子供の頃に憧れたロータス・ヨーロッパを気ままに乗りこなす至福の時間

  • 信州サンデーミーティングで取材させていただいた1974年式のロータスヨーロッパスペシャル(右ハンドル、英国仕様)

    1974年式のロータスヨーロッパスペシャル(右ハンドル、英国仕様)

今や日本を代表する輸出コンテンツとも言われる『ANIME(アニメ)』や『MANGA(マンガ)』は、クルマ好きの愛車選びにも大きな影響を与えていることを、各地のイベントを巡って愛車を拝見するたびにひしひしと実感する。
その代表的な存在といえば頭文字Dに登場するスプリンタートレノ(AE86)とRX-7(FC3S&FD3S)、湾岸ミッドナイトのフェアレディZ(S30)や、よろしくメカドックのセリカXX(A60)など枚挙にいとまがないが、ロータス・ヨーロッパとくれば…

  • 信州サンデーミーティングで取材させていただいた1974年式のロータスヨーロッパスペシャル(右ハンドル、英国仕様)

    丸形ヘッドライトのロータスヨーロッパ

早速そのあたりのところを、オーナーの清水さんに伺ってみると、帰ってきた答えは案の定だった。
「そうです、やはりキッカケは中学校のころにハマった『サーキットの狼』です。ライバルの乗るポルシェやフェラーリ、ランボルギーニなどを、ロータス・ヨーロッパを駆る主人公の吹雪祐也が壮絶なバトルの末に打ち破る。そんな速さに憧れてオーナーになりましたが、実際はそんなに簡単に勝てるわけはないですよね(笑)」

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    ロータスヨーロッパのコックピットは狭い

清水さんがロータス・ヨーロッパを手に入れたのは、今から26年前の1997年のことだった。正式車名はロータス・ヨーロッパ スペシャルの74年モデル。右ハンドルにこだわってイギリスから並行輸入した、いわゆる中古新規登録のクルマだ。
「当時、日本の正規ディーラーが販売していたのは北米仕様だったので、すべて左ハンドル仕様。けれど、どうしても右ハンドルの方が良かったので、このクルマを選んだんですよ」と、清水さんは購入の経緯を振り返ってくれた。

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    リアエンジンルームのデザインが独特で美しいロータスヨーロッパ

自慢のひとつは、新車当時の塗装のまま美しいコンディションをキープしているエクステリアだ。季節はちょうど紅葉の時期。落ち葉で敷き詰められた路面にたたずむロータス・ヨーロッパは、まさにイギリスの風景のように映った。
ちなみにロータス・ヨーロッパのエクステリアデザインは、初期型となる1型&2型と、後期型のツインカム&スペシャルでは異なっている。変更されているのはリヤウインドサイドから後方に伸びるバーチカルフィンで、後期モデルは後方視界確保のためにフィンが低くなっているのだ。

リヤミッドシップに搭載されているのはフォード製の腰下にロータス製のDOHCヘッドを組み合わせた1.6リッターエンジン。
この“スペシャル”は、インテークバルブ拡大や圧縮比を高めるなどのチューニングが施されたバージョンなのだが、清水さんは約15年前に行なったオーバーホールの際に、ロータス・エスプリ用のビッグバルブや吸排気ポートのさらなる加工を追加。排気系もエキゾーストマニホールドとマフラーをワンオフ品に交換しているという。

さらに、純正のデロルト製キャブレターを4連スロットルのインジェクションに変更。その制御用に装着しているのはDMSという米国製のエンジンコンピューターで、車内に引き込まれたコントローラーを使い、燃料や点火を調整できるようになっている。
「キャブレターですと、季節毎にセッティングしなければいけないので、少々面倒なんですよね。そこでインジェクションシステムに変更しました。初めのうちは、もしかしたら壊れるんじゃないか? と心配していましたが、実際はトラブルを起こすこともなく快調でした。それと、計測したことはありませんが、最高出力は160psくらい(ノーマルは126ps)は出ているんじゃないかな? と思うくらいパワフルになりましたね。このインジェクションシステムも含めて、メンテナンスやカスタマイズは友人を通じて紹介してもらった御殿場のガレージにお願いしているんですよ」と、清水さん。

軽快な走りを生み出す足まわりにも、しっかりと手が入れられている。サスペンションはSPAX製の車高調整式に変更。タイヤ&ホイールはフロント13インチ、リヤ14インチという異径設定で、タイヤの選択肢が非常に少なく、維持していく上で少々苦労するそうだが、望みのセットが決まれば、その走りは軽快そのものだ。

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    丸形の色々な補助メーターがあるロータスヨーロッパ

インテリアは、シートやドアの内張りなど、傷んでいた部分の補修を兼ねて、すべて張り替えを行なった。英国まで送って製作したというリアルウッド素材のメーターパネルも拘りのひとつだ。

ロータス・ヨーロッパのように貴重な絶版車ともなると、オリジナルと呼ばれる新車当時のままの無改造にこだわるオーナーも多いが、清水さんの場合は「快調に走れるのであればオリジナルにはこだわらない」というスタンス。そうしたクルマとの向き合い方の背景にあるのは、高校時代から長年に渡って本気で取り組んでいたラジコン競技がルーツのようだ。
「ラジコンの競技にもいろいろありますが、私がやっていたのはボートの長距離レースでした。試行錯誤しながらチューンやセッティングをしたラジコンボートを、本物のモーターボートで追いかけながら操縦するレースです。高校時代から20年間続けて、2回目の全国優勝を機に引退しました。このロータスを購入したのも、そのタイミングがキッカケでしたね。引退して余裕のできたお小遣いで、ラジコンに代わる新しいオモチャを購入したというわけです」と、清水さんは笑う。

しかも、このヨーロッパ スペシャルをきっかけに、その後もエリーゼ、エスプリターボSEを追加で購入し、計3台のロータス車で愛車ライフをエンジョイしているのだそうだ。
「ロータスのクルマに共通しているのは、車体が軽いということです。軽いクルマなので、ドライブしていて特に楽しいのがコーナリングですね。クルマは乗ってなんぼですから、飾るのではなく走って楽しむというのも拘りでしょうかね。好調を維持するために、その日の気分で3台のロータスを乗り換えて走るようにしています。けれど、決して“快適”なクルマではないので、雨天や夏の時期の日中には乗らないですね。3台のロータスはあくまでも趣味のクルマで、通勤にはスズキのジムニーに乗っていますから。あ、実はもう1台、どうしてもオープンカーが欲しくなって、ホンダ・S2000も手に入れてフルレストアしちゃいました」
どうやら“クルマは大人のおもちゃ”と公言する清水さんだけに、欲しい、乗りたいとなったら我慢ができない性分だとお見受けした。

さて、そんな清水さんが最近考えるようになったのが、愛車の今後についてだという。
「60代になって、あとどれだけクルマに乗れるかなと考えるようになりました。ウチの子はどうやらこういうクルマに乗る気はないようなので、最終的には“この人になら”という人を見つけて、託すことになりそうですね」とのこと。
いやいや、人生100年と言われる時代ですからまだまだ先は長いはず。今後も拘りのロータスたちと共に、是非とも素敵なカーライフを積み重ねていっていただきたい!

取材協力:信州サンデーミーティング
(⽂:川崎英俊 / 撮影:岩島浩樹)
[GAZOO編集部]

MORIZO on the Road