堅実なクルマを好むお父様とともに、磨き続けてきたトヨタ・アリオン
第二次ベビーブーム前後の世代なら『クルマの免許取得=クルマに乗る=クルマが大好き!』という方程式に、かなりの確率でヒットするはずだ。その背景には、団塊世代と呼ばれた第一次ベビーブームに生まれた彼らの親たちがマイカーを持てるようになり、生まれた時からクルマのある生活が当たり前のような時代になったという事情も大きく影響を与えているかもしれない。
長崎県で開催した出張撮影会に“お父さまの愛車”だというトヨタ・アリオン(NZT260)でご参加いただいた『しもちゃん』さんも、クルマ大好き団塊ジュニア世代のひとり。幼少期からミニカーやクルマのプラモデルをこよなく愛し『父親とクルマに乗る時間が何よりも楽しみでした』と、目をキラキラさせながら語ってくれた。
「父のクルマで出かける時は必ず助手席に乗って、ダッシュボードにかじりつくように前方の風景を見るのが楽しみでした。そんな私の父ですが『王道』もしくは『定番』と呼ばれる物を好み、クルマならトヨタ、家電ならナショナルといった感じで、日本を代表するメーカー品を購入していました。さらに、トヨタ車のなかでもセダンタイプの車両にこだわり、自分が幼稚園の頃は確かTE型のカローラDXに乗っていたと思います」
しもちゃんさんの記憶に残っていた初めてのクルマがTE型のカローラ。そしてもうひとつ、クルマに関して鮮明に覚えているのが、ディーラーの営業マンが自宅に来て商談していたことだ。
「父が好みそうな新車が発売されると、必ず営業マンが家に来てセールスをしていました。父は新しいモノが大好きで、クルマも5~7年のサイクルで買い換えていました。ちなみに、クルマを買うディーラーも昔から一貫して同じ店舗(笑)でした。そのディーラーには今でもお世話になっています」
そんな堅実で新しいモノ好きなお父様は、カローラの次はスプリンター1500SEに買い換え、その後約20年の間にカリーナを3台、そして2011年に現在のアリオンへと、トヨタのセダンばかりを乗り継いできたそうだ。
「余談ですが、父が今まで乗って来た愛車はすべて1500㏄クラス。『排気量が大きくなると税金が高くなるけん買わん!』と言っていましたが、本当は我が家の大蔵省だった母が許してくれなかったのだと思いますけどね(笑)」
そして、そんな父親のもとで育ったしもちゃんさんは、中学、高校生と順調に(!?)クルマ大好き少年として成長を続け、当時人気となっていたターボエンジンや、そのエンジンをチューニングしたスポーツカーに憧れていたという。
「AE86にHKSのターボキットを装着してみたいと、毎日クルマの妄想をしまくっていたんです。しかし、雑誌を読み漁っているとマイナス要素も目に入ってくるんですよ。例えば『ブーストの上げすぎでエンジンがブローした』みたいな。そんな記事を見ているうちに、エンジンをいじりすぎると壊れるかもしれん…と思うようなり、妄想するだけでもエンジンチューンすることを警戒しちゃう性分になっていました(笑)」
19歳で自動車免許を取得すると、大学卒業時に初めての愛車としてEG9型のシビックフェリオを購入。同時にドレスアップ雑誌を愛読するようになり、その影響でユーロスタイルのカスタマイズにハマっていく。そして、この頃からドレスアップ雑誌主催の撮影会などにも参加するようになったそうだ。
「初めてのクルマはプリメーラと悩みましたが、ホンダのVTECエンジンに魅了され、シビックフェリオのマニュアル車に決めました。タイヤとホイールを自分好みの社外品に交換し、高価なレカロシートも背伸びしてフロント2脚交換していましたよ」
1997年、26歳の時に結婚。これを機にシビックフェリオを手放し、当時流行だったステーションワゴンを購入することに。
「ドレスアップベース車両として、絶大な人気だったのがホンダ・アコードワゴンだったんですが、人気車ゆえにライバルも多く、他人とかぶらないためにマイナーだったホンダ・オルティアを選びました。車両価格がアコードより安かったのも大きな理由でしたね」
