「やっぱこいつやな」。限定車のインプレッサWRXがつなぐ父との絆
幼少期にどのような体験をしたか、そして、どのようなクルマに触れてきたか……。それがお子さんの人生はもちろんのこと、クルマ選びにも大きな影響を及ぼすようです。いわゆる「原体験」が、その後の人生を左右するといっても過言ではないのかもしれません。
今回、取材させていただいたえふさんもまた、原体験がいまの愛車を選んだことにもつながっているようです。
―― まずは、えふさんの愛車について教えてください
愛車は「1998年式スバル インプレッサWRX TypeR ver.4 V-limited」です。私で3オーナー目です。手に入れてから4年4ヶ月、現在の走行距離は約19万km、私が手に入れてからは約4.5万km走りました。
―― えふさんがクルマが好きになったのは何才頃でしたか?
物心ついたときにはクルマ好きでしたね。父方の祖父と父がそれはもうクルマ好きで(笑)。私が2才くらいのときから富士スピードウェイに連れていったと聞いています。住まいが富士スピードウェイから割と近いところで、クルマで1時間弱なんですね。朝6時に自宅を出発すれば7時前には西ゲートに到着できるんです。
祖父は私が小さいころからプラレールとトミカをたくさん買ってくれました。「これで遊んで名前を覚えろ」って(笑)。おかげで4才になったころには道を走るクルマの名前はほぼ分かりました。さらに、私が大人になったときにクルマが買えるよう、貯金をしていたと聞いています。
―― まさに「英才教育」ですよね(笑)。ちなみにお祖父様、お父様はどのようなクルマに乗られていたか覚えていますか?
祖父は三菱車を好んで乗っていましたね。そのなかでもギャランΣのことはよく覚えています。父もホンダ インテグラやプレリュード、スバル レガシィツーリングワゴンなんかに乗っていましたね。祖父から「少し(お金を)出してやるからもっといいグレード買えば」なんていわれていましたから。
父が乗っていたクルマで印象に残っているのは、レガシィツーリングワゴン(2代目)のGT-Bリミテッドです。ボディカラーはシルバーで、マフラーを交換したり、かなりいじっていました。インプレッサに乗っているのもこのクルマの影響が大きいかもしれないですね。
運転中に聴く音楽も、父がよく車内で流していた1980〜90年代の曲(サザン、山下達郎、角松敏生、米米CLUB)が多いですし。
―― お父様の影響をかなり受けていますよね(笑)。そういえば、2代目レガシィってマフラーを交換するとより水平対向サウンドが強調されますね
そうなんです。子どものころから水平対向エンジン、いわゆる「ボクサーサウンド」を聞いて育ちましたから(笑)。グランツーリスモ4にも見事にハマりまして、ゲーム内で乗っていたマシンもインプレッサのWRカーでした。
その後、小学校3年生くらいのときに北海道で開催された2010年のラリージャパンを見る機会があったんですが、本物のWRカー(GDB型)が走っている光景を目のあたりにして感激しましたね。
―― 現在の愛車も乗るべくして乗ったマシンということになりますね
実はこのインプレッサ、2台目なんです。1台目も「同型でほぼ同じ見た目」のインプレッサ TypeR ver.5(GC8型)でした。1台目の方は二十歳の誕生日を迎えた瞬間に手に入れたんですけど…クルマが壊れてしまったんです。
―― 2台目となる現在の愛車はすぐに見つかったのですか?
いやもう、暇さえあればネットの中古車検索サイトをチェックしていました。ある日、夜勤明けのタイミングでチェックしたらこのクルマを見つけたんです。もう居ても立っても居られなくなり、お店に連絡をして、電車に飛び乗って現地に向かいました。菓子折りを持参して。
―― 夜勤明けでそのままクルマ屋さんに!? すごい行動力です
お店に着くと、クルマ屋のおじさんが「傷とか現車チェックしてみてね」っていってくれたんですけど、手に入れた「インプレッサ WRX typeR STi Version 4 V-Limited」って3年連続WRCチャンピオン記念車だったこともあり、狙っている人が多かったみたいなんです。もうその場で即決です。
―― 次はいつ売り物が出るか分からないですもんね…。現在の愛車が納車された日のことを覚えていますか?
お店のおじさんとその奥さんが、旅行を兼ねて私の地元でナンバーを取ってくれたんです。地元の駅で待ち合わせしてクルマの鍵を渡され「自分たちは電車で帰るから」って。それなのに納車費用はゼロ。ありがたいやら申し訳ないやらで…。
―― インプレッサからインプレッサ。しかも同型が手に入って良かったですね!
タイミングよく手に入れることができたと思います。納車から2年くらい経ったとき、購入したお店の方に行く用事があったので、寄ってみたんです。この時も菓子折りを持って。「あのときはありがとうございました。きれいに乗っていますよ」って報告もしたかったですし。ちょうどコロナ禍でマスクがどこにも売ってないときだったんですけど、お土産にって箱ごといただきました。
―― ちなみに、お父様の反応は?
