がいて、その流れでオフロードコースに連れて行ってもらうようになり、ランクル70を走らせるのがもっと楽しくなっちゃいましたよ」
Marikoさんにとって、オフロード走行を楽しむ際に欠かせない装備がフェンダーミラー。ドアミラーの方がスタイリング的にスッキリして見えるのは理解しているのだが、タイヤ付近を視認できるこの無骨なミラーは、見た目ではなく実用性に優れているのがお気に入りだと言う。あくまでもオフロードを楽しむための愛車である以上、目的に合わせた機能性を重視するのは当然というわけだ。
フロントバンパーは純正部品をチッピングコートでペイントしブラックアウト。オフロードを楽しんでいくにあたり、最近はウインチが欲しくなってきているという。実際にランクル70にはウインチが純正採用されていたグレードもあるため、導入する際も比較的手軽に装着することができるというのは、ワークホースとしてのキャラクターならでは。しかし、ウインチを装着すると1ナンバーになってしまうため、手軽な4ナンバーをキープするか、ウインチを装着するかで悩んでいる最中だそうだ。
フロントに対してリヤはバンパーレスにすることでデパーチャーアングルを稼いでいる。この無骨なリヤスタイルもMarikoさんのお気に入りなのだが、華奢な女性オーナーの愛車には見えない漢らしさとのギャップも見どころ。
マフラーはノーマルが腐って脱落してしまったため、溶接によって補修済み。購入から約15万キロほど乗り、走行距離は30万キロオーバーとなっている。それなりの不具合はチョコチョコ起こっているものの、常日頃から異音などを気にして乗っているので、不意のトラブルでも早い段階で気付くことができているのだとか。
ステアリングを含めてインテリアはフルノーマル。女性なのに大きなクルマと驚かれることも多いそうだが、車高が高いぶん視界が広いので運転しやすい。さらに地面とのクリアランスを気にする必要がないため、気軽に乗って出かけることができる。こういったところもランクル70を選んで正解だったという。
シートもノーマルのまま。さすがにリヤシートは4ナンバー車のため座り心地は今ひとつだが、運転席と助手席に関してはクッション性も良く、運転していても疲れることはない。
ちなみに登山やキャンプと言ったアウトドアレジャーも趣味というMarikoさん。その相棒としてもランクル70を活用しているが、車内がクリーンに保たれているのはさすが女性オーナーと感心させられるポイントだ。
ランクルだけでなくアクティブなMarikoさんのもうひとつの楽しみがオートバイライフだという。
高校生の頃は両親に反対されていたため乗ることが叶わなかったというものの、大学生になり親元を離れた途端バイク欲求が爆発。すぐに免許を取得&オートバイを購入してしまったというから、その情熱はランクル以上なのかもしれない。
はじめての愛車として迎え入れたのは、ホンダ・マグナ250。そして現在の愛機は林道ツーリング用のカワサキ・スーパーシェルパに加え、2013年式のハーレーダビッドソンXL883も増車。ツーリングとともに写真も撮るようになり、時間が空いたら様々なスポットを訪れるようになった。
そしてこのバイク趣味が人との繋がりを深め、最近では古いハーレーで行うレースのスタッフも務めている。その仲間でチームを作ってホンダ・スーパーカブのレースに参戦するにまで至り、休日をフルに満喫しているのだ。
「ランクル70と一緒に群馬にやって来て、いろいろな楽しみが広がりましたね。オフロードを走ることでクルマの運転がどんどん好きになり、それに伴って興味があったことを始める勇気も出ました。ランクル70を買おうと思った時も大きな決断でしたが、転職して群馬に移住したのも人生の転換点。そのどちらも、自分にとってポジティブな影響を与えてくれたのは、本当にラッキーでしたね」
ランクル70を手に入れたことで趣味だけでなく生活環境の変化、さらには人生をエンジョイする様々な出会いがあったというMarikoさん。アクティブな女性だからこそ選んだランクル70は、その期待を大きく上回る様々な幸福を運んで来てくれた。
30万キロという走行距離は、通常のクルマではかなりくたびれた状態となるところだが、ランクルの世界ではまだまだ若輩者。その耐久性を考えれば、このランクルはこれからも色々な楽しみをMarikoさんに運んできてくれることだろう。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 中村レオ)
許可を得て取材を行っています
取材場所:群馬大学 桐生キャンパス(群馬県桐生市天神町1-5-1)
[GAZOO編集部]
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