子供が生まれる直前に購入したランドクルーザープラドで、家族の思い出を塗り重ねていく幸せ

  • GAZOO愛車取材会の会場である国営木曽三川公園 アクアワールド水郷パークセンターで取材したトヨタ・ランドクルーザープラド(KZJ78W型)

    トヨタ・ランドクルーザープラド(KZJ78W型)


底力のあるエンジン音を奏で、自分の背丈ほどあるのではないかというくらい大きなタイヤを履いてガタガタ体を震わせながら走るクロカン四駆は、当時まだ小さかった『KKパパ』さんの男心をくすぐったという。どこがどう良いではなく「これこそが、カッコ良いに決まっている…!」と感覚的に、全身でビリビリ感じたということだ。

「気付けば、幼少期から四駆を目で追うようになっていました。洋画を観れば、向こうの警官が乗っているレンジローバーに目が行き、HIPHOPのMVでは、登場したリンカーンのナビゲーターに見入ってしまうなど、ゴツゴツした無骨なフォルムと、やっぱり…大きいタイヤですかね。とにかく、大きなタイヤに惹かれました」

だからこそ、納車前にリフトアップを依頼し、16インチのオールテレーンタイヤに履き替えたのだと、圧搾した元気を底に湛えるような顔つきをして説明してくれた。
そんなKKパパさんの元に、ランドクルーザープラド(KZJ78W型)が納車されたのは5年前。結婚して家庭を持ったタイミングだったと話してくれた。

「それまでは、必要な時に親のクルマを借りるという感じだったんですけど、子供が生まれるとなると、やっぱりもう1台あった方が良いよなぁ〜と、夫婦で話し合ったんです」

そこで候補に上がったのが、今後家族が増えた時も乗れる3列シートで、好みである角張った形をしている78系のプラドだったそうだ。

このモデルは、マイナーチェンジで新採用された3Lディーゼルエンジンを搭載。サスペンションやブレーキは従来に比べ改良され、パートタイム4WD方式を採用したことで、走行安定性や制動性能なども向上している。4ドアグレードはサードシートを備えた8名定員、2ドアグレードは5名定員となるが、KKパパさんの個体は前者となる。

「もちろん、家族のためというのはありましたが…『クロカン四駆に乗る』という、幼い頃からの夢を叶えたかったというのが一番の理由でした」

KKパパさんにお話を伺っていると、まるでナポレオンかのような、戦術家的な一面が見えてきた。それには無駄がなく、そして着実に78プラドを愛車にするために歩を進めていたからだ。

まずはその一手目として、仙台にある専門ショップに奥様を誘ったそうだ。奥様は、牛タンや、松島などの観光スポットに行けるとワクワクしていたそうだが、KKパパさんは、夢にまで見たクロカン四駆のハンドルを初めて握ることができるとドキドキしていたという。2人の目的はバラバラだったが『仙台を楽しむという目的は一致していた』と、腕を組んだ。やはり策士だ…。

そして迎えた決戦の朝。専門ショップの最寄り駅まで電車で行き、夢にまで見た78プラドのハンドルを握ったのだ。『雰囲気を確かめるために、走ってきてください』という店員さんのGOサインと共に、近くにあった大きい公園のまわりを何周もグルグル回ったと、少年の顔つきで教えてくれる。周回数が増えるたびに、血は沸き立つほどに高揚し、何よりも楽しかったと目をキラキラさせていた。

「この年代のディーゼル車に乗るのは初めてだったのですが、初速の重さやブルブルという揺れがハンドルから直に伝わってくる感じ。そして、上下の車体の揺れがトラックみたいで、今まで出会ったことのないような、すごく大きな乗り物を動かしているんだという感覚、そしてワクワク感がありました」

良い意味で想定外だったのは、運転のしやすさだったそうだ。アイポイントが高く、運転席に座れば四隅が見えるため車両感覚が掴みやすく、意外にも奥様がその乗り心地も気に入ってくれたのが嬉しい誤算だったとのこと。
試乗後、1週間後に走行距離12万kmでまずまずの個体がショップに入ってくることを告げられ、ジックリ検討したのちに購入を決意したのだという。

