生粋のZマニアは北米仕様のZ31を軸に、Z-carライフを満喫中

  • GAZOO愛車取材会の会場である宮城県東松島市のKIBOTCHA(キボッチャ)で取材したフェアレディZ(Z31)の北米仕様300ZX(HZ31)

    日産・フェアレディZ(Z31)の北米仕様 300ZX(HZ31)



日産フェアレディZのオーナーが集うカークラブ『Zcar Family MIYAGI』を主催するオーナー。クラブのメンバーは宮城県に限らず、東北全域から参加しており、月に一度のツーリングなどの活動を通して交流を重ねている。

初代S30から現行のRZ34まで、どの年代のZでも参加できることから、個性的なクルマとオーナーが集まるが、代表を務めているこのZ31のオーナーも、自他ともに認めるZマニア。過去には3代目のZ31から6代目のZ34まで最大4台のZを同時に所有し、そのすべてのボディ色が赤だったことから、ご近所でも有名になって評判もよかったという。

現在はフェアレディZ(Z31)の北米仕様である『300ZX(HZ31)』と『フェアレディZ ロードスター(Z34)』の2台を所有するオーナー。

普段はエアコンの効くZ34ロードスターに乗ることが多いとは言うものの、より思い入れが深いのは「他人と被ることがないレアなZ31」の方だと言う。実は所有する1986年式の北米仕様は、Z31マニアの間では通称“86モデル”として知られる希少性の高いモデルなのである。

Z31は1986年の途中にマイナーチェンジが実施され、前後のデザインが大きく変更された。フェンダーはより大きく膨れ上がったフレア形状となり、それを境にいわゆる前期型と後期型に分類されている。だが、1986年の北米仕様に限って、前後のデザインは前期型ではあるが、フェンダーは後期型という両方の特徴を持った車両が短期間ながら生産されていたという。それが“86モデル”で、便宜上『北米にだけ存在した中期型』と表現されることもあるようだ。

そんな希少な86モデルのZ31と出会ったのは、およそ10年前。知人のコレクターが所有していた車両だったのだが、見せてもらったらホットレッドという当時のカタログにも使用されていた訴求色で、しかも86モデルという他にはないスタイリング。ビビビッと来るほどすっかり気に入ってしまい、ぜひ譲って欲しいとお願いしたのだそうだ。

「そもそもZが好きになったのは、子供の頃にS30に乗せてもらった原体験がキッカケです。シートに座ると前がまったく見えなくて、子供心になんだかすごいクルマだぞって感じました。その後、『西部警察』や漫画の『よろしくメカドック』を見て、心を全部持っていかれました(笑)。免許を取る前にS130を買ってしまったりと、Zひと筋です。あ、一度だけ試しにホンダのS2000に乗ったこともあったんですけど、やっぱり何か違うなと思って、すぐにZに戻りました」

これまで数々のZを乗り継いできたオーナーにとっても、現在所有するZ31は86モデルの希少性も手伝って、かなり気に入っているとのこと。一方でメカニカルトラブルも多く、あまり頻繁にはロングツーリングに出かけられないのが悩みの種だったそうだ。

しかし最近、エンジンに施した現代的なモディファイにより、快調な走りを手に入れることができたと話す。

「Z31はエンジンの点火時期をディストリビューターで決定する旧式な機械制御を採用しているんですけど、いわゆるフルコンと呼ばれる後付けのECU(エンジンコントロールユニット)で制御する方式に変更したんです。

古いクルマですから純正部品も手に入りにくく、かつ高額にもなってきています。なんだったらデスビの値段とフルコンの値段があまり変わらなかったりもするので、また壊れたり劣化したりすることを考えたらと、フルコン化することに決めました」

この300ZXが搭載するエンジンは、VG30ET型のV型6気筒エンジン。少し専門的な話になってしまうが、エンジンの点火時期はクランク角センサーを兼ねたディストリビューターというパーツで検出されている。それを、より精度の高い別のセンサーに置き換えた上で、純正のECUから、より処理能力の高い最新のECUに変更。点火プラグのひとつひとつにイグニッションコイルを備えるダイレクト・イグニッションという、最近のクルマに採用されている現代的な点火方式も同時に取り入れ、精度の高い点火制御を実現させたというわけだ。

「Z31は、ちょうど現代的な電子制御技術が流行り始める境目にいたモデル。まだ旧式な機械制御も多く採用されているんですけど、それを今の技術である程度克服することができました。おかげですごく調子がよくなって、コンピューターの制御が変わるとクルマも全然変わるんだということを実感しました」

『乗ると壊れるかもしれないから』という切実な理由によって、実は乗らない期間も長く続いていたというZ31。だが、外観は旧車らしい雰囲気を保ちながら、中身だけを新しくすることに見事成功。昨今は乗る機会が増えてきたと、オーナーは喜びを噛み締めている。

この300ZXは、グランド・ラグジュアリー・レザーパッケージを意味する『GLL』というグレードで、本革シートと通称『デジバネ』と呼ばれるデジタル式のメーターを標準装備。ステアリングにはレパードなどにも採用された、当時の最先端技術であった光通信システムも搭載されている。

純正のレザーシートがヤレてしまったので、現在はレカロ製のバケットシートに交換。ただし、いつかは本革でピシッと張り替えてあげようと、純正シートも大切に保管してあるそうだ。

フロントマスクに装着されるのは、アメリカで80年代にドレスアップアイテムとしても流行したノーズブラ。主に飛び石による傷を防止する目的で装着されるものだが、一目でアメリカっぽさが伝わり、オーナーも「この形に合う当時物はかなり珍しいと思います」とお気に入りだ。

そしてアルミホイールは、北米仕様に設定された日産の創立50周年を記念した特別仕様車『50th Anniversary Edition』に設定されていた専用ホイールを装着。フィン形状のスポーク内側がゴールドになっているのが特徴で、オーナー自らディスク面をバフ掛けして、ピッカピカに磨き上げられている。

子供の頃から憧れ、ずっと好きでい続けることができた、Zというかけがえのない存在。今となっては同じ気持ちを持つ同士との絆を持てるようになったことが、オーナーにとっては「何よりの財産」だと言う。自ら立ち上げたクラブの名前に『ファミリー』という言葉を選んだ男の顔には、確固たる意志と柔和な笑顔が同居していた。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)

許可を得て取材を行っています
取材場所:未来学舎 KIBOTCHA(宮城県東松島市野蒜字亀岡80番)

[GAZOO編集部]