「こがんクルマ入って来たけど買わん?」という言葉が運んでくれた光岡・ゼロワンたちとの出会い
一度でもオープンカーの楽しさを味わうと、ヤミツキになってしまうユーザーは思いのほか多い。オープンエアを全身でダイレクトに感じる、あの底知れぬ開放感と爽快感は、言葉では言い表せない。
今回出会ったno open no lifeさんも、そんなオープンカーの愉しさの虜になり、光岡・ゼロワン(MS01)とダイハツ・コペン(LA400K)という、2台のオープンカーを同時所有するに至ったオーナーさんだ。
30年で25台という愛車遍歴を持つno open no lifeさんは、友人からも『よー(よく)クルマば(を)コロコロ替えてから』と言われるほど自他共に認めるカーマニア。まずは過去に所有した愛車をピックアップして並べたという年賀状を拝見しながら、氏の趣向を探ってみよう。
「今まで乗ってきたクルマですが、プレセア、スカイラインGTS-tタイプMを2台、バーキンセブンを2台、RX-7、フェアレディZ、ビートを2台、フェラーリ308レプリカ、スカイラインGT-R、コペン、エスティマエミーナ、アリスト、ミラココア、マイクラC+C、ソニカを2台、BMWミニ、アルトラパンを2台、フィアットバルケッタ、トヨタ86。ザッとこんなもんです(笑)」
軽自動車からスポーツカーまでジャンルや年式もさまざまだが、これだけ車歴が多い理由はなぜなのか? それは、チャンスがあれば色々なクルマに乗ってみたいという考えから、とのこと。
そして、お世話になっている中古車店から『こがん(こんな)クルマ入って来たけど買わん?』という話が舞い込んでくるという環境も、短期間でクルマを乗り換える動機に拍車をかけているという。
そもそも若かりし頃はオートバイにハマっていて、ホンダのCB400Four(通称:ヨンフォア)が愛車だったというno open no lifeさん。クルマは『人が乗れたらいい』と、移動手段的な考えで日産のプレセアを所有していたという。
が、しかし…関東方面在住中にCB400Fourが盗難に遭ってしまい、その次に買ったZ400FXも盗まれてしまうという度重なる不運を経て、オートバイ中心の生活を断念。
その反動と言っていいかはわからないが、クルマを趣向性のあるものにシフトし、まずは当時若者を中心に大人気であったスカイラインGTS-tタイプM(HCR32)を購入して、スポーツカーを運転する楽しさを覚えたそうだ。
その後、長崎に戻る事が決まり、屋根付きガレージを持てる環境が現実的となると『バイクと同じ感覚で風を感じるオープンカーに乗ってみたい』と思い始めたというno open no lifeさん。
「ルパン三世に登場したメルセデスベンツSSKの“THEオープンカー”っていうスタイルに惚れ、興味を持つようになりました」と、おなじオープンホイールスタイルのオープンカーでである『バーキンセブン』を埼玉県のショップで見つけて購入し、長崎へと共に帰郷したのだった。
しかし、メインカーがバーキンセブンというのは少々無理があったようで、普段乗りとしてRX-7(FC3S)も購入することに。「バーキンセブンとRX-7。どっちもセブンって面白いかな~と2台を所有していました(笑)」
現在ほどネットが普及していなかった時代だったため、雑誌の情報や自分の足を頼りにクルマ探しをしていたというno open no lifeさん。
「バーキンセブンでふらりと立ち寄った中古車店で、お店の方から『フェアレディZ(S30)に乗らないか?』と勧められたのです。しかも話を聞いてみると、そのお店のお客さんがバーキンセブンを探しているとのこと。それならばとバーキンセブンを下取りに出して買い換えることを決めました」
しばらくS30に楽しく乗っていたものの、次第に『オープンカーに乗りたくなる症候群』が発病。その症状を和らげるべく、セカンドカーとしてビートを買い足したそうだ。
そして、そのビートに乗って飛び込み営業に入った地元の中古車販売店で、今度はその店の社長さんとクルマの話題で盛り上がり『S30にも乗っているなら、今度そのクルマば見せに来んね』という話しに。これをキッカケに親交が深まったというその中古車販売店の社長さんは、今ではカーライフに無くてはならない存在となっている。
その後もポンティアック フィエロをベースにして製作されたフェラーリ308レプリカや、R32型スカイラインGT-Rなどを所有したものの、昔乗ったバーキンセブンの開放感が忘れられず、前出の中古車販売店に依頼して再度バーキンセブンを購入。
しかし、長崎は台風の上陸が多く、青空駐車だったバーキンセブンはビニールシートをぐるぐる巻きにして完全防備していたものの、シートが飛ばされて無残な姿に…。それを見て『クルマに申し訳ない』という気持ちがこみ上げ、5年間の所有で泣く泣く手放すことを決めたという。
その後もオススメされた多種多様なクルマに乗り換えてカーライフを満喫していたno open no lifeさんに、2016年に『こがんクルマ入って来たけど買わん?』と声がかかる。そのクルマこそが、現在の愛車である光岡・ゼロワン(MS01)である。
