「クルマって壊れるから楽しい」。30年以上乗ってきた三菱360は、今では家族の一員
小さい頃から機械をイジるのが好きだったという谷澤さんは、1968年式の三菱360(LT23)を30年以上も愛用しています。
そして、これまで360ccのクルマを3、4台も乗り潰してきたのだ言いますが、そこまで谷澤さんが360ccにこだわる理由は何なのでしょう。
今回は、谷澤さん×三菱360のお話です。
――クルマにハマるきっかけは何だったんですか?
18歳の時、友人の家に転がっていたスバルのR2という、360ccのクルマをもらってきたんです。
しばらく動いていなかったせいか調子が悪かったんですが、見よう見まねでイジってみたら調子が良くなったんですよ。それからというもの、30年以上どっぷりとクルマイジりにハマっちゃっています(笑)。
――クルマをいじることの楽しさに気付かれたんですね。
調子が良くなった姿を見て、なんだか達成感を感じたんですよね。
クルマの調子が悪い時に、ピストンの重量を揃えてみたりすると、途端に良くなったりするんですよ。機械って素直で、手を加えたらちゃんと答えが返ってくるんです。そういう “ちゃんと手をかけてあげれば裏切らない” ところが大好きです。人間は裏切るけどね(笑)。
――だから30年以上という長い期間、夢中になれたんですね。今まではどういうクルマに乗られてきたんですか?
普通自動車も軽自動車も乗ってきています。ただ、特に360ccのクルマは今まで3、4台乗り潰してきていますね。今乗っている三菱360は、元々部品取り用として買ったクルマだったんですよ。
――部品取り用というのは、言葉通り部品を取るためだけに買ったクルマという意味ですよね?
そうです。部品取り用としてクルマを買ってきて、そこからパーツを取って修理する、というのを昔からやってきています。
スズキのフロンテ360というクルマも持っているんですけど、解体屋から元となるクルマを買ってきて、部品取りしたパーツを組み立てて作りました。これは息子用のクルマなんです。
――めちゃくちゃすごいですね!今乗られている三菱360は、部品取り用だったのに、結局乗られているのはどうしてですか?
それには理由があって……。
18歳の時、ガソリンスタンドでアルバイトをしていて、あるお客さんが、三菱360に乗っていたんですよ。どうしても気になったので、連絡をとり仲良くなることができました。
それで、出会ってから7年くらい経った頃、その人が別の旧車の手入れで手一杯になり、三菱360に乗らなくなってしまったんです。放置されていた三菱360を見て「僕に譲ってくれないか」とお願いをして……。
――それで、譲ってもらえたんですか?
快く譲っていただけました。
――でも今乗っているのは、そのクルマじゃないんですよね?そこから何があったんですか?
ある時、部品を交換しようと、部品取り用のクルマをネットで探していました。それで、部品取りとしては使えそうな車体を購入することができたんですが、それが思ったよりも状態が良くてですね……。
これならネットで買った方をメインに乗って、譲ってもらった方を部品取り用にするのが良いんじゃないかと思ったんです。だから、今乗っているのはネットで買った三菱360というわけです。
――譲ってもらったクルマが部品取り用になったことは、オーナーさんはご理解いただけたんですか?
もちろん! というか、当時一緒になって修理を手伝ってくれましたよ。
――それは良かったです!他に、三菱360にはどんな思い出があるんですか?
あとは、このクルマはほとんど妻が直していましたね。ここまで維持できたのも、妻がいてくれたからなんです。
――奥様が?すごいですね!ということは、奥様は30年以上前からお付き合いされていたんですね?
そうですね。私がちょうど23歳くらいの時に付き合って、ちょうどクルマいじりにも手を出し始めた頃でした。
当時、妻はクルマ好きではなかったんですが、修理を付き合わせていたら、いつの間にか好きになっていたみたいで(笑)。錆落としから何まで、全部やってもらっていました。
三菱360を持って帰ってきた日は、すんなり受け入れてくれて……。というか、多分諦めていたんだと思います(笑)。
妻は、このクルマの動く姿を見たせいなのか「トロ」と名付けて、今では家族の中で「トロ号」で定着しています。よく駐車場で一緒に修理をしていましたよ。
――奥様との思い出も詰まっているんですね。谷澤さんはなぜ当時から、360 ccにこだわっていたんですか?
簡単だからです。下手な電子制御が付いてないので、素人でも治せちゃうのが360ccの良いところでもあるんですよ。
数ある旧車の中でも特に作りが単純でね。エンジンも1人で持てるし、車体が小さいからスペースもあまり取られない。ましてや自分でイジれるから最高です。
――谷澤さんは幼少期からクルマが好きだったんですか?
うーん…。というより「機械が好きだった」の方がシックリくるのかな。子どもの頃は、ラジオを組み立てたりもして、そういうのが昔から大好きでした。
――じゃあ、クルマも同じ機械だからイジってみた、という感じなんですね
そうです。自分の手で直すのが快感でした。
この間は、エンジンから異音が聞こえてきて「どうやって治そうか」そう考えている時間や調べる過程がとても楽しいんです。クルマって壊れるから面白いんですよ。
――それが30年以上、三菱360から他のクルマに乗り替えなかった理由ってことですね
そうかもしれません。もうとにかく可愛いんです。妻と同じくらい付き合いが長いし、私にとって今では家族の一員ですね。
――最初は、てっきりこの可愛い見た目に惚れ込んでいるのだと思っていました
もちろん見た目も大好きですよ。だけどね、見た目以上に、ただ乗っているだけで楽しいというのが、ずっと愛用しているシンプルな理由かな。
――走りも気に入っているということですか?
そうですね。初めて乗った時は「なんて乗りやすいクルマなんだ!」と思ったくらいです。街乗りはすごく楽ですし、以前乗っていたR2や、他の360ccのクルマと比べても運転しやすいんですよ。高速道路はちょっと厳しいですが、普段はガッツリ運転しています。
――今後もずっと乗り続けたいですか?
クルマ以外の物もそうですが、機能しなくなるまで使い続けたいです。壊れた時は直すことで、また使えるようになる。ちょっと手を加えれば治るんだったら、そっちの方が良いじゃないですか。
――物を大切に、長く使い続けたいっていうベースが谷澤さんにはあるんですね
もちろん!例えば、ガスの給湯器って寿命が10〜15年と言われているんですけど、家の給湯器はもう20年以上も使っているんですよ。
物を使えるように、修理して維持することに喜びを感じるので、三菱360も今後ずっと乗り続けます。今は慣らしが終わったくらいで、まだまだコイツは行けますよ!
何かが故障すると、すぐに買い替えてしまう筆者は“モノを大切にすることの重要さ”を谷澤さんから教わったような気がしました。
『三菱360を自分の棺桶にしたい』。そう語る谷澤さんに愛される三菱360は、まだまだ元気に走り続けることでしょう。
【Instagram】
谷澤さん
(文:秦 悠陽)
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