シビックフェリオと同じく、当時流行っていたユーロスタイルを目指し、オルティアでのドレスアップに励んだ。シビックフェリオの時から愛用していたレカロLS(フロント2脚)もオルティアに引き継ぎ、高級感のあるシンプルなユーロスタイルに仕上げていたとか。その甲斐あってか、愛車が雑誌に掲載されることもあり、ドレスアップの沼にどっぷりとハマっていく。
「クルマの印象が左右されるアルミホイールには特にこだわり、友人から譲ってもらったテクノキャストのクルーバーというホイールを装着していました。17×7Jというサイズでしたが、スポークがリムいっぱいまで伸びているせいか、17インチの割には口径が大きく見えるのでお気に入りでしたね」
オルティアのカスタマイズがライフワークとなり、ユーロスタイルにドレスアップしたクルマが集まるミーティングやコンテストなど、数々のイベントへ積極的に参加するようになった。
「ミーティングなどのイベントに行くことで、様々なドレスアップカーを見ることができました。そして何よりも、長崎以外の色々な地域のオーナーさんと交流ができ、ここで培った人脈は生涯かけがえのない宝物になりました」
子供の誕生もあり、オルティアは6年ほどで手放し、その後ダイハツ・ミラに乗り換えてしまったが、オルティア時代に出会ったクルマ仲間とは現在でも繋がっているという。
そして、そんなしもちゃんのカーライフを陰で支えてくれていたのが、お父様の愛車だったという。
「父はいつも自分に『クルマが必要なら、いつでも俺のクルマを使ってよかぞ』と言ってくれていました。というのも、父は仕事へは50ccのカブで通勤していたので、クルマに乗るのは休日のみ。実質、カリーナはお言葉に甘えて自分がほとんど乗っていましたね(笑)」
そして、お父様が70歳を迎えた2011年。『人生で最後のクルマ』としてカリーナから買い換えたのがトヨタ・アリオン(NZT260)だった。
「定年後の父はほとんどクルマに乗っていませんでしたから、必要だったというわけではないのですが、父は所有することで満足感を得るタイプ。例えば、ブルーレイレコーダーも使わないのに買っていましたね。クルマも同様、手元に持っておきたかったんだと思います」
2017年に転職し、通勤でクルマが必要になったしもちゃんさんにとって、お父様のアリオンはまさに渡りに船で「カリーナ同様に我が物のように使わせてもらっています」とのこと。現在も“父親の愛車”ではあるものの、8〜9割はしもちゃんさんが乗っている状態だという。
もしかすると、お父様がクルマを買い替えるのは『しもちゃんさんが乗るから』ということも大きな理由のひとつになっていたのかもしれない。
そんなアリオンだが、よく見てみるとボディから内装まで、ピカピカに手入れされていることに気がつく。「父はキレイ好きだったので、小さい頃からいつも愛車を洗車してキレイにしていたのを覚えています」
そんなお父様のDNAを受け継いだしもちゃんさんも洗車&掃除が大好きで、汚れが気になったら真冬でも洗車してしまうほど。フロアマットも泥汚れがなく、内外装ともに新車のような美しい状態には感心するばかりだ。
そして、見た目はもちろん、定期点検は半年おき、エンジンオイルは3ヵ月ごとに交換しているという。
「自分も父も、過去の愛車を含めて定期点検やオイル交換は欠かさず行なっていました。特に父は走行距離よりも時期を優先し、点検やオイル交換を依頼していましたね。アリオンは新車から乗り続けて現在の走行距離は17万8000kmですが絶好調で走ってくれています。乗り心地も良くて『さすがはトヨタ車』って感じです」
「『いつでも俺のクルマを使ってよかぞ~』と言ってくれていた父のおかげで、いつでもクルマに不自由することがなかったことには感謝ですね。このアリオンは壊れるまで乗り続けていきたいです」
お父様の『さり気ない愛情』が詰まったアリオンは、しもちゃんさんの欠かせない愛車として、これからも活躍してくれるに違いない。
(文: 櫛橋哲子 / 撮影: 西野キヨシ)
- 許可を得て取材を行っています
- 取材場所:稲佐山公園(長崎県長崎市大浜町)
[GAZOO編集部]
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