「どれだけ走っても疲れない」30年以上所有し続け全国を巡るロングドライブも共にした相棒 トヨタ・ソアラ
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トヨタ・ソアラ(MZ20型)
「息子が社会人になったばかりだったかな? 初めての愛車に『ソアラの3.0GTに乗りたい』って言うんで、探していたら、ちょうどこのクルマが出てきたんだよ」
平成元年にこの愛車を迎え入れた理由について、そう振り返ってくれた『ソアラ555』さん。
1981年にトヨタが新ジャンルと言える高級GTカーとしてデビューさせたソアラ。スタイリッシュなクーペボディにゴージャスなインテリアを組み合わせ、高性能なエンジンを搭載した初代ソアラは大人気を博することとなり、一躍、幅広い年齢層の憧れのクルマとなった。
そして、1986年には2代目へとフルモデルチェンジ。大ヒット作となった初代の意匠を踏襲しながらも、ゴージャスさがより高められただけでなく、走行性能も飛躍的に向上させた内容となっていた。
エンジンは初代の5M-G(2.8リッター)や6M-G(3リッター)の発展型ながら、吸排気バルブを4バルブ化すると共に、インタークーラーターボを組み合わせた7M-GTを搭載。当時の国産車としては最高値となる230psを誇った。
またそのパワーを受け止めるべく、サスペンションに4輪ダブルウィッシュボーンを採用するなど、その走行性能は他の国産車を圧倒。これにより、豪華なツアラーを求めるクルマ好きだけではなく、高性能車を求めるクルマ好きからの注目も寄せたモデルへと昇華したのである。
そんな2代目ソアラ(MZ20型)を、息子さんの初めての愛車として手に入れたソアラ555さん。
当時は、まさにバブル景気真っ盛りの頃。親が新卒の息子に高級車を買い与えるという行為は、買ってもらう子供が望むか望まないかはともかく、ままあった話。
ソアラ555さんも『息子が乗りたいというなら…』とソアラの購入に至ったわけだ。
購入したのは1989年とのことで、まだ2代目ソアラが新車で買えるタイミングだったが、選んだのは新車ではなく中古車だったという。
「このソアラを女性が新車で買ったらしいんだけど、すぐに持て余したみたいで、納車されて半年で手放したらしい。ちょうど息子が欲しいと言っていたソアラの3.0GTだったので、僕のところに、ディーラーさんが『買わないか』と連絡をくれたというワケね」
ちなみに、中古車を指定で探していたのは『やっぱり初めてのクルマだから、新車なんかもったいない』ということだったそうだ。
しかし手に入ったのは、中古車とはいえたったの半年落ち。しかも人気車種のソアラともなれば、購入価格はそれほど大きな違いはなかったであろうと容易に想像できる。
いずれにしても息子さんにとってはラッキー極まりない“良い出モノ”であったことに違いはない。
そうして、息子さんの希望で購入したソアラ3.0GTだが、ソアラ555さんご自身も魅力を感じていたようで「息子が何年か乗った後、僕が乗ることにしたんだよ」と、当時のいきさつを語ってくださった。
それまでのソアラ555さんの愛車ライフはというと、新しいクルマに数年間乗って、グレードアップした車種に乗り換えるというパターンだったそうだが「ソアラだけは、ずっと持ち続けようって思った」と振り返る。
ソアラ555さんに、そのように思わせたソアラの魅力とは、どんな部分だったのかを伺った。
「まずエンジン音が気に入ったね。例えば高速で、追い越しをする時にアクセルを踏み込んだ時とか、なかなか魅力的な音を奏でてくれるんだ。僕は安全運転なんで、ターボが効いた時の音は一瞬なんだけど、それよりもアクセルを踏んだ瞬間からグッと加速して、ターボが掛かり始めたぐらいまでの音がイイんだよ」
そんなエンジン音と共に、ソアラ555さんを魅了しているのが乗り心地だ。
「遠乗りしても本当に疲れないんだ。この乗り心地の良さもソアラの魅力だね」と絶賛。
ソアラ3.0GTには、当時のトヨタ自慢の可変ダンパーである“TEMS”が装備されており、ソフト/ミディアム/ハードをスイッチ操作だけで変更可能。さらには、「高速道路で100km/hぐらいになると、自動でハードに切り替わるんだ」とおっしゃるように、走行条件によっては自動でダンパーの強さを調整してくれるのだ。
そんなソアラの乗り味を存分に味わいたいと、会社をリタイヤされた2012年頃から、ソアラと共に長距離ツーリングにも出かけるようになったそうだ。
