女性ウケを狙ったはずが、自分が虜に!スバル・R-2はポジティブの源

これまで、20台以上のクルマに乗ってきた おやかたさんは、現在、赤と白2台のスバル・R-2(1971年式、中期型のB型)とのカーライフを存分に楽しんでいる。

20代の頃、ひょんなことで出会ったR-2をきっかけに、360ccであるR-2にみるみるうちに魅了されていったんだとか。

55歳になった今、振り返ってみると、人生までも変えてしまった存在だそうですが、一体どのようなストーリーがあったのでしょう。

今回は、R-2×おやかたさんの物語です。

――初めて買ったマイカーがR-2だったんですか?

最初のマイカーは、20代の頃に購入した、いすゞ・ピアッツァでした。
ただ、あまりにも女の子ウケが悪くて(笑)。当時の購入理由って、不純な動機だったんですよ(笑)。

1989年当時は、VIP仕様のクルマが流行っていたんですけど、自分は若さもあり、経済的にも購入出来なくて…。他にも何かないか考えていたところ、たまたま通りかかった中古車ショップにR-2が置いてあったんですよ。

その頃は全然詳しくなかったんですが「なんか変わったクルマがあるな」って気になったんですよね。それで、衝動的に買ったのが始まりでした。ナンパの道具にも使えるかなと思ったんですよ(笑)。

――最初は女性ウケを狙っての購入だったんですね(笑)

そうです。完全に遊びの道具として買ったんだけど、なんか徐々にR-2自体に惹かれていったんですよね。メインで乗っていたピアッツァよりも面白くなっちゃって。
その後、ピアッツァは手放して、R-2+他1台という、2台持ちスタイルでしばらくカーライフを送っていました。

――R-2を維持するのは大変でしたか?

そうですね。雨で錆びてしまう箇所があって、10年ほど乗っていたんですが、維持できなくなっちゃったんです。
当時の自分は、何も修理が出来なかったのでね…。その事実が自分の中でめちゃくちゃ悔しくて、忘れられない出来事になったんです。それが初めてのR-2でした。

――じゃあ、その後もR-2とご縁があったってことですね。

40代になって、千葉に引っ越すことになり、前々からの夢だったガレージを自作したんです。
コンテナを2つ置いて、それをベースに作り始めたんですけど「このガレージの中にクルマを入れるとしたら、R-2しかない」と思っていた時に、偶然オークションで出ていた不動車のR-2を見つけて、やっぱりこれしかないって思ったんです。

そのR-2を購入し、直し始めたのが、更にR-2にハマるきっかけになりました。今のガレージには、R-2が2台置いてあるんですけど、元々は両方とも不動車だったんですよ。

――ガレージまで手作りとは思わなかったです。すごくクオリティが高くて驚いています。R-2の修理など、全て独学だったんですか?

そうですね。最初は、見よう見まねでやり始めました。それまではイジろうと思っても、場所が無かったんですけど、今はガレージがあるので、この環境には満足しています。
ガレージ近くに8メートルの井戸も掘ったんですよ(笑)。

――井戸まで!?凄すぎます。おやかたさんは全て自分でやることに楽しさを見出しているんでしょうか?

全部、好奇心からだと思いますね。
自分でこれが出来たら、次はあれが出来るんじゃないかって。それでいつの間にか、自分で出来るようになると、人に頼む事がもったいなくなるんですよ。楽しみが無くなっちゃうというか。

それと、無いものを探究していくのが面白いんですよね。例えば、欲しいパーツが国内で見つからなかったら、海外から個人輸入したりとか、そういう物事を探っていくのも好きですね。

――だから2台も直してしまったんですね。R-2の楽しさは他にもありますか?

R-2は無理をしなくても能力限界まで性能を引き出せるところが面白いですね。
その限界を“壊さない中でどうやって引き出せるか”みたいな楽しみ方というか…。限界値まで行くのは簡単なんだけど、限界までいかない絶妙なところで、どういうふうに長持ちさせるかっていう楽しみ方が、とっても面白いんです。

――R-2の魅力は“乗った時”に詰まっているんですね!

そうですね。あとは乗った時の感覚もそうです。毎日感覚が違うというか、その日によって調子が良かったり、悪かったりっていう、R-2と会話が出来るんですよ。
長く乗っていると、そろそろどこかが壊れるかもしれないっていうのも、大体分かってくるんですよね。その“血の通ったような感覚”って現代のクルマだとなかなか掴めないじゃないですか。

それと、調子が悪いと気付いた段階で原因を突き詰めると、故障の要因が予測できるんですよ。そういう風にクルマと会話が出来るのが、R-2の中毒性なのかもしれないですね。

――今はどういう時にR-2に乗っているんですか?

休みの日に海沿いの道を走ることをルーティンとしてやっています。あとは、ミーティングがある時もR-2で行っていますが、あまり酷使するのは好きじゃないので、場所を選んで乗るようにしています。

実は、ラビットというバイクも好きで持っているんですけど、そいつも可愛くてよく乗っています。写真を撮るのが好きなので、昔から持っている一眼カメラで、目的地に着いたら愛車たちの写真を撮って遊ぶのが習慣ですね。

――R-2に出会ったことで変わったことはありますか?

多分、人生レベルでアクティブになっていると思います。人と出会うきっかけはもちろんのこと、今持てているクリエイティブな部分っていうのは、R-2じゃなかったら無いんじゃないかなと思います。

例えば、ガレージをここまで作れたのもR-2のおかげですし、井戸を掘ろうと思ったのもR-2がきっかけなんです。たまたま、遊びで買ったくせに、コイツのおかげで人生が大きく変わりました(笑)。

――考える楽しさとか、生きてる実感を感じられるような感覚でしょうか?

そうそう。探究心と好奇心さえあれば、生きるのに一生懸命になれると思います。ポジティブにも作用しますしね。自分なんか、R-2が壊れたとしても直すことが楽しくなっちゃうから(笑)。

だから、このR-2は“ポジティブの源”なんですよね。壊れることも楽しみの1つとして考えないと、旧車とは向き合っていけないですよ(笑)。

――今振り返ってみて、R-2っておやかたさんにとってどういう存在なんでしょう?

遊びの相棒でしょうか。それ以外の言葉が思い付かないですね。
あと、乗っている時に会話が出来ると言ったんですけど、あの感覚を経験したら、それはもう特別な存在になっちゃいますよね。

クルマが好きな人ってみんな、自分のクルマを愛車と言いながらも、愛車以上の存在になっている部分があると思うんですよ。イベントなんかでも、他の人のクルマはほぼ見てなくて。みんな一番可愛いのは自分のクルマなんですよ(笑)。それが僕の場合だとR-2なんです。

「R-2を無料で譲ります」という連絡をSNSでもらったと言うおやかたさん。その譲ってもらった緑色の不動車のR-2を直すことが、今の目標なんだそう。
完全に治すには4年ほどかかってしまうみたいですが、その困難までもが楽しみと言います。

そして、譲ってもらったからには、元オーナーの意思を引き継いで、最後まで直さないといけないと、おやかたさんの中の揺るがない熱い思いも教えていただきました。

「直す姿をSNSで発信しながら、元オーナーに報告が出来たら良いなと思っています。」

おやかたさんはきっとこの先も、愛車たちを愛し続け、たくさんのR-2オーナーから尊敬される、偉大なR-2オーナーになるのだろうなと、勝手ながら想像する筆者なのでした。

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(文:秦 悠陽)