ホンダ・シビックタイプRは各地のゲーセン巡りをする相棒

  • GAZOO愛車取材会の会場である稲佐山公園で取材したホンダ・シビックタイプR (FD2)

    ホンダ・シビックタイプR

父親がスカイラインGT(C210型)、母親は初代シビックRSと、両親が若かりし頃、ともにクルマ好きだった影響もあってか、自身も自然とクルマに興味を持つようになったと語る大分県在住の『すぷん』さん。高校卒業後は整備士を目指して専門学校に進み、その希望が叶って地元のディーラーへと就職。時期を同じくして、初めての愛車となるホンダ・インテグラタイプR(DC2)を購入する。

「NSXが好きだったけど若造が買えるワケも無いので、シビックタイプR(EK9)と悩んだ結果、クーペタイプのスタイルが気に入ってインテグラタイプRに決めました。当時の中古車市場はまだ今のようなネオクラシックカーのブームは起きてなかったので、価格は社会人一年生でも買えるほど手頃なものでした。でも乗っている間に相場がどんどん上がり始めて、4年で5万kmほど乗った後に買い取りに出した際には、購入額からほとんど目減りしていない金額で引き取ってもらえました」

インテグラタイプRはパフォーマンスやハンドリングなど、走りの面では文句は無かったが、しばらく乗り続けていくうちに“もう少しイージーに街乗りしたい”と感じるようになり、フィットRSのCVT車へと乗り換えたというすぷんさん。
しかし、無いものねだりはクルマ好きの常(?)。今度はドライビング面に物足りなさを覚えることになってしまう。

「RSだから普通のフィットよりはパワーがあって、移動手段としては楽だったけど、運転していて左手と左足が暇だなぁって(笑)。フィットを所有してみて、やっぱり自分にはマニュアルミッションのスポーツタイプが合っていることに気がつきました」

「そこで再びクルマ探しを始めて、以前インスタで目にしためちゃくちゃカッコいいカスタム仕様のシビックタイプR(FD2)のことを思い出し、3年前に最終型の2010年式モデルを手に入れました。この時はS2000も候補のひとつとして挙げていたけど、将来結婚する日が来たら2シーターだと何かと不便だろうし、やっぱりドアは4つあった方が便利だろうと。あ、ちなみに結婚する予定も兆しもまったくありませんが(笑)」

シビックに限らず、ホンダのタイプRシリーズと言えば、そのボディカラーはチャンピオンシップホワイトという印象が強いが、他人とカブることが嫌いなすぷんさんが選んだのはクリスタルブラックパール。フルノーマル車を購入して自分の好みに合わせて各部をカスタマイズしてきたそうで、最初に手を付けたのは無限のフロントグリルだったという。

サスペンションはHKSのハイパーマックスSへと変更。車高調整式ではあるが、ローダウンは控え目な範囲に留められている。その他、購入時に擦り傷が目立っていた純正アルミホイールは17インチサイズのアドバンレーシングへと履き替えた。ブラックのボディカラーにブラックのホイールという組み合わせはなかなかの迫力だ。

内装関係では、ステアリングをMOMOのディープコーンタイプをチョイスし、シフトレバーは4〜5速間の操作性を改善させるべく、グリップが長めのトラスト製に交換した。インテリア、エクステリア共にシンプル路線を保ちつつ、独自の個性を活かした仕上がりを見せている。

「以前、バケットタイプのシートを付けていた時期もありましたが、今は純正シートに戻しています。ステアリングは脱着が可能なクィックリリース式です。これには車両の盗難防止という効果だけでなく、ステアリングを外すことで手元の空間が広がって、車内で食事が楽にできる利点もあります(笑)。

正統派のクルマ好きの方々からは“クルマの中で食事なんてケシカラン!”と怒られちゃうかも知れませんが、コロナが深刻だった時期などはレストランにも気軽に入れなかったし、ドライブに行った先でちょっと休憩してテイクアウトのご当地グルメを食べたりと、何かと重宝しました」

愛機であるシビックタイプRは、毎日の通勤やドライブの他、“遠征”と称して各地のゲームセンターを巡るための移動手段としても大いに活躍する。購入時5万5000kmだったトリップメーターは、3年経った今では9万8000kmを刻もうとしている。

「ゲームセンターをまわってトップスコアを残してきたり、SNSで知り合った現地のゲーマーさんと交流したりと結構楽しいです。得意なゲームはビートマニアやダンスレボリューションという、通称“音ゲー”と言われるものですね。なんて、エラそうに言ってますが、僕の実力は中の下なので…。ゲームの世界もクルマと同じように奥が深いですね。この取材の後も、佐世保のゲームセンターに行ってみようかと思っています」

整備士という仕事柄、メンテナンスに関してはすべて自分で行なっているという。目下の悩みは頻発する各所トラブル。幸い、いずれも走行不能に陥るような深刻なものでは無いが、生産から14年近くが経過し、各部に劣化の症状が出始める時期に差し掛かっているようだ。

もちろん経年劣化の症状はこのクルマに限った話では無いが、問題はその対処を行なう際の整備性の厳しさである。

「例えば、エンジンオイル交換ひとつ取っても結構面倒なんです。オイルフィルターが奥まった位置にあって、オイルパンのすぐ横にドライブシャフトの軸やメンバーが邪魔するので、右前のタイヤの隙間から手を突っ込んでやるしかありません。しかもフィルターを外す時にオイルが垂れそうな場所にブーツ類があるので布を被せたりして、何かと気を使いますね。ライトのバルブ類を換える際も、エンジンルーム内の右側にパワステのタンク、左側にはクーラントのタンクがあって手が入り難いですし」

確かに、このクルマをサイドから眺めてみると、広く取られたキャビン部分に対しノーズ部分は短く、かつ絞り込まれた形状となっていることが分かる。エンジンルーム内の空間が狭いというすぷんさんの苦労も容易に想像することができるというわけだ。

ちなみに現在の懸案事項は、セルモーターとラジエターで、近々に時間を見つけて調べてみないと、とのことだった。

「ひとつ直せばまた別の場所がという具合に、手がかかる部分が多くてカスタムより修理代にお金がかかっています。それでも総じて言えば、とても気に入ってます。歴代のシビックタイプRの中でも独特なデザインやVTECエンジンの気持ち良いレスポンスなど、このクルマに乗って音楽を聴きながら運転していると嫌なことも忘れられます」

「さんざん文句を言ってますが整備性の悪さも自分のスキルを磨く上ではプラスの材料ですしね。正直、このクルマをしっかり整備することができれば、大抵のクルマはイケると思うんですよね。そういった意味では、自分にとっては教科書みたいな存在です」

これまでは比較的短い周期での乗り換えだったが、このクルマについては各部のリフレッシュを図りながら今後も長く乗り続けて行きたいと語る。その真っ直ぐな気持ちがあれば、きっといつか“教科書”を完璧にマスターする日が訪れるはずだ。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)

  • 取材場所:稲佐山公園(長崎県長崎市大浜町)
  • 許可を得て取材を行っています

[GAZOO編集部]

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