「これまでに、北は北海道の宗谷岬、南は鹿児島の指宿まで、年に1回のペースでロングツーリングしてきました」と、訪れた先や日程をまとめた表を見せてくれた。
2012年の南紀一周にはじまり、山陰、北陸、東北、九州、佐渡、北海道、中国、瀬戸内などを3〜15日の日程で、これまでに16回、ほぼ年に1回のペースで回っていらっしゃるようだ。
そんなロングツーリングに出る前には、まずはルートや宿泊先をしっかりと決めるそうだ。「高速代やガソリン代、宿泊費などの費用を計算して、それをかみさんに見せて、許可をもらってから旅に出てるからね(笑)」
北海道や九州を訪れたルートでは、全日程の走行距離が軽く2000kmを超えてくる。「2000km以上走っても、このクルマはまったく疲れないんだよ。本当に乗り心地がいいんだ」
ちなみに16回のロングツーリングは、ソアラ555さん単独の時もあれば、奥様と二人の時もあるという。
「かみさんは、日々いろいろ忙しくしてるから、いっしょに行ける時だけ、二人で行くんだ」
助手席での旅を楽しむという奥様に話を伺うと「このクルマは、遠くまで走っても、ほんと疲れなくて、快適よ」と、ソアラ555さん同様にその乗り心地の良さをお気に召していらっしゃる。
出かける際には、お茶を入れたタンブラーを持参されるそうで「ここ(グローブボックスのフタの部分がテーブルになる)にコップを置いて、お茶を飲んで休憩するのよ」とお話し下さった。今回の取材会にもタンブラーを持参されていて、撮影の時間までお待ち頂いている間、お二人でお茶を飲んで過ごされていた。
しかし、そんなソアラを奥様は「維持費が高くて、それなのにほとんど乗らないからもったいないのよ」ともおっしゃっている。ソアラ555さんによると「乗るのは年1回のツーリングの時だけ。普段は乗らないんだ」と、アッサリとおっしゃるのだから奥様の気持ちもわからなくもない。
「退職する前は、ロングツーリングにも使ってなかったから、一時ナンバーを外していた時期もあった」とのことだが、退職して時間が取れるようになってからは、ソアラでロングツーリングをしたくなり、再び車検を通して公道復帰させたそうだ。
維持費には当然ながら車検費用も関わってくるわけだが「ここ最近はやらなくなっちゃったけど、以前は自分で陸運局に行って通してたね」という。これは維持費を節約するためではなく、ソアラのコンディションを長く保つためのようだ。
「車検をクルマ屋さんに出すようになってからも、細かくチェックするから、クルマ屋さんが可哀想なのよ」と奥様は言うが、詳しくソアラ555さんにお話を伺うと「車検に出す前には、今でも自分で点検してから出しているから、整備工場の整備内容に疑問があれば、その内容を聞いているだけなんだけどね(笑)」というお答えが返ってきた。
整備工場に任せきりにせず、しっかり愛車のコンディションを把握しているからこそできるチェックと言えよう。
そんなソアラ555さんのソアラに関する知識の基は、長く乗り続けるために必要だろうと、四半世紀前に手に入れたサービスマニュアル。「本当に、親切に細かく書いてあるんだよ」
しっかりと活用していることを表しているのが、前小口。使い込まれた辞書のように、ページをめくる時に付く汚れが小口についているのである。「ついこの間も、これを見ながら、動かなくなったパワーウインドウのスイッチを直したんだ」
不具合の原因はパワーウインドウのマスタースイッチだと、ご自身で突き止めたソアラ555さん。しかし、新品部品の供給はすでに終了しており、ディーラーでも修理できないと言われたそう。ならば自分で直してみようと、スイッチを分解したとおっしゃった。不動の原因はスイッチの接点不良。接点を磨いたことで、パワーウインドウは見事に動くようになったそうだ。
ちなみにソアラとのロングツーリングは「もう歳も歳なんで、それを自覚しないとね」と一昨年の2023年で一旦終了したというが、高級ツアラーであるソアラならではの乗り味が大好きで、手放す気はないというソアラ555さん。
今後はご自身の整備によって、お気に入りの愛車を良い状態に保ち続けていくという楽しみ方へとシフトしてくのかもしれない。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:国営木曽三川公園 アクアワールド水郷パークセンター(岐阜県海津市海津町福江566)
[GAZOO編集部]
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