「自動車」の進化は「人」の進化。仲間とワイワイ楽しむためのスズキ キャラ
“平成のABCトリオ”といえば、マツダ AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノですが、そのAZ-1の姉妹車として登場したのがスズキ キャラです。
AZ-1と同様に、超個性的な見た目が世間の話題を呼びましたが、その話題の高さとは裏腹に販売台数は思わしくなく、販売期間は3年にも満たなかったため、現在となっては“超希少車”ともいえるクルマとなっています。
そんなキャラに乗る今回の取材対象者である「田口さん」は、なぜキャラに乗り続けるのでしょうか。
―――なぜ、あえてキャラを購入しようと思ったのですか?
こんなこと言うのもアレなんですけど……、本当はAZ-1が欲しかったんです。
だけど、諸々の条件を踏まえてベストマッチする個体が見つからなくて、仲間と相談して「それならば姉妹車であるキャラを購入しよう」ということになりました。
―――仲間ということは、田口さん1人がオーナーというわけではないのですか?
そうです。クルマ好きのみんなで、あーでもない、こーでもないとワイワイしながら仲良く乗っているという感じなんです。
その仲間というのは、主に会社のメンバーで結成されていて、そもそものキッカケはドライブ仲間だった会社のOGの方が「ボケ防止も兼ねて、何かやろうと思う!ゆるく参加できるラリーにチャレンジしたいから、手を貸してくれないかい?」と誘っていただいたのが全ての始まりでした。
―――なんだか、聞いているだけで面白いことになってきたなという展開です♪ ところで、キャラに乗ることになった流れは伺いましたが、そもそも、なぜAZ-1に目星をつけることになったのですか?
みんな広島に住んでいるので、せっかくならこの土地に由縁のあるクルマに乗りたいねということになったんです。それで、マツダ車の中で唯一ミッドシップにエンジンを積んでいて、遊び心満載のガルウィング、FRPで出来ているから車両重量が異様に軽く、愛嬌のある可愛らしいデザインのAZ-1を選んだというわけです。
OGの方は「おお!懐かしいね〜」という感じで、アラフォー世代の僕たちは「中身はどんな風になっているんですかね?」って興味深々だったんですよ(笑)。
そうして迎え入れたのが3年前で、1993年式のキャラはフレームはサビサビ、パネルも塗装が剥げてる、ゴム類はボロボロという、大分くたびれた個体でした。
―――おぉ……それはなかなか大変そうです。
大変というよりは、とても楽しかったです。
みんな機械いじりが好きだから、パネルをバラして下回りの処理をする時に、当時はこんな作りになっていたのかと盛り上がったり、類似構造の車両を探してきて、このパーツが使えるんじゃないか?とか、今のクルマにもココの部分の技術が生かされているんだとか、とにかく色々学ぶことが多かったですから。
加えて、余計な電子制御が入っていないから修理しやすいし、手をかけてあげれば何とかなるというところも愛着が沸くポイントでした。あとは、パネルを全て交換した時に、ガラッと見違えるほど綺麗になるというような、目に見える変化も面白くて、修理しているときは毎日が楽しかったですね。
―――修理するのに、1番大変だった箇所はどこですか?
パワーが全く感じられず、ちょっと走るとオーバーヒートしてしまう現象が起こっていたんですけど、その原因を見つけるのが大変でした。
―――原因は、何だったのですか?
エンジンの点火時期がずれていたんです。調子良く走るようになってからは、エンジンの性能自体は低いけど、電子制御があまり入っておらず、自分でクルマを操らなくてはいけない乗り味に魅了されていきました。
アクセルを踏み込んだ時のレスポンスを体に刻んで、ハンドルが2.5回転しかないから、ちょっと切っただけでクイっと曲がるハンドルの切れ味に苦笑いしながら、自分の運転スキルを磨いていきました。
これって、運転する人にクルマが合わせてくれるような現代のクルマにはない面白さだと思うんですよ。
だからコーナーの多い峠道は大変ですよ〜!だけど、そこがキャラじゃないと得られない楽しさなんです。でも、普段乗っている現代のクルマも、快適で運転しやすくて、楽しいことには変わりないですけどね。
―――なるほど。つまりは、どちらにも それぞれの良さがあるってことですね♪
そういうことです。クルマって、日本の文化でもあると思っているんです。戦後から日本を支え、自動車の進歩と共に、日本の技術を支えてきた。自動車の進化というのは人の進化なんだと、キャラに乗るようになって強く感じるようになりました。
それを沢山の人に知ってもらいたい。もっと言えば、世界の人に知ってもらいたいと感じるようになったのですが、じゃあそれをどうやって伝えようかということを模索中です。
そう考えたときに、まずはこのクルマでラリーに参加して、面白いクルマがあるんだよと知ってもらうこと。自分自身が楽しみながら乗ることにから始めてみようと思っています!
ゆくゆくは、自分達よりも若い世代に、このクルマを残すことを考えているという田口さん。これからの自動車の進化と、それを取り巻く環境は急加速で変わっていくかもしれませんが、クルマが楽しいことは、きっとずっと変わることはないだろうと話してくれました。
(文:矢田部明子)
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