24年間愛され続ける初代・ミラジーノ ~家族の絆を紡ぐレトロなクルマの物語~
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ダイハツ・ミラジーノ(L700S型)
1999年から2009年まで、2代に渡って約9年間発売されていた“ミラジーノ”は、デビュー当初から、レトロで可愛いデザインと実用性の高さから人気を集めたモデルだ。特に初代モデル(L700S型)は、そのクラシカルな外観と、使い勝手の良いパッケージングで、四半世紀を経た今でも愛好者が多いのも特徴となる。
ここでご紹介する初代ミラジーノは、2001年の新車購入から現在まで、24年間大切に乗り続けられている1台だ。赤いボディに白のルーフキャリアやサイドライン、センターキャップが鏡面のホイールが映えるなど、レトロでお洒落なカスタマイズが施されたミラジーノに乗って、取材会場に現れたのは岡山県在住の“mikio”さん。ただ、本当のオーナーは、この日は残念ながら参加できなかったmikioさんの奥様である。
「これは嫁さんが独身時代に買ったクルマなんです。嫁さんはこのクルマの前はホンダ・トゥディに乗っていたそうなんですが、壊れてしまって乗り換えることになったそうです。その時、義理のお父さんが『“ヴィヴィオ・ビストロ”のような、クラシックで可愛いのが良いんじゃないか』と勧めてくれて、彼女も『そういう可愛い軽が良いな』と思ったようですね。その後、彼女の家族が懇意にしているクルマ屋さんにいった時、たまたまダイハツの営業さんがミラジーノを乗っているのを見て、『ビストロみたいで可愛い』と気に入り、このクルマを新車で購入したと聞きました」
奥様と知り合った当時は、まだミラジーノが街中でたくさん走っていたこともあって、このクルマを乗っているのを見た時も、特に何も思わなかったのだという。ただ、奥様がこのクルマをとても大事にしているということは感じたそうだ。
「結婚して、僕もこのクルマに乗るようになって気づいたんですけど、死角がなくて乗りやすいんですよ。あと、やっぱりフォルムが良いですよね。嫁さんが気に入る理由もわかった気がしました」
そんなmikioさんは、とくに『一癖あるクルマ』が好きだったそうだ。
「最初がハイゼットジャンボ、次はファミリアを2台乗り継ぎ、並行してフィアット・パンダとミニ1000を持っていました。で、この3台を売って、フィアット・プント1台にしたんですが、結婚する直前に事故に遭ってしまって…。その後は、今も所有するフォルクスワーゲンのゴルフⅡを趣味車として、普段乗りには三菱のi(アイ)に乗っています」と、話してくれた。ちなみにファミリアが好きすぎて、一時期マツダに入社、勤務していたというのだから驚きだ。
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(写真提供:ご本人さま)
そして現在。ご自宅には奥様のミラジーノ、mikioさんのゴルフⅡと三菱iの3台体制となっている。ただしミラジーノ同様、20年以上乗るゴルフⅡはmikioさん専用の完全な趣味車となっているため、三菱iと併用してこのミラジーノがファミリーカーとしての役目を担っている。
中学生と高校生の子供が2人いることを考えると、ミラジーノだと家族で出かけるにはちょっと狭いし不便なのでは…? と、普通なら思うところだが、mikioさんの考えは違っていた。
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(写真提供:ご本人さま)
「子供達が小さかった頃から、このクルマで家族4人で旅行に出かけるのが普通だったんです。4人で乗ると確かにちょっと狭いですが、コンパクトなぶん一体感があって仲良くなれるんです。そういった空間が当たり前の家族でした。まぁ、4人乗りでエアコンを入れるとメチャクチャ遅くて(笑)、後ろのクルマには『どうぞお先に』って感じになってしまいますが」
レトロで可愛いミラジーノの車内で、家族みんなが笑い合っている姿が目に浮かぶようだ。
ミラジーノは新車で購入したのだから、最初は当然フルノーマル。しかし現在の姿は、センス良くカスタマイズされている。これらは全て、ご結婚後に奥様の好みを加味した上で、mikioさんがカスタマイズを行なった結果なのだという。
「基本はオリジナルを活かしつつ、時代を考えたドレスアップを意識しています。クラシックな雰囲気を出したかったので、ヘッドライトを黄色のハロゲンにしたり、扁平が厚めのタイヤに交換したり、ミラジーノ専門店のダウンサスを入れてみたりといった感じで楽しんでいます」
なるほど。このミラジーノ、思った以上にmikioさんのこだわりがたくさん詰まっているらしい。とても気になって詳しく話を伺う。
「こういった小型のクルマには、ルーフキャリアをつけると似合うかな? と思って、純正オプションのものを装着したんです。本当は『Mira GINO』のプレートも付いていたんですけど、イメージが固定しすぎてしまいそうなので外しました。家族で出かける時は、ちゃんとキャリアに荷物を積むこともあるんですよ」
