A70型スープラを乗り継ぐこと3台。そのルックスとフィーリングからは離れられない

  • GAZOO愛車取材会の会場である倉敷スポーツ公園で取材したトヨタ・スープラ(JZA70型)

    トヨタ・スープラ(JZA70型)



トヨタが誇る名車2000GTの血統を受け継ぎ、1986年に『TOYOTA 3000GT』というキャッチコピーを掲げて華々しくデビューしたスープラ(#A70型)。
ロングノーズ&ショートデッキにリトラクタブルライトという組み合わせが織りなす優雅で美しいスタイリングに魅了されたファンは多く、そんなスープラに「カッコ良い!」と一目惚れして以来、これまで3台のA70型スープラを乗り継いできたという『masa70』さんもまた、生粋の“ナナマル”フリークスだ。

子供の頃は、当時から流行っていたカーゲーム『グランツーリスモ』で様々なスポーツカーで遊び、歳を重ねていく毎に次第にスポーツカーが好きになっていったというmasa70さんは、大学の友人が乗っていたスープラ(GA70型)と出会ったことで、自身のカーライフも大きく動き出すことに。
「その友達が乗っていた白いスープラを見て『ノーズが長くてカッコ良い! 自分も乗りたい!』と、ひと目で気に入りましたね。1Gエンジンではパワー不足、7Mエンジン系はトラブルが出る確率が…と聞き、1JZエンジン搭載のスープラを手に入れるためにアルバイトを始めました」

「そして50万円ほど貯まった頃、ネットオークションに出ていた、ATの白いスープラ(JZA70型)を見つけたんです。同じ県内で、田んぼに放置されていたクルマでした。クルマ屋さんと一緒に実車を見に行ったら『このくらいなら直せるね』というので、7万円で購入しました。当時の相場では、MT車の中古だと100万円くらい、AT車だと50万円くらいだったので本当に格安だったと思います。けれど、修理に40万円くらい掛かっちゃったから、結局は相場と変わらなかったんですけどね(苦笑)」

初の愛車として、念願のスープラを手に入れたのが21歳の時。
同じクルマを持つオーナーと繋がりたいと、インターネットでA70型スープラのメーリングリストに参加。そこで同じ地域に住むオーナーさんや、今でも懇意にしているスープラ専門店の方と交流を持つことで、スープラ愛を深めていったという。

「当時は人との繋がりが楽しかったですね。同じ県内の年齢がひと回り上のオーナーさんと、隣の県のオーナーさんと3人で『ちょっとタイヤ交換してみよう』とか、皆でワイワイしているうちに、自分でも色々なクルマ趣味をやってみようと思うようになりました。学生時代の最後には、40台くらい集まるA70型スープラのオフ会に参加して、色とりどりに飾られたスープラに感動したし、多くのオーナーさんと話しもできて、すごく楽しかったですね。その後もオフ会には参加し続け、今でも繋がりのある方々とも出会えました。元々はスポーツカーに興味がなかった僕が、今でもスープラに乗り続けているのは、こういったオーナーさんとの繋がりが楽しいということも大きいですね」

masa70さんをすっかり夢中にさせたこの1台目は、彼の学生時代の遊びの相棒として活躍。そして社会人1年目になった頃、知り合いが乗っていた事故車の黒いMT車のスープラ(JZA70型)を『持って帰っていいよ』と言われ、奇遇にもコチラも7万円で譲ってもらったという。しかも2台とも車検は切らさず、社会人1年目にして70スープラ2台持ちだったというから、早くもマニアとしての片鱗をうかがわせていたことがわかるエピソードだ。

「当時はダムの発電所に勤務していて、2台目は職場の寮のシャッターの中に半年だけ置かせてもらっていました。技術職だったこともあり、自分でチャレンジすることが良しとされる雰囲気だったので、そこで壊れたバンパーを剥いだり、鉄骨をサンダーで切ったりと、そのスープラを修理しながら色々なことを覚えました。そして半年後、職場移動になったことを機に、1台目のスープラを手放して、2台目の黒いスープラだけに絞りました」

ちなみにこの2台目のスープラに乗っていた頃は仕事場までの距離が遠く、購入時は15万kmだった走行距離が、6年間で29万kmまで延びてしまったそうだ。

「18万kmの時に、各部のブッシュをすべて交換したり、クラッチなどの消耗品を随時メンテナンスしたりと手をかけながら、多い時は年間4~5万km乗っていました。その頃は、月のガソリン代が12〜13万円は掛かっていましたね。それでもなぜ通勤用として燃費の良いクルマを買わなかったかというと、当時、44万kmも走っていた知り合いに追い付きたかったからでした(笑)」と、楽しそうに話してくれた。

