『いつかはクラウンワゴン』を有言実行! 何台も乗り継ぐその魅力とは!?
ステーションワゴンの語源は幌馬車の時代まで遡り、駅(ステーション)から人や荷物を運ぶための荷車(ワゴン)と言われている。そのため動力が馬から内燃機関へと移り変わる1900年代初頭は、荷物を運搬することを主軸にしたトラックを改装したモデルが主流となり、決してハイグレードな乗り物とは言い難かった。
しかし、クルマの進化に合わせてステーションワゴンも大きく進化する。特に日本国内では、セダンの派生車種として実用性と快適性を高めたモデルが多数登場。さらに1990年代には空前のステーションワゴンブームが到来し、既存モデルのブラッシュアップに留まらず、専用モデルとして多くのステーションワゴンが誕生した。
そんな日本のステーションワゴンの中で、特に歴史が長く現在も多くのファンによって愛されるのがクラウン。この2006年式トヨタ・クラウンエステート 2.5アスリート(JZS171W)のオーナー『ちび太郎』さんもまたクラウンワゴンを愛し続けるひとりなのである。
1999年にデビューした17系クラウン。そのステーションワゴンとして新規開発されたのがクラウンエステートだ。モデルチェンジに合わせ、その名をクラウンワゴンからクラウンエステートに変更し、市場でのイメージを高級路線に刷新しているも特徴のひとつと言えるだろう。
というのも、これ以前に販売されていたクラウンのステーションワゴンは長らくモデルチェンジが行なわれておらず、1987年にリリースされた13系を改良して販売を続けていた。クラウンでありながら商用バンと共通の設計によって、働くクルマの印象が強かった従来のステーションワゴンを、12年の時を経て洗練されたモデルへと脱却を図ったというわけだ。
現在、そんなクラウンエステートオーナーへとたどり着いたちび太郎さん。そのキッカケは中学生時代に見たクラウンワゴンに憧れたことだったという。
「ステーションワゴンに興味を持ったのは、中学生の頃、親戚のブルーバードワゴンでスキーにつれていってもらったことがはじまりです。荷物も積めるし、みんなでワイワイしながらスキー場まで行ったのが楽しくて、ワゴンって素晴らしい! と思ったのがキッカケですね。そんな時に雑誌で見た13系クラウンワゴンがカッコ良く見えて、いつかはこのクラウンワゴンでスキーに行きたいと思ったんですよ」
人と荷物を一緒に運ぶという、ステーションワゴン本来の使い方による楽しい思い出は、多感な時期のちび太郎さんをワゴンに熱中させるには十分過ぎたというわけだ。
中学生時代からクラウンワゴンに対する熱が高まっていたが、免許を取得して初めてステアリングを握ったのは父から譲り受けたセダンの日産・セドリック (Y31)。このセドリックではグレード違いのバンパーに交換したりとカスタマイズを楽しんだ後、次に手に入れたのもおなじくセダンの日産・グロリア (Y31)だったという。
「クラウンワゴンが好きなのは変わらなかったのですが、意外とセド・グロセダンの角ばった形が気に入っちゃいまして。気づいたら2台乗り継いでいたんですよ。でもやっぱりクラウンワゴンは最も乗りたいクルマだったので、次はクラウンワゴンと決めてグロリアを手放しました」
人生3台目の愛車として、満を持して手に入れたのは1JZエンジンを搭載したJZS130GのフロアATモデル。このクルマを17万kmほど乗ったあと、次に乗り換えたのが同じ1JZを搭載するベンチシート&コラムシフト仕様のJZS130G。こちらも18万kmほど乗り倒した後に、迎えたのがJZS171Wのクラウンエステート。とは言っても、現在の車体ではなく、以前にもエステートに乗っていたというのだ。
「1JZの耐久性はこれまでのクラウンワゴン/エステートでも経験していたので、長距離ドライブが多い自分には最適なエンジンだと思っています。以前乗っていたエステートはターボエンジンを搭載したアスリートVだったので、燃費の悪さに耐えきれずに手放してしまいました。でもこのエステートはNAエンジンなので、燃費が良いですね。これも長く乗り続けている理由のひとつかもしれません」
これまでの車歴の中でクラウンワゴンを2台、クラウンエステートを2台乗り継いでいるだけに、愛車選びにはこだわりもある。
そのひとつが『サンルーフ付き』であること…だったのだが、経年によって樹脂パーツが割れてしまっている時現状では『サンルーフがなかった方が…』と、心が揺らいでしまっているのだとか。