「ご年配の方がオーナーだったみたいで、走行2万キロで車庫保管。程度も良さそうだったので即決しました。もう一度、バーキンセブンと同じようなオープンカーに乗りたかったので迷いはなかったです。ゼロワンを迎え入れるために、今度は専用のガレージも作りました」
なんと、専門業者の知り合いに依頼して、テントタイプのカーポートをベースに前後の壁面をウッドで製作したオシャレなガレージを完成させたのだ。
光岡・ゼロワン(MS01)は、光岡自動車が生産・販売していたフルオープン2シーターのスポーツカー。専用設計のフレームやサスペンションで構成された車体に、ユーノス・ロードスターのパワートレインを流用して搭載している。発売された1994年~2000年の間に、350台ほどしか生産されなかった希少車であり、no open no lifeさんが所有する1999年式のモデルにはロードスターの1.8リッターエンジンが採用されている。
「ロードスターのエンジンを使用しているので、部品の供給面でも安心して維持できるのも良いですね。サスペンションはオリジナルの状態でもハードめのセッティングで、スポーツカーに乗り慣れている自分にとっては、ちょうどいい硬さの足まわりです。なによりも、バーキンセブンのようなスタイルは良いですね」と、ご満悦の様子。
インテリアに目をやると、ナルディ製ステアリング装着され、ナビゲーションシステムやスピーカーも追加されていた。エクステリアではフロントウィンドウ両サイドの風避けバイザー、スペアタイヤを外してアルミトランクを装着。他にもサイド出しのワンオフマフラーや、ロールバーにはLEDのハイマウントストップランプがビルトインされているなど、前オーナーの手によってさまざまなカスタマイズが施されていたそうだ。今後はボディを磨いて、鏡面仕上げにしてみたいという。
そんなゼロワンと同時に、トヨタ・86と仕事用のソニカも所有していたが、86でお母様を連れて小浜温泉に行った帰り道にダイハツの店舗に展示してあったコペン セロ(LA400K)を見かけたというno open no lifeさん。
「一度は通り過ぎましたが、どうしても気になりUターンしてコペンを見に行きました。2018年式で走行距離は8700kmと少なく、パーツも多数装着されていました。とても魅力的で欲しいという気持ちが湧いてきたちゃったんです」
そして2022年の春、トヨタ86とコペンを入れ替える形で現在へと至っている。
「元々、前モデルのコペン(L880K)が好きで所有していたこともあったので、現行のコペン セロも気になっていました。たまたま見つけて購入しましたが、とても気に入っています」
HKSスーパーパワーフローをはじめ、Dスポーツ製スポーツショックアブソーバー&A-SPECスプリング、フジツボマフラー、XPLAY用16インチホイール、そしてパイオニアのオーディオシステムなどの社外パーツを多数装着していたことも、購入の決め手になったという。
そして何より、電動開閉式ルーフのアクティブトップなので、雨の日でも気軽に乗る事ができるというのも重要なポイントだ。
「ゼロワンは、降水確率40%以上の日には乗らないようにしています。過去にその確率で雨に見舞われ、大変な思いをしたことがあるので(笑)」と、天候に合わせて、2台のオープンカーを上手に使い分けているというわけだ。
ちなみに、もし取材日に雨が降っていたら当然ながらこのゼロワンはお留守番だったので、天候に恵まれたのは幸いだったといえよう。
「ゼロワンは乗って楽しい、見て楽しい。そして、見られて楽しい最高のクルマです! 草花の匂い、気温など季節を肌で感じるので、オープンカーに乗るようになってからは、四季の移り変わりをいち早く分かるようになりました。着座位置が低いので、実速度よりもスピード感が高く感じられるのもイイですね。唯一の難点とすれば、目線が低すぎるがゆえ、海岸沿いなどをドライブしても防波堤や壁が障害となって、せっかくの景色が見え難いことくらいでしょうか?(笑)」
稲佐山でおこなった取材会には、妹様に協力してもらい、ゼロワンとコペン セロの2台で参加。それぞれの助手席には、お母様と妹様のご主人様が乗車し、家族そろって稲佐山の会場に足を運んでくれた。
「コペンのマフラー修理で2~3週間ほどクルマを預けていた時期があったんですが、妹夫婦の間では『修理とか言いながら別のクルマで戻って来るんじゃない?』と、話題になっていたそうです(笑)」
これまでさまざまなクルマとの出会いと別れを経験してきたno open no lifeさんの「欲しいクルマに巡り合えるタイミングは“縁”があるからだと思います」という言葉には、とても説得力がある。
オートバイをルーツとした『オープンカーで開放感を楽しみたい』という趣向にピッタリな愛車たちとの縁が、彼のカーライフを充実させてきたのだから。そして、その縁を運んできてくれるこの言葉をno open no lifeさんは楽しみに待っているに違いない。
『こがんクルマ入って来たけど買わん?』
(文: 櫛橋哲子 / 撮影: 西野キヨシ)
- 許可を得て取材を行っています
- 取材場所:稲佐山公園(長崎県長崎市大浜町)
[GAZOO編集部]
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