『速いだけが正義ではない』と気づかせてくれたアクセラスポーツとの出会い
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マツダ・アクセラスポーツ20S-SKYACTIV (BLFFW型)
クルマの基本と言われる『走る・曲がる・止まる』。そのすべてを自分の感覚で掌握することが叶い、不思議と通じ合う感覚を覚えた時、人はクルマを単なる機械ではなく『愛車』というかけがえのない存在として認めるようになる…。
『いそやん』さんがそんな実体験を経て、もはや相棒として信頼を置くクルマが「最初の2〜3年で乗り換える『つなぎ』のつもりで買ったクルマだった」と振り返る、2011年式のマツダ・アクセラスポーツ20S-SKYACTIV (BLFFW型)である。
親戚が日産・シルビアに乗っていたことから興味を抱き、一緒にクルマ屋さんに出入りするようになると、そこでクルマ好きの英才教育を受けることになったといういそやんさん。
18歳の時に初めて購入した日産・シルビア(S14型)でドリフトを楽しむようになると、その後にひと世代新しいS15型のシルビアに乗り換え。S14で使用していたパーツも移植しながらアップデートを繰り返し、走りのステージもドリフトからグリップ走行にシフトしていき、岡山国際サーキットなどでFRスポーツの走りを心から堪能してきたという。
ただ、シルビアは完全にサーキット専用車としての役割だったため、普段の移動などに使うためのクルマも常に別で所有していたという。
しかし、徐々にその2台体制を維持していくことにシンドさも感じるようになると、通勤も趣味も1台でこなせるクルマへ乗り換えることを検討し始めた。
「ちょうどその頃に、高速を走っていたらものすごい音のクルマが駆け抜けていったんですよね。それがフォルクワーゲンのゴルフVに設定されていた『R32』という4WDのハイパフォーマンスモデルだったんです。それがきっかけになって、最初からメーカーがカスタマイズしたクルマを買って、普段使いと走りを両方楽しむのもいいなと思うようになって、ゴルフR32に乗り換える決心をしました」
ゴルフR32は人や物を乗せたりするにも便利なパッケージングでありながら、最高出力250psを発揮する3.2リッターのV6エンジンを搭載。いそやんさんが期待した通り、街乗りからスポーツ走行まで、幅広いシーンで大活躍してくれたそうだ。
だがその後、また様々な環境の変化を迎え「大事に大事に乗ることに少し疲れてきた(笑)」というゴルフR32も乗り換えを意識するようになった。いつもお世話になっているクルマ屋さんに、ひとまず次買うならこんな感じと一定の条件だけ伝えておいて、もし都合の良さそうなクルマが見つかったら連絡くださいとお願いしておいたそうだ。
「その時に伝えた条件は、予算と走行距離の上限、ボディ形状がハッチバックで排気量は2.0リッタークラスであること。修復歴がないクルマで、あとは好みのボディカラーくらいですね。具体的にコレっていうものはなくて、本当に欲しいと思うクルマが見つかるまでのつなぎとして、2〜3年乗れれば良いかな? くらいのノリでした」
そして、そのクルマ屋さんから提案されたのが、現在の愛車であるアクセラスポーツ(以下、アクセラ)である。正直なところ「当時は本当にイメージになかったクルマでした(笑)」と、振り返る。
「ただ、納車されて初めて出勤した日の帰りだったんですけど『アレ? なんかこれ、思ったより走るな』と思ったんです。もちろんゴルフR32やチューニングしたシルビアと比べたら絶対的なパワー感はないんですけど、なぜか走らせるのが楽しいんですよね。意のままに操れるというのは、こういうことなのか? と思うようになって、一気に見る目が変わってしまいました」
現在はMAZDA 3という車名に改められているアクセラだが、ここで少しクルマの概略について触れておくと『アクセラ』という車名では3世代に渡って生産されたCセグメントカーで、セダンもラインナップされる一方、イメージリーダーであるハッチバックには『アクセラスポーツ』という車名が与えられていた。
いそやんさんが乗る2代目モデルは、特徴的な五角形グリルを備えるほか、流れるようなボディラインを取り入れることで、より躍動感のあるフォルムを実現。
そして2011年にマイナーチェンジが実施されると、今ではすっかりおなじみとなったマツダのスカイアクティブ・テクノロジーをデミオ(現在のMAZDA 2)に続いて採用したことでも話題となった。
いそやんさんが乗る『20S-SKYACTIV』も、2.0リッター直噴ガソリンエンジンのSKYACTIV-Gと、ATでありながらロックアップクラッチが機能する範囲を拡大することでMTのようなダイレクト感を実現した6速ATのSKYACTIV-DRIVEを搭載するグレードとなっている。
アクセルを踏んだ時のレスポンス、加速していく時のスムーズな変速、ステアリングを切った時のしっかり感など、いそやんさんにとってすべてがしっくりきたのは、マツダ自慢のスカイアクティブがもたらす機敏さと、アクセラシリーズが2代に渡って培ってきたスポーティネスが肌に合った結果なのかもしれない。
「ふと立ち寄ったコンビニとかでアクセラを眺めると、あらためて美しい形をしたクルマだなって思うんです。特に斜め後ろから見たスタイルが気に入っていて、リヤフェンダーとリヤバンパーの造形が僕は好きですね」
気がつけば、走りでも見た目でもすっかりアクセラに魅了されてしまった、いそやんさん。時間があれば特に目的がなくともドライブに出かけ、幸せな時間をともにしてきた。
そんな生活を送る中で、現在の奥さんとも知り合い、アクセラはデートの足としても活躍するようになった。やがて、結婚することが決まると、九州まで新婚旅行に出かけたり、新居に引っ越す際にも荷物を積んで運んだりと大活躍。それと同時にたくさんの思い出もできたそうだ。
「一番よく覚えているのは、娘が生まれた時のことですね。アクセラで病院まで迎えに行ったんですけど、生まれたばかりの命を乗せて走るわけですから、できるだけ交通量の少ない道を選んで、ゆっくりゆっくり帰りました(笑)」
かつては、いかに速く走るかしか考えていなかったいそやんさんが、いかにゆっくり走るかを考えるようになったことは、シルビアやゴルフR32に変わり、アクセラという相棒を手に入れたこととも相通じる、象徴的な変化と言えるかもしれない。
実は、今回の撮影当日の朝も娘さんを保育所に送り届け、一度自宅に戻ってチャイルドシートを下ろしてから参加して下さったそう。その優しい笑顔には、新米パパとしての責任感も垣間見られた。
アクセラを購入してから約8年。納車された時には6万5000kmだった走行距離も、既に17万kmを超えている。小さな故障も出始めているが、ある程度の修理はいそやんさんが自分で対処しているそうだ。
「おそらく、これからはもっと頻繁に修理やメンテナンスをする必要が出てくるとは思います。正直、子供が生まれた時にミニバンへの乗り換えも考えたんですが、迷う気持ちを抱えながら夜な夜なアクセラに乗ってドライブに出かけました。そうして辿り着いたのが、『これからもこのアクセラと走り続けたい』という答えでした」
「僕にとっては大切な相棒ですから、少し手が掛かったとしても、しっかり自分の手で直しながら乗り続けたいですね。そして娘が大きくなったら、このクルマは僕たち家族とずっと一緒にいたんだよと話してやりたいです」
もはや家族の一員と言っても過言ではない、いそやんさんのアクセラ。これから何年経とうとも、その『走る・曲がる・止まる』の手応えを感じるたび、やっぱりコレだよコレ! と静かに呟きながら愛車を走らせるいそやんさんの姿が目に浮かぶようだ。
(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)
[GAZOO編集部]
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