ほかにも、ノーマルが持つ上質な高級感を追求することもポイント。そのため購入時にはエステートが5台並んでいる中古車店で、最もコンディションの良いものを選び、なおかつフルノーマルに戻して納車してもらったという。
「お店に並んでいた時はシャコタンで18インチのアルミホイールが装着されていたんですよ。でもその形は自分の求めるエステートではなかったので、ノーマル戻しを条件に購入しました。現在のアルミもノーマルではないのですが、30セルシオの純正ですので、過剰なドレスアップではなく、上位互換として選択しています。これくらいのアレンジならエステートの雰囲気を壊すことなく、ノーマルの延長線上で質感を高めてられるのかなと考えていますね」
ちび太郎さんにとってスタイリングもパッケージングも、さらに燃費をはじめとした実用性もすべてに満足できているというクラウンエステート。さらに、現在は移動のための相棒としてだけでなく趣味の写真撮影の場でも活躍しているという。
「ステーションワゴンなので、嵩張ってしまいがちな写真機材なんかも、気兼ねなく載せられるのはメリットですね。趣味で鉄道写真を撮ったりするので、ゆったりと移動できるエステートは、いろいろな地方に足を運ぶのも楽になりました。さらに、今のスタイリングが理想の形ということもあって、被写体としても楽しめるようになりましたね」
こちらの写真はちび太郎さんが撮影したエステートと富士山。逆さ富士をうまく取り入れた構図は、渾身の1枚とのことだ。このように富士山とエステートの絡みは、精進湖に幾度となく通い、これまで200枚以上撮影しているというから、被写体としての満足度も高いことは言うまでもないだろう。
趣味の写真撮影はもちろん仕事でも使用するため、1ヶ月の走行距離は3000kmを超えることも多いそうで、そのため現在の走行距離は22万kmをオーバーしているが、全く壊れる予兆はみられないという。
「1JZを搭載した17系クラウンって、パトカーなどでも活躍していたじゃないですか。だから耐久性は高いのは間違いないです。一時期は22万kmを目指していたんですが、あまりにも不安を感じないのでまだまだ活躍してくれるはずです」
リヤウインドウには所属しているクラウンエステートオーナーズクラブのステッカーが貼られる。しかし山梨県ではエステートは少数派のようで、現在はもっと多くのエステートオーナーと繋がり、情報交換をしたいと思っているという。また、山梨近郊のクルマ好きが集まる『ガレージカフェ・エン』にも通い、クルマ仲間の輪を広げているとのことなので「お近くのエステートオーナーさんはぜひアプローチして欲しい」とのことだ。
愛車に関するアイテムの収集も、多くのクルマ好きに共通する楽しみと言える。とは言っても、エステートに限ってしまうとその数は激減するため、関連するカタログやスケールモデル、過去の愛車に関するものなど、収集物の幅を広げている。結果として現在、カタログは300冊、スケールモデルは200台以上という膨大なコレクションを保有しているのだそうだ。
「実は、以前のエステートを手放した時に、一度Y31セダンに戻っています。ですから車歴で言えばY31セダンが3台となり、所有台数で言うと最多になってしまいます。クラウンワゴンが好きでクルマ好きに成長したはずなのですが、その点では予想外というか…。ですから、このエステートに何かが起こって手放さなければならなくなったら、次もエステートを探して乗ろうと思っていますよ。多分、これ以上に自分の感性とライフスタイルに合ったクルマは存在しませんから」
クルマ選びに於ける最重要ポイントは、自分が満足できるかどうか。その点で考えれば、正解は人の数だけ存在していると言えるだろう。
子供の頃に憧れ、そのモデルを経験したうえで、さらに進化したモデル『クラウンエステート』へと辿り着いた。それが、ちび太郎さんにとって運命のクルマであったようだ。
『これ以上に自分の感性とライフスタイルに合ったクルマはない』という言葉こそが、その証である。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 中村レオ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:山梨県庁 噴水広場(山梨県甲府市丸の内1丁目6-1)
[GAZOO編集部]
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