生まれる前から一緒だったカローラGT。乗るたびに増していく魅力を満喫中

  • GAZOO愛車取材会の会場である三角西港で取材したトヨタ・カローラGT(AE101)

    トヨタ・カローラGT(AE101)



お父様から譲り受けた トヨタカローラGT(AE101)とは、お母様のお腹の中にいる頃からの付き合いになるという。チャイルドシート、ジュニアシートを経てようやく後部座席に直接座ることができるようになり、高校生になるとグッと体が大きくなってきたため助手席へ移動。そして、現在は…?

「ついに、運転席に辿り着くことが出来ました。いやぁ、楽しいですよ。ものすごく楽しい!」

そう噛み締めるように言いながらハンドルを握る『マツゲン』さんは、このクルマを愛車として迎え入れてから13年が経ったと満足気な表情をした。なぜ、お父様から引き継ごうと思ったのかを尋ねると、4A-Gというエンジンに魅せられたからだという。
そう話すマツゲンさんがエンジンに興味を持つようになったのは、母の実家にあった農機具の動力用発動機(エンジン)を見たのが始まりだという。

  • (写真提供:ご本人さま)

「母の実家が農家なんですけど、とある日に遊びに行くと、収穫したお米を精米機で精米していたところだったんです。じーっと観察していると、発動機がトットットッという音に合わせて、プーリーと平ベルトが回転しているのが見えましてね。“ここに燃料を入れて燃やし、それを回転の力に変え、燃料が尽きるまで動かし続けているんだ”などと考えてながら、何故だかものすごく感動したんです。それと同時に、いつかは自分もこんな風に動いてみたいと憧れました。ですから、幼稚園の頃の私の夢は『大人になったら、発動機になりたいです』だったんですよ(笑)」

唐突ではあるが、前出の話の流れから、マツゲンさん“ならでは”のカスタムのひとつを紹介しておこう。それは、カムシャフトと直結される『カムプーリー』部のカバーをクリアなものに交換しているところだ。これによって、インテーク側とエキゾースト側のプーリーが目視でき、それがタイミングベルトを介して回転している様子をライブで見られるようしているのだ。

エンジンの回転力はクランクプーリーから取り出され、タイミングベルトを介してカムプーリーを回す。カムプーリーが回ればそれに直結されているカムシャフトが回転し、エンジンの基本動作である、吸入、圧縮、燃焼/膨張、排気という工程に応じてバルブが開閉される。そんな動作を想像しながら、暇を見つけては眺めてしまうのだという。

整備士の資格を取るために3級自動車整備士が取得できる高等学校に通っていた際、CGで分かりやすく解説された資料を見たことはあったそうだが、リアルなプーリーの動きは迫力が全然違うと感じ、また普段見えない箇所が見えるというところにもロマンを感じるそうだ。

さて、話を戻そう。農機具の発動機が好きだったマツゲンさんが、クルマに興味を持つようになったのは、フランスの映画『TAXi』を観たのがキッカケだそうだ。大衆車であるプジョー406が、ボタンひとつでアッという間にチューニングカーに変身するというのがカッコ良く、大人になったら絶対に乗るぞ! という夢ができてしまった程だという。
そんな思いもあって、気付けばクルマのエンジンについて調べるようになり、いつしか専門的に学びたいと思うようになっていったという。

「入学すると、クラスで頭文字Dがすごく流行っていて、AE86トレノだレビンだと、みんなでそんな話していました。その中で、4A-Gというエンジンが凄いらしいという話になったんです。どんなエンジンか気になったので、トヨタカローラに勤めている父に聞いてみると『俺が乗っているのが4A-Gだよ!』と答えるわけですよ。クラスで話題のエンジンを載せたクルマに、まさか親父が乗っているなんて! と運命を感じ、カローラGTを譲って欲しいと申し出ました」

お腹の中にいる頃からの付き合いだったため、さほど特別なエンジンを載せたクルマだとは感じていなかったそうだが、思い起こせば“味”のある走りをしていたと、少し申し訳なさそうな顔をしてカローラGTを見つめた。

例えば、回転数にして3000〜5000回転くらいでエンジンの奏でる音色が一気に甲高くなり、力強くも滑らかに加速する様が、まるで生き物が走っているかのような感じだったこと。また、その際の『フォーンッ』という音は『僕、今すごく頑張ってます!』と訴えかけているようで、後部座席に座っている頃から愛らしいと感じていた部分だったそうだ。