「最後に背中を押してくれたのは、一緒に試乗した妻でした。『どうせ買うんなら、欲しいクルマを買った方が良いんじゃない?』と言ってくれたんです。今でも思いますが、恥ずかしながら、僕ひとりじゃずっと決められなくてウジウジ言っていたと思います」

そんな頼もしい奥様であったが、納車前に自分の理想とする外観に仕上げるために予算を顧みずカスタムに注力しすぎてしまったことで、苦言も呈されてしまったとのこと。
なんでも、SNSで78プラドオーナーのカスタムを何台も見て『アウトドアと街乗りのどちらでも映える2WAY仕様』をコンセプトにしようと思い描き、それを実行してしまったというのだ。

まずは、内装を合皮の革張りレザー調にして、足まわりもカスタマイズ。ボディカラーは北米仕様のFJクルーザーの純正色である“サンドストーム”を選び、ルーフ部を白にした2トーン仕様にオールペンしたため、結構な費用が掛かってしまったと苦笑いしていた。

納車まで10ヵ月ほど時間を要したそうだが、その間もショップから進捗状況が写真付きでこまめに届いていたため、今日はどこまで進んだかな? と、現地に行かずともその過程を楽しめたのが救いだったという。もちろん、写真が届くたびに“納車はまだか…”と、キリンのように首が長くなっていったそうだが。

「迎えた納車日は、息子が生まれる前の週でした。ですから正直なところ、クルマがどうこうではなくって…。とりあえず、意味もなく家の周りをぐるぐる走っていた記憶があります(笑)。そんな感じだったけど、このクルマにチャイルドシートを積んで、生まれたばかりの息子を迎えに行けたことは、生涯絶対に忘れられない思い出です。そして、後から思えば、息子は仙台に試乗に行った時からお腹にいたわけだから、そりゃあ78プラド好きになるわけですよね」と、嬉しそうな顔をしていた。

息子さんが78プラドを好きなのは明白で、撮影のためにボンネットを開けるとすぐに駆け寄って来てフロントバンパーによじ登り、エンジンルームをじっと見つめてKKパパさん以上に嬉しそうな顔をしていたからだ。車内を撮影する時は、自分の胸くらいあるシートによじ登り、自慢気な顔をして彼なりに教えてくれるのだ。そんな息子さんとKKパパさんのお決まりの週末の過ごし方は、洗車だそうだ。

「実は、ショップの人には“汚れが目立つから手入れが大変だよ〜”と言われたのですが、落ち着いたクラシックな雰囲気を出したくて、マット(艶消し)塗装をしているんです。正直なところ、維持できるか不安でしたが、息子という思いがけない強力な助っ人ができたからとても助かっています」

現状、ファミリーカーとして使っている78プラドは、本感的なオフロードを1度も走ったことがないため、その実力を持て余しているとKKパパさんは言う。出会ってもうすぐ6年目に突入するそうだが、息子さんが生まれ、娘さんが生まれ、仕事や子育てに奮闘中の今は、スーパーに買い物や、公園に行くために使うことが主だという。

「休日は家族でキャンプに行ったり、サーフィンに行ったりするんですが、78プラドも楽しんでくれているんじゃないかな? と思うんですよ。みんなで色々な場所に行って、幸せな時間を過ごしてきました。それに比例するように、思い出は蓄積されていって、僕たち家族はますますこのクルマが好きになりました。だからこそ、この先もメンテナンスをしながら、長く大事に乗っていきたいと思っています。このクルマにして良かったなと、心から思っているんです」

ちなみに、後日、電話取材をしたところ、その日は息子さんのランドセルの展示会へとランクルで行ってきたそうだ。赤ちゃんだった息子さんがランドセルを背負うようになったのかと思うと「胸の奥がジンとした」と嬉しそうな、感慨深い声で話してくれた。

KKパパさん一家のカーライフを見ていると、クルマはどこを走るかじゃない、どんなスペックを持ち合わせているかじゃないと感じる。それよりも『どんな時を共有することができるのか』が大切なんだな、と痛感させていただいた。

今後もこういった家族のイベントがある毎に、78プラドで出掛け、思い出はどんどんと蓄積されていくのだ。なんと素晴らしいカーライフじゃないか。

(文:矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:国営木曽三川公園 アクアワールド水郷パークセンター(岐阜県海津市海津町福江566)

[GAZOO編集部]