【素敵なカーライフレシピ #17】感動のサウンドを運ぶパートナーは660ccの絶版ワゴン
命の次に大事なほどの楽器、ヴィブラフォンをライブ会場まで大事に運ぶために選んだのがスバル・サンバー。その使い勝手の良さに惚れ込み、同じサンバーを2台乗り継ぐミュージシャンがいる。曲作りにも影響を及ぼすというサンバーへの信頼感と喜びを聞きました。
日々の生活においてリモートやオンラインの場面が増えるほど、人と人がライブに対面することの貴重さ、大事さがあらためて問われています。
今まで好きだったものを急に我慢しなければいけない時代。一日も早く平穏さを取り戻すためにも、人の心を震い立たせ元気にしてくれる「音楽」という存在の大事さを、あらためて感じた人も多いはずです。
ジャズライブを中心に活躍する中島香里さんは、ヴィブラフォンという楽器をプレイするプロのミュージシャンです。聞き慣れない名前かもしれませんが、ヴィブラフォンは鍵盤と管楽器が一体となったような楽器で、音板の下に伸びる共鳴管に内蔵されたファンにより電子的なビブラートが掛けられることが、その名の由来です。
奏法は、マレットと呼ばれる棒で木琴のように音板を叩きます。中島さんは4本のマレットを縦横無尽に駆使するスタイルで、叩き方に強弱をつけると同時に足でペダルを操作して音の長さを調整します。
激しく叩けばキレのある心躍る音色に、音板をソフトに撫でるように奏でれば懐かしくも情緒溢れる気分になれる音が出るという、プレイヤー次第でメリハリのある音色を奏でる不思議な楽器がヴィブラフォンなのです。
この道のプロになって15年になる中島さん。そのミュージシャン生活のほとんどをスバル・サンバーとともに過ごしています。ヴィブラフォンは分割して運ぶことができるとはいえ、華奢な女性が手持ちで運ぶことなど不可能なほど重たい楽器。
ゆえにヴィブラフォンのプレイヤーになるということは、移動のためのクルマが必要な環境になる、ということを意味します。
年間200本近くのライブをこなす中島さんは、そのたびに全国各地の会場に移動します。デビューの頃、楽器を運ぶクルマは何でもいいだろう、ということで実家にある軽自動車を使って積み下ろしを試してみました。
するとサイズが思いのほか大きいヴィブラフォン、本来なら丁寧に平置きして積まなければならないところ、いちばんダメージが及んでほしくない共鳴管によろしくない縦置きで積むことしかできませんでした。
これはマズイ、というわけで馴染みの車屋さんに相談した中島さん。
そこで激推しされたのがサンバー・ディアスワゴンでした。エンジンをリヤアンダーに積むという特殊なレイアウトのサンバーは、フラットかつ広い荷室が自慢の軽自動車。大事な大事なヴィブラフォンを安心して運べることがわかると、中島さんはサンバーを即決しました。
クルマに関してはあまり予備知識がなかった中島さんですが、サンバーの使い勝手の良さをきっかけに、じわじわとその魅力の虜になっていきます。
全国にファンとオーガナイザーがいる中島さん。住んでいる関東から、ときには北陸地方などかなり遠くの会場でライブがブッキングされることもあります。そんな時ももちろん、愛車サンバーで出掛けます。
遠出することではっきりと体感できるのは、4気筒エンジンのスムーズさと4輪独立サスペンションの疲れの少ない乗り心地。専門的知識がなくとも、サンバーの持つ特徴的なメカニズムを身体で理解していった中島さんなのです。
ライブによっては1日3回公演することもあり、終了後に身体がへとへとに疲れていたとしても、サンバーは優しく中島さんを迎えてくれます。牧歌的なサンバーでのんびり走るライブの帰り道はいつも、やり遂げた充実感に包まれた至福のドライブです。
そしてこの「初代」サンバーは、7年ほどかけ10万㎞もの距離を重ねました。そう、「初代」ということは今、中島さんが乗っているサンバー・バン ディアスは、2台目のサンバーなのです。
「もう、サンバーが好きで好きで(笑)。この型のサンバーがもう新車で買えないと思うと、少しでも程度のいいクルマに乗り換えたくなって」
というわけで、走行わずか3万㎞だった車両を見つけて、3年前に乗り替えて現在に至るのでした。もちろん頑丈なサンバーですから、以前の愛車(ブルーのボディカラー)は違うオーナーのもとで今でも元気に走っているそうです。
楽器を安全に運べる、という利点をきっかけに深まったサンバー愛。今では中島さんは街中ですれ違うサンバーにも熱い視線を送るほどに成長(笑)し、模型やカタログなどサンバーにまつわるコレクションは自宅にどんどん増えています。
KVQというユニットを率い、コンポーザーとして2枚のアルバムも出している中島さん。そのいくつかの曲は、サンバーからながめる車窓の風景からインスピレーションを受け生まれた曲もあるそうです。
また、中島さんがサンバーに乗っているのはファンのあいだでも周知の事実で、会場に入った際は、ボディサイドに貼った、猫とヴィブラフォンをモチーフにしたオリジナルのステッカーと一緒に写真を撮るファンも多いそうです。
音色の決め手となる共鳴管を傷つけることのないよう、キルティングで手作りしたソフトケースに優しく包んでから、慎重に搬入・搬出をします。サンバーならご覧の通り、安全に積むことができます。全国のライブ会場に出向くたび、この作業を繰り返します。
会場や共演者によって演奏スタイルをはじめ衣装も変幻自在に変えていくのが中島さん流。推しのファンですらその振り幅の大きさに驚くくらいの変わりっぷりだそうで、これはぜひライブで見に行きたくなります。
さらにライブ中は、ゾーンに入ると自分でも制御できないほど荒々しいプレイになることもあるそうです。そんなこともあり少々お疲れだった中島さんのヴィブラフォンですが、コロナ禍でライブが自粛されていた期間はオーバーホールに出す絶好のタイミングとなりました。
サンバーに積まれている4気筒エンジンについても、いつでもいい音を奏でてくれるようにまめにオイル交換するなどヴィブラフォンともども、メンテナンスを欠かさない中島さんです。
中島さんの活動の幅は、ジャズのユニットだけにとどまりません。ヴィブラフォン同士で組んだデュオも好評だったり、ときにはコーラスを担当することもあるそうです。
既存の常識にとらわれない挑戦的で柔軟な音楽性の中島さん。ライブスケジュールなど詳細は中島さんのホームページ(http://kaorin.jazzman.club/)でチェックすることができます。
これからも、感動のヴィブラフォンの音色を届けるため、サンバーの4気筒サウンドを響かせながら全国のライブ会場を巡る予定の中島さん。
小さな身体に大きな可能性を秘めている点は、サンバーと中島さんはとてもよく似ていると感じました。
(文=畑澤清志/写真=井上 誠)
[ガズー編集部]
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