ファミリアアスティナ渋々選んだつもりで33年。今では愛おしい相棒との目標は地球100周400万km
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マツダ・ファミリアアスティナ
1989年に登場した7代目マツダ・ファミリアのラインアップの中で、リトラクタブルヘッドライトを備えた斬新なフォルムでひときわ目を惹く存在感を放っていたファミリアアスティナ(BG5P型)。
福岡県在住の『なにわのこぶ平さん(以下、こぶ平さん)』は、そんな独特の個性の持ち主を新車で購入以来、33年間に渡り毎日乗る実用車として所有し続けている。
「運転免許を取ってから、初めてのクルマはトヨタの二代目コルサの3ドア車。FFなのにエンジンは縦置きで搭載されているチョット変わったクルマでしたが、ミッションはマニュアルで、走りのキビキビ感も気に入っていました。ところが結婚後、妻の妊娠を機に使い勝手の良い4ドア車への乗り換えを余儀無くされました」
「私としてはこのまま3ドアでも何とかなるのでは? と思っていたんですが、家族をはじめ、各方面からの猛反発もあって(笑)4ドアへの買い替えが絶対条件になってしまいました。でも、私は(全高が)低いクルマが好きだったし、普通の4ドアセダンに乗ることだけは何としてでも避けたかったので、アレコレと知恵を絞った結果、目を付けたのがアスティナだったんです」
こうして4ドアという条件にはおとなしく従ったものの、ファミリアセダンに対して40mm低く抑えられた車高や、マニュアルミッションに加えて、子供の頃からの憧れだったリトラクタブルヘッドライトという大きな副産物まで手に入れるなど、クルマ好きとしての立場をかろうじて堅守することに成功したこぶ平さんであった。
ちなみにアスティナは、ドアこそ4枚備えているものの、リヤシートの座面サイズや足元の空間はセダンより狭く、スタイル重視のレイアウトが採用されていた。もちろん、こぶ平さんはこの点も把握した上での選択だったが、購入当初はこのカラクリがバレないか、ヒヤヒヤものだったと当時を振り返る。
「今となっては時効の話ですヨ(笑)。メーターもこっそりオプションのデジタルを注文していたし、リヤのラゲッジも深さの割に開口部の位置が高くて、重い荷物は出し入れが結構大変。ホント、身内にクルマに詳しい人間がいなくて良かったです。それでも、少々狭いとは言え4ドアは4ドア。子供達が小さかった頃は家族4人であちこちドライブにも出かけましたね。今は息子が熊本、娘は三重県とそれぞれ離れて暮らしているので、4人で乗ることはほぼ無くなりましたが」
このように、最初は半ば、消去法的に選んだはずのアスティナだったが、月日の経過と共に愛着を感じるようになったと語るこぶ平さん。二人の子供達は立派な大人となり、すでにファミリーカーとしての役割は終えているにも関わらず、現在も仕事からレジャーまでオールラウンドに活躍中だ。
コルサに乗っていた頃は、自分でキャブレターの調整も行なっていたというほど、メカには精通しているが、アスティナのメンテナンスはマツダのディーラーに依頼しているそう。
これまでタイミングベルトを3回交換した他、オイル交換も5000km、もしくは半年毎に行なうなど定期的な整備を心掛けている。それでも経年劣化の兆候は否めず、3年前には原因不明のトラブルが発生し、10ケ月もの間サービス工場に長期入院することに。
「あちこち疑わしい部分を調べても原因が分からず、このクルマ用の診断機も廃盤になっていたので大変でした。ある時、同じ症状の修理事例がネットに投稿されていたので問い合わせてみたんです。すると、その動画の投稿者はディーラーの関係者さんで、アスティナ用の診断機をお持ちでとの事でした。早速事情を話してチェックしてもらったところ、水温センサーの故障ということが判明。おかげですっかり元気になりました」
「投稿者さんはもちろん、こんな旧くて面倒なクルマを見捨てずに手を尽くしてくれたディーラー関係者さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。アスティナは特殊なキャラだけあって、今でもユーザーが作ったファンサイトがいくつかあるんです。年を追う毎に現存台数は減る一方だし、長く乗り続けて行く上でサイトの方々との情報交換を兼ねた交流を持つことは大切ですね」
ノーマルのカタチがお気に入りということで、外観上で手が加えられた箇所はほぼゼロに近いが、唯一明らかに異なるのが、もともと装着されていたエンブレムに代わってノーズ先端部に装着されたファイヤーバード(ポンティアック)のマークだ。
これは以前の愛車、コルサに取り付けられていたものだが、ただでさえマツダ車であることを表すものはリヤゲート右側の小さなステッカーのみという中、車種不明度がますます強調され、“どこのメーカーの何というクルマですか?”と聞かれることも少なくないとか。
「太めのクォーターピラーは視界が悪そうだけど、運転していて気になったことは無いし、リトラクタブルヘッドライトを備えたフロント周りは今見てもカッコイイと思います。この間、駐車場で隣にGR86が停められていましたが、ボンネットの高さはアスティナの方が低かったのにはビックリでした」
「衝突安全性や歩行者保護など、新型車に対する法基準は年々厳しくなる一方だし、こんなデザインのクルマは、この先出てくることは無いでしょうね。そうそう、先日スーパーの駐車場に停めていたら、子供たちから『ライトを開けて!』とせがまれました。自分もスーパーカーブームを経験した世代で気持ちは分かるので、ライトをオープンにしたら喜んでくれました(笑)」
その他、インテリアについてはステアリングとシフトレバーがナルディ製に変更されていることに加え、リヤのパーセルシェルフ上には昔懐かしいイルミネーション付きのパイオニア製リヤスピーカーを装着。こぶ平さんの出身地は大阪ということで、年に何度かは『コンバトラーV』や『ボルテスV』など、昭和のアニメソングをBGMに、奥様と一緒に里帰りを兼ねたロングツーリングを楽しんでいるそうだ。
「このクルマを維持していく上で大変な部分と言えば、他の旧車乗りの皆さんと同様、純正パーツの確保ですかね。例えばデジタルメーターですが、その照度はかなり落ちてきているけど補修用の部品は欠品しているので、いずれは丸ごとアナログメーターに交換することになるでしょうね」
「パーツ探しは確かに大変だけど、宝探しの気分で楽しむようにしているんです。そんな苦労は何とも思っていないし、この先もアスティナを手放すつもりはありませんね。走行距離はまだ30万2600km。年間1万キロと考えたらフツーでしょ? この時代のマツダ車はエンジンがとても丈夫で、今のところ特に調子が悪いところも無いので、とりあえず40万kmは余裕でしょう。最終的には地球100周(約400万km)くらい行きたいですネ!」
この取材が行われた2日前には56回目の誕生日を迎えたというこぶ平さん。お祝いに奥様が腕を振るって作ってくれた、ステーキとおでんの味は格別だったご様子だ。
現場でもボケとツッコミの絶妙なやり取り(もちろん、ツッコミ役は奥様)で和ませてくれた、とっても仲良しなお二人。
こぶ平さんが最終目標とする走行距離まで、あと370万km。このペースで行けば426歳のお誕生日には達成できる算段となる。アスティナ共々、いつまでもお幸せに!
(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三池炭鉱 万田坑(熊本県荒尾市原万田200-2)
[GAZOO編集部]
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