「白いホイールは、クリムソン製のミケロッティですね。15年くらい前にタイヤ交換ついでに交換しました。サイドのホワイトストライプは、視覚的に車高が低く見えるようにアクセントとして追加しました。そこにほんのちょっと車高を下げるためにダウンサスを入れ、もちもちしたタイヤとの組み合わせで、ミニクーパーっぽくなればな! って」
細かいバランスに気を遣ったカスタマイズからは、mikioさんの本気度が伺える。そして驚いたのは、これらのカスタマイズは、本来のオーナーであるはずの奥様の同意は一切とっていないのだという。
「嫁さんはこのクルマに乗る際、時に『あれ? なにか変わっているんですけど』って言ってきます(笑)。3年くらい前にもミラジーノ専門店で50万円くらいかけてリフレッシュをお願いしたんですけど、その時も嫁さんに内緒で、可愛いなぁと思ったアイラインやシートカバーなど、その他にも色々着けちゃいました。チェッカー柄のマットも嫁さんが気に入ってくれそうだなと思って。実際、僕のカスタムはいつも気に入ってくれますよ」
そうイタズラっ子のような表情で話すmikioさんはとても楽しそうだ。そして主張しすぎない程度に貼られたステッカーについても尋ねると、「リヤゲートに貼ったクマのステッカーは、嫁さんはクマが好きだし、イギリス車っぽくて良いかな? と思って。サイドガラスには、お世話になっているクルマ屋さんと、僕が好きなアーティストのステッカー貼っちゃいました」と、奥様の好みのステッカーだけでなく、さりげなくご自身の好きなものまで貼っているところが、なんとも微笑ましい。また、ご夫婦はサッカー観戦も好きで、車内を可愛く彩っていた『ファジアーノ岡山』のユニフォームを着たリラックマは、その時に購入したものだそうだ。
ちなみに、社外のドアロックピンなど一部のパーツはmikioさんの母親が乗っていたミラジーノからの流用だという。『ん? 母親のミラジーノ??』と思い詳しく聞くと、なんとmikioさんの母親と叔母さんもミラジーノに乗っていたのだという。そしてそれだけではなかった。偶然にもmikioさんの奥様の妹さんも、2年前までミラジーノオーナーだったそうだ。
「4人とも、たまたまミラジーノが好きで乗っていたんです。まぁ嫁さんの妹は、嫁さんが買った半年後に買っているので、影響を受けているかもしれません。母親のミラジーノはマニュアル車だったので、年齢的に辛くなり2年前に乗り換えてしまいましたが、叔母のミラジーノはまだ現役です。これは僕がいずれ引き取るつもりでいます。そうそう、僕もちょっとだけ2代目のミラジーノに乗っていた時期があったので、その時はうちに新旧ミラジーノが揃っていて、『ミラジーノのお店ですか?』と聞かれたこともありました(笑)」
レトロで可愛い小型車を好む感性は、両家の女性共通だったということであろう。そんな愛すべきミラジーノだが、購入から24年経った取材時の走行距離は、約26万kmに達していた。となると、やっぱり気になるのは日々のメンテナンスや故障の有無についてだろう。
「オイル交換は5000kmに1回くらいですね。自分ではクーラントやオイルの量をチェックするくらいです。大きな故障と言えば、ラジエーターから水を噴いてオーバーヒートしたことと、オルタネーターが寿命で止まってしまったくらいですね。長く乗り続けられているのは、思ったほど手がからないというのも理由のひとつかもしれません。故障する時は、何故だか僕がひとりで運転している時なんですよ。持ち主には迷惑をかけないように、クルマが気を遣ってくれているのかもしれませんね(笑)」
「実は3年前にオルタネーターがダメになった時は、23万kmも乗ったからクルマを買い換えようと思っていたんです。でも、今時のクルマってそれなりに高いじゃないですか。だったら新しいクルマを買うよりも、このクルマにお金を掛けた方が安いし、このクルマが好きな嫁さんは乗り続けたいと思うんじゃないかなって考えて、リフレッシュすることにしたんです」
この回のリフレッシュは長く乗り続けることを前提に、ショックアブソーバーやエンジンマウントなどのパーツ一式を交換したという。ところが、2024年9月に事故に遭ってしまい、危うく廃車の危機に…。しかし、周囲の協力でご覧の通り見事に復活。12月には無事に11回目となる車検を受けたそうだ。
「嫁さんにとって、このクルマの代わりになれるクルマはないんだと思うんです。傷やナンバープレートの凹み、事故で色が変わったリヤゲートも含めて、我が家の歴史なんですね」
「それに、たまに修理の時など、代車で子供を迎えに行くと、『いつものクルマはどうしたの?』と、ママ友さん達に心配されるそうですよ(笑)。そういう話を聞くと、なんだか嬉しくなりますよね」
そう目を細めて話してくれたmikioさんは、最後にこう締め括った。
「当面の目標は30万kmです。そこでエンジン載せ換えなどの大きなリフレッシュして、その後は月までの距離の38万kmを目指したいなと思っているんです」
mikioさんご一家にとって、家族同然のミラジーノ。きっと月までの距離なんてあっという間にクリアしてしまうことだろう。その先も、どこまで距離を伸ばすのか楽しみだ。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)
[GAZOO編集部]
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