『シャレード』に何かを感じてから半世紀。2台のシャレードと仲間に恵まれて過ごす充実ライフ
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ダイハツ・シャレード(G100型)
『物心がつく』とは、よく使われる表現だが、あなたは物心がついた瞬間を覚えているだろうか? 自我が目覚めたその瞬間ではないにしろ、あの時あの場所で、親兄弟や友達となんとなく交わした会話の記憶は、大なり小なり誰しも残っているのではないだろうか。
3代目ダイハツ・シャレード(G100型)に乗っている『セーラからの贈物』さんの場合は、2歳か3歳の頃に自分が発した忘れ難い言葉があるそうだ。当時、新車として発売されて間もなかった初代シャレードの広告を見て、お母さんに「これってケイジドウシャ?」と聞いたことをはっきり覚えていると言うのだ。
念の為調べてみたが、初代シャレードが発売されたのは1977年。セーラからの贈物さんが2〜3歳の時と、時期的にもちょうど合致する。「これってケイジドウシャ?」と聞いたということは、少なくともすでに軽自動車の存在は知っていたわけで、2〜3歳だったセーラからの贈物さんがクルマに対して並々ならぬ興味を持っていたことが窺い知れる。
「当時はスーパーカーブームだったので、子供の頃から乗り物に興味を持つこと自体は自然だったとは思うんですけど、自分の場合はその時に見たシャレードの姿が子供心に強く印象に残ったみたいです。なんだこれは? っていう思いを、自分が知っている限りの言葉を駆使して表現したらそうなったのかもしれません(笑)」
実はその後、両親が実際に初代シャレードを購入したため、いわゆる実家のクルマがシャレードに。そして18歳で運転免許を取ると、アルバイトで頭金を貯め、ローンを組んで初めて購入したマイカーが、ちょうどフルモデルチェンジしたばかりの4代目シャレードだった。
「リッターカーという言葉があったくらい、シャレードと言えば1000ccというイメージがあると思うんですけど、4代目からは1.0リッター車がなくなって、1.3リッターよりも上になってしまったんですよね。そういう意味ではちょっとシャレードっぽさは薄かったかもしれません。でも、私は今でも歴代シャレードはどの型も好きなんですよ。まあ、言い換えると惰性かもしれませんけど(笑)」
その後、4代目シャレードから初代ムーヴに乗り換え、それからまた初代インプレッサに乗り換えと、ダイハツ車に限らず複数のクルマを乗り継いでいったセーラからの贈物さん。お子さんが生まれると、便利なミニバンに乗っていた時期もあったが、40代を目前にした2013年、再び『惰性』とうそぶく『愛』が再燃。念願だった初代シャレードをマイカーとして購入した。
その初代シャレードは現在も保有しており、旧車のイベントなど、ここぞという時にだけ乗っていく生活を続けているそうだ。そんな折、徳島県在住のセーラからの贈物さんは、愛媛県の松山で開催されたイベントに参加した際に、今回の出張取材会にも一緒に参加してくれたダイハツ・シャルマンのオーナー、カワゾメさんと運命的な出会いを果たした。
残念ながら、一般的にはマイノリティと言わざるを得ない80年代のダイハツ車乗りで、自分と同じかそれ以上のダイハツ愛を貫くカワゾメさんとの出会いは、セーラからの贈物さんにとって多くの想いを共有できる邂逅となった。
それ以来、香川県にあるカワゾメさんの整備工場をたびたび訪れ、初代シャレードの整備でお世話になる関係になっていった。
「カワゾメさんはオークションで古いダイハツ車を見かけると、こんなのあったよーという感じで情報を送ってくれるんです。今乗っている3代目シャレード1000のウィルSという限定車は、中学生の頃からずっと欲しかったクルマなんですけど、なかなか販売物件が出てこなかったクルマで。でもある時、遂にカワゾメさんが見つけてくれて購入することになりました」
なんと乗り換えではなく、まさかの“シャレード増車”という英断を下したセーラからの贈物さん。「実は初代を買った時も、3代目の在庫と迷ったんですよ。その時の心残りもあったので、カワゾメさんから情報をもらった時には即決していました」と、当時の心境を語ってくれた。
3代目シャレードに設定された『ウィルS』というグレードは、発売当時1000台限定だった特別仕様車(後にカタログモデルに昇格)。カラードバンパー、専用ホイールキャップ、サイドストライプ、専用シートなどが加えられた『ウィル』をベースに、さらにエアコンとパワステが追加されたのが『ウィルS』である。
「オークションでも、スポーティなグレードはちょこちょこ出てくるんですけど、私はもともと上級車よりも当時のお買い得グレードに惹かれてしまうんですよね(笑)。買うに買えなかったのは、それも理由のひとつだったと思います」
「買った時は、走行距離が1万3000kmしか走っていなくて、おそらく車庫で保管されていたのか、シートも内装もすごくキレイでした。前のオーナーさんが高齢だったのか、バンパーとかはキズが多かったですけど、それでも奇跡的なコンディションでしたね」
その言葉の通り、80年代のクルマとは思えないほどピカピカなシャレード。エンジンルームもとてもキレイで、よく整備されていることが伝わってきた。
「実は、前日までカワゾメさんのお店で整備を受けていたんですよ。今日の撮影に間に合わせてもらえて助かりました(笑)」
隣県とはいっても、自宅からカワゾメさんのお店までは100km程はあるそう。それでも困った時に頼れるメカニックが近くにいるというのは、2台のシャレードを維持していく上では大きな安心材料に違いない。
「ミラなど、他のダイハツ車と部品の一部は流用が効くんですけど、それでもやっぱり大変は大変ですね。特にアウターパネルはほとんど手に入らないので気をつけています。そういえばウィル専用のホイールキャップは1個だけ最初から付いてなかったんですよ。仕方ないので、左リヤには別の形のキャップを白く塗装して付けています。これはなんとか元に戻したいところなんですけどねぇ…」
急場凌ぎのホイールキャップを用意してくれたのもカワゾメさんなら、助手席の前のダッシュボードに置かれたオプションのドリンクホルダー付きトレーをお店の部品取り車から譲ってくれたのもカワゾメさん。貴重なアイテムが期せずして手に入るのも、主治医との良好な関係あってこそである。
あとは2代目シャレードを購入したら全世代コンプリートですね? と聞いてみたら、「そうしてみたい欲は少しありますけど、今は初代と3代目の2台持ちでいっぱいいっぱいです」と、笑顔を浮かべたセーラからの贈物さん。いつかカワゾメさんから『こんなのあるよー』と連絡が来ても、自制することができるかどうかは神のみぞ知る…だ。
「一般的にシャレードは初代と2代目が名車とされてると思うんですけど、個人的にデザインは3代目が一番好きなんですよ。今の目で見ると、ちょっとヨーロッパ車っぽいといいますか。特にリヤのフェンダーは特徴的ですよね。なにせ中学の時から欲しかったクルマですから、このウィルSは初代ともども一生物として大事にしていきます!」
物心がついた時の記憶と愛着に導かれ、男子一生の乗り物として乗り続ける愛車2台に巡り合うことができたセーラからの贈物さん。その笑顔は実に晴々としていた。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)
[GAZOO編集部]
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