「母親のお腹の中にいる時に聞いた音を、大人になって好きになるという話を聞いたことがあります。もしかしたら、私の場合はそれかもしれません。不思議なことに、この音に耳を傾けていると安心するような、心が落ち着くような、好奇心をくすぐられるような…とにかく、言葉では表現できない幸せな気持ちになるんです」

こうして数々のお話を伺っていると、このカローラGTに乗るに充分すぎる理由はいくつもあるのに、マツゲンさんをさらに惹きつけたのは、このクルマに搭載されている4A-Gの構造だったそうだ。

気筒あたり吸気3、排気2という5バルブを持つ、ツインカム20バルブ仕様の4A-Gは、運転状況に応じて吸気側のバルブタイミングを2段階に制御し、幅広い回転域でドライバビリティを向上させる可変バルブタイミングシステムが搭載されている。こういった機構が搭載さていると分かった時は胸が熱くなったそうだ。

さらには、吸気効率を高める4連スロットルの採用によって、ハイレスポンスとハイパワーまでも実現しているといったメカニズムを知ると『堪らなく感激したんです』と、前のめりに熱弁してくれた。

なにより、こういった仕組みを授業で習い、知っていくことで、なぜ母の乗るダイハツ・ミラと、父の乗るカローラGTのエンジン音や加速が違うのかも分かるようになり、知的好奇心をくすぐられたという。こうして“そろそろ廃車にしようか?”と一家で囁かれていたカローラGTは、気持ちも新たにマツゲンさんと一緒に走ることになったのである。

「この取材会のアンケート用紙に、『好きな外観は?』という質問があったでしょう? あれ、“ナンバープレートの封印”にします。平成3年に父が購入してから33年間、1度もナンバーを切らしたことがなく、当時のままなのでサイズが少し小さいんです。今どきのクルマと並べた時に、このちょっと小さな封印を見ると、この先に色々なことがあったとしても、どうしようもなくなるまでは絶対にナンバーを切らさないぞ! と思えるからです」

こういった熱い気持ちで愛車を迎え入れ、今から6年前となる春。新オーナーになった新たな試みとして、ジムカーナに挑戦することにしたそうだ。
ジムカーナに備えて、まずはサスペンションを車高調整式タイプに交換。そして車体の歪みを抑えるために、フロントにTRD製のタワーバーを入れているのもこだわりとのことだ。バルクヘッドとストラットタワーを繋げる純正タワーバーに対して、TRDのタワーバーは左右のストラットタワー同士も繋げるトライアングル形状だったことから選んだという。さらに、リヤにもウルトラレーシング製のタワーバーを入れてボディ剛性を高めているそうだ。

『外から見たら普通のファミリーカー』に見える所が良いところであり、これがカローラGTのコンセプトだとも言う。このクルマで『意外と走るんだな』と思わせたら大成功だと、ふふんと笑っていた。実際、ジムカーナ会場では『4A-Gですか!? すごく良い音ですね!』と言われたこともあるそうで、手応えを感じたそうだ。

「例えば、カローラGTのような見た目のクルマが、コーナーを見事に曲がっていったらチョット驚きますよね? そうやって、このクルマが走る姿を見て笑顔になってくれたら嬉しいんです。カッコ良く思われたいとかそういうのではなくて、カローラGTを少しでも好きになってくれたら、知ってもらえたらと思っているんです」

そんな走りを実現するために、LSDを入れてアンダーステアを出さずコーナーを走れるようにサスペンションセッティングも考えているそうだ。ミッションへの負担が大きいことは分かっていたが、ここは走りの方を優先して楽しみたかったとのことである。

「今はエンジンが『酷使しないで〜』と訴えてくるから、ジムカーナ走行はお休みしているんです。ピストンとシリンダーのクリアランスが広くなってきたのと、バルブステムシールがへたってきてオイルが頻繁に燃焼室に漏れるようになってきたので、添加剤で誤魔化し誤魔化ししているけど、完全に白煙を吐いてしまったら乗れなくなってしまいますから」

最近は、オルタネーターが急に発電しなくなったり、その他にもトラブルがちょこちょこ出てきたりするため、トランクルームには工具を積んでいる。が、それでもカローラGTに乗り続けるのはこの個体を愛しているから。このフレーム、この製造番号に一生乗り続けたいと強く思うからだそうだ。

エンジンをかける度に、毎回幸せな気持ちにさせてくれるカローラGTは、絶対に手放さないというマツゲンさん。自然と街に溶け込めるシックなビジュアルと最高の乗り味を、いつまでも大切にしながら楽しんでいくに違いない。

(文: 矢田部明子 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:三角西港(浦島屋、旧三角簡易裁判所ほか)(熊本県宇城市三角町三角浦)

[GAZOO編集部]

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