父には内緒にしていたんですが、ルーフベンチレーションの存在に気づいて別個体だとバレました。パッと見、ボディカラーや見た目はほぼ同じなんですけどね(苦笑)。
―― なんとルーフベンチレーションで見分けるとは…。お父様もかなりのマニアですよね
父だけでなく、母親にも猛反対されて、もっと実用的なクルマに乗りなさいと口酸っぱくいわれたりもしました。でも、今しか乗れないかもしれないという気持ちを胸に、反対を押し切りました。家に持って帰ってきたとき、父から音がうるさいとか、車高が低いとか多少の文句をいわれつつも「乗りたい」といってくれたときが一番嬉しかったですね。
―― 現在の愛車を手に入れてから、ご自身でモディファイされた箇所を教えてください
ブレーキは別のWRXのブレンボを流用して取り付けています。ホイールはブレーキに干渉しないRAYSのTE37を選んだんですが、絶版のブロンズカラーにこだわったので、手に入れるのに苦労しました。マフラーはHKSのパイパワーマフラー、ステアリングは悩みに悩んでOMPの「WRC」というモデルを選びました。ステッチをピンクにしている点もこだわりですね。
あと、父親がレガシィツーリングワゴンに付けていたものと同じターボタイマーを取り付けたのと、ピラーメーターカバーもネットオークションで新品の未使用品を見つけて、バトルになりましたがどうにか競り落としました。ピラーメーターにはブースト計と水温計を装着しています。このブースト計と水温計、センターコーンソールの3連メーター(手前から油温、油圧、排気温)はいずれもDefi advance RSという限定モデルで、現在は廃盤です。
―― まさにえふさんの想いとこだわりが凝縮されたモディファイですよね。それなりの年式のクルマですが、トラブルは大丈夫ですか?
2ヶ月に一回くらいのペースでどこかしら壊れていくので、その都度直していますね(笑)。直近ですとエンジンの載せ換えを行いました。中古で買った時点ですでに14万kmオーバーだったのですが、18万kmを超えたあたりで異音が多くなり、最終的にはヘッドガスケットも抜けて、エンジンの載せ換えとなりました。WRX STI(VAB型)の腰下を組み入れたエンジンはあまりないのでは……と思います。
古いクルマなのでお金が掛かりますが、それでも維持しようと思う気持ちがいちばん大事だと考えています。洗車していると「やっぱこいつやな」って思いますしね。
―― 実感がこもっていますよね。えふさんが愛車とのカーライフで特に好きな過ごし方を教えてください
早朝の誰もいない伊豆スカイラインで、私のお気に入りのスポットがあるんです。道の横にあるただの駐車場なんですが、海が見えるんですね。考えごととか、悩みごとがあるときはここまでインプレッサで来て、クルマを眺めながらぼーっとしています。
―― そういう場所を見つけておくことって大事ですよね。ちなみにインプレッサで「もっとも気に入っているポイント」はどこですか?
2ドアクーペボディのスポーティーな見た目が好きなんです。なかでも、少し離れたところから真横を見るのがお気に入りのアングルです。走っていてガラス張りに反射して映っているときが一番かっこよく感じますね(笑)。WRCを意識しているので、リア3面も敢えてウィンドウフィルムを貼っていないんです。
―― クルマ好きあるあるですね(笑)。ついつい横目で見てしまうんですよね。今後、えふさんが愛車に対して手を加えてあげたいポイントを教えてください
この先、どこまで乗れるか分からないですけれど……、ずっと乗りつづけるのであれば、足回りのリフレッシュと、ボディの塗装をいちどすべてはく離して、錆を落とし、スポット増しをしたうえでソニックブルー・マイカにペイントして乗りたいです。
―― その想いは愛車にも伝わっているはず。では、えふさんが愛車に「伝えたいメッセージ」をぜひ聞かせてください
あと20年は乗りたい!あとは、もう少し壊れないでいてほしい…。
―― これも本音ですよね……。手がかかるかもしれないけれど、大切なインプレッサ。えふさんにとって「愛車」はどのような存在ですか?
どこに行くにしてもこのクルマじゃないと運転する気にならないなって思ってしまうほどなので、もはや相棒みたいな感じですね(笑)。
えふさんの愛車であるインプレッサ TypeR ver.4 V-limitedに対して「音がうるさい」とか「車高が低い」と小言をいいつつも、えふさんに「乗りたい」と伝えるあたり、お父様の本音が垣間見えた気がします。
父親としては心配である反面、同じクルマ好きとしてはちょっぴり?いや本当はかなり嬉しいのが本音かもしれません。いつか、えふさんが父親となったとき、お子さんに対して英才教育を施すのでしょうか。それが現実のものとなることを願うばかりです。
<取材・編集 株式会社キズナノート>
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