いっぽうで、それなりの距離を走ったことでボディがヤレてしまい、再びお気に入りのカラーである『白いスープラ』に乗り換えたいと探し始めていた時に、現在の3台目が出てきたという。

「知り合いのスープラオーナーが降りるということで譲っていただき、山形から自走で持ち帰ってきました。このクルマは、実は僕が本当に欲しかった『マニュアル』『1JZターボ』『白ボディ』という条件がすべて揃っていて、その念願が叶ったのが嬉しかったですね」

こうして2009年にmasa70さんが手にした、1991年式のスープラ(JZA70型)は『2.5GTツインターボR』。直列6気筒DOHCターボの1JZ-GTEエンジンを搭載し、280psというスペックを誇った。

ちなみにmasa70さんは、このスープラを手に入れて2年後に結婚。それを機にファミリーカー兼、通勤車を別に用意し、スープラは趣味クルマという位置付けに変化した。

ただ、この3台目の購入時は“とても職場に乗っていけない派手な仕様”だったのだとか。
そこで、まずは派手さを抑え“普通”に戻す作業からスタートしつつ、車検対応の範囲内で少しずつ自分の好みに仕上げていったそうだ。

「うるさかったマフラーは、静かだと言われるフジツボ製のレガリスに交換して、派手だったGTウイングもおとなしめのタイプに交換。車高も適切な位置まで上げました」

こうして、純正を意識したカスタマイズ仕様に戻しつつも、masa70さんの好みを反映したこだわりのカスタムが随所に光るところも見逃せない。

「エアロ関係は前オーナーの好みで派手な仕様になっていたのですが、サイドステップは流線形状が好きなアブフラック製に交換して、ボンネットはダクト付きのものから純正に戻しています。ホイールは一度は履いてみたかったBBS製で、昔ながらの形が好きなので、大きすぎない17インチを選びました。ちなみに、リヤの丸テールは自作品です! 内装のこだわりも色々ありますが、ステアリングとシートは前のスープラからずっと愛用しているものを使っています。特にこのAM19というレカロ製のセミバケットシートは、クッションが厚くて座り心地が良いんですよ」と、こだわりのポイントがどんどん溢れ出してくる。

そんなmasa70さんの70スープラだが、やはり古いクルマだけにこの10年の間に大小様々な故障にも見舞われたという。

「ラジエターのトラブルや、テールランプに水が貯まった金魚鉢事件。メインコンピューター故障によるエンジン停止などなど色々ありました。ステアリングラックも何回交換したことか。ちなみに、今はエアコンが壊れているんですが、コンプレッサーの一部のパーツが出なくて修理できず困っている最中です。基本的には自分で調べて修理できそうなものはDIY修理で、それ以上の整備は行きつけのクルマ屋さんに、重整備は地元のネッツイン倉敷さんに願いしながら、現状を維持しています」

では、そこまで手間とお金をかけながらもmasa70さんがこの70スープラに乗り続ける理由とはなんなのだろうか。

「ひとつはこの角張ったボディとリトラクタブルライトが、一目惚れしたくらい自分の好みだったことですね。それと、丈夫な1JZエンジンが気に入っていることもポイントです。あと、僕はハイスピードな走行をするわけでもなく、どちらかと言うと、色々なところにドライブを楽しむタイプなんです。ですから、高速道路なら適度な速度で快適に走れて、追い越し時などにパワーが必要な時は楽々と加速できる。そんなスープラが自分のスタイルに合っているんですよね」

「トラブルは相当数経験しているし、A70系スープラの事はある程度わかっているつもりです。だから、自分でも修理できるところはそれなりにありますし、整備性が良いので、各所のメンテナンスも楽しくできるんです。オマケに社外パーツが豊富だから、カスタマイズの幅も広いんですね。今後トヨタさんが純正部品を切らさずに出し続けてくれれば、まだまだ乗り続けられるクルマなんですよ!」

見た目のスタイル、エンジン、そして走りのフィーリング、修理やカスタムの楽しさ、そしてオーナー同士のコミュニティ。masa70さんにとってそのすべてを兼ね備えているのが、このスープラだ。そんなmasa70さんが取材時に見せてくれたのは、スープラに関する雑誌記事のスクラップ。こんなところにも、彼のスープラに対する愛情が垣間見えた。

「やっぱり70スープラが自分のフィーリングに一番合っていると思います。だからこそ、この先も手放さずにずっと乗り続けていきたいですね」

masa70さんのカーライフに、大きな彩りを与えてくれたスープラは、これからも彼の相棒であり続けることだろう。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)

[GAZOO編集部]

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