憧れの1台と紡ぐ物語。三菱・パジェロ アクティブフィールドエディションは最高の“バディ”
ある日、Xのタイムラインに流れてきた写真に惹かれました。夜の駐車場で外灯にやわらかく照らされながら、闇の中に浮かび上がる1台の「三菱・パジェロ」。力強さの中にも落ち着きや気品を感じられる佇まいに、思わず見入ってしまいました。
「幼い頃から憧れのクルマだったんです。オーナーになることができて、本当にうれしいです」
そう話してくれたのは、今回の主人公でパジェロのオーナー「須田凛音」さん。愛車はシリーズ3代目で2004年に限定販売された「アクティブフィールドエディション」と呼ばれる特別仕様車です。
――クルマを好きになったきっかけを教えてください
物心ついた頃にはクルマが好きでした。影響を受けたのは父じゃないかと思います。四駆が好きで、当時は三菱・デリカスターワゴンに乗っていました。父が愛読していた「P&Dマガジン」を一緒に読むのも好きでした。
家族でドライブすることが日常の一部で、クルマが本当に身近な存在だったんです。なかでも、パジェロに惹かれていました。きっかけは父が持っていたパリダカのプロモーションビデオですね。2002年の増岡浩さんが初優勝したときの映像を何度も繰り返し観ていました。4台でビクトリー・ランを行うパジェロの姿が映し出され「三菱パジェロ 総合1位〜4位独占」のテロップが流れるシーンは、子ども心にしびれましたね。
――どハマりしていたんですね。子供のころの印象的なエピソードはありますか?
僕が初めて話した言葉は「パジェロ」だったそうです!ドライブが大好きで、ハンドルに見立てた洗面器を回して運転ごっこをしていたり、家族で出かけるときはお気に入りのパジェロのミニカーを必ず持って行っていましたね。ほとんど駄々をこねない子どもだったそうですが、買い物先でパジェロのラジコンを見つけたときだけ「買って買って!」とかなり粘ったそうです(笑)。
中高生の頃は、休み時間に自動車雑誌をよく読んでいたんです。クラスメイトが興味を示してくれていました。よく一緒に読んでいた双子の友人は、兄弟でそれぞれBRZとWRXに乗るようになっています。親友から「クルマ好きの影響を受けた」と言われたこともありましたし、身近な人にもクルマの魅力が伝わったことがうれしいです。
――いつ頃からパジェロのオーナーになるために動いていたんですか?
高校1年生の頃から、SNSでパジェロオーナーの先輩方とはつながりがあったんです。「この投稿、すてきだな」と思った方をフォローして知識を交換したり、思い入れを語り合ったりするうちにオーナーのお友達もできて、ネットワークが広がっていきました。
パジェロのオーナーになってからは一緒に出かけたり、オフ会に参加したりする機会も増えました。当時学生だった自分にあたたかく接していただきましたし、パジェロオーナーの皆さんは本当に優しくて、心から感謝しています。
――あたたかい先輩方ですね!今の愛車を選んだ理由を教えてください
購入するにあたって「シリーズ3代目か4代目のロングボディで、6G72型エンジンを搭載したモデル」という条件があったんです。
この個体は、屋内保存されていて抜群のコンディションでした。加えて「アクティブフィールドエディション」だったことも決め手で、このモデルは当時のパリダカ4連覇達成記念モデルです。
3代目パジェロの中期から後期にかけて販売され、4回の改良が行われていますが、僕のパジェロは第2期で、6G72エンジン搭載モデルの中で唯一、本革とウッド内装が採用されています。
――実車を目の前にしたときの印象はいかがでしたか?
オフローダーらしい力強さを持ちながら、スポーツカーのようなダイナミックな造形が取り入れられている点に惚れ惚れしました。フェンダーの張り出しや、キャビン部分のくびれが生み出すメリハリのあるデザインがたまりません。
ヘッドライトのデザインも特徴的で、現代のクルマにはない「ぱっちりした目」がかわいらしかったり、こうした造形を、デビューした1999年の時点で取り入れているのもすごいと思います。。
――実際に所有してみて、期待通りだった点や意外だった点を教えてください
特別仕様車ならではの見た目が好きです。ヘッドライトのインナーがグレーメッキになっていて、夜に見ると「黒目」っぽく見えるんですよ。引き締まった表情になり、スポーティでかっこいいです。
操縦性は、見た目のサイズ感からは想像できないほど良いんです!父が「4WDで大きいけど見切りがいい」と言っていましたが、本当にその通りでワンサイズ小さく感じます。かの篠塚建次郎さんが「パジェロがパワーで勝るライバルに対抗できるのは、優れた視界と車両感覚の掴みやすさにある」とおっしゃっていましたが、それを実感しています。
これは初心者の頃に経験したことなのですが、バイパスを走っていると、側道から確認せずにクルマが飛び出してきたことがありました。パジェロのアイポイントの高さと視界の良さもあって、「危ないかも」と察知できていたのでスムーズに回避することができました。
――パジェロの好きなシチュエーションはありますか?
夜にドライブしているときに駐車場に停めて、外灯に照らされる愛車を眺める時間が好きです。アクティブフィールドエディションにはモノトーン系のカラーが設定されているのですが、このシルバーのボディカラーが本当に似合っているなと思います。
――愛車と過ごす時間のなかで、特に大切にしていることは?
エンジンをオフにしたあと、余韻を楽しむひとときですね。子どもの頃は、家についてもクルマから降りたがらない子どもだったらしいです(笑)。今でもその気持ちは変わっていないのかもしれません。
――これまでのドライブで、印象に残っていることは?
幼い頃から家族ドライブの定番だったドライブインへ行きました。自分の運転で行ったのは感慨深かったです。ハンドルを握りながら「本当に乗っているんだ」という喜びがじわじわと湧いてきて、パジェロに乗って良かったと心から思いました。
車内でリモート授業を受けたのも思い出ですね。当時はコロナ禍の影響で、大学に通えるようになったのは4期生になってからでした。それまでは自宅でリモート授業を受けていたんですが、ずっと家にこもっているのがつまらなくて。そこで、パジェロの車内で授業を受けることにしました。
実際に授業で扱われる地域に足を運び、その土地の雰囲気を感じながら勉強することもありました。実習を兼ねているような感覚で、学びの質も上がるといいなと思って。カメラをオンにしたとき、教授に「どこにいるんだ?」と驚かれたこともありました(笑)。
――カスタムのこだわりについても教えてください
英国仕様モデルの「SHOGUN」に近づけたいと思っていて、大きな特徴でもある18インチのアルミホイールを個人輸入しました。国内では見つからなかったので、輸入代行を利用しました。学生時代だったのですごい費用が掛かってしまったらどうしよう……となかなか実行できずにいたのですが、思ったよりも良心的な価格で手に入れることができました。
純正オプションのリアデフレクターやラリーアートのマフラー、エンブレム類なども装着しました。JAOSのマッドフラップやエアクリーナーも取り入れて、機能性の向上も狙っています。
――今後、手を加えたい部分はありますか?
足回りのリフレッシュを考えています。具体的にはブッシュ類の交換、4代目用のスプリングの導入、ビルシュタインダンパーへの変更などですね。しっかりとした走りを維持するために順次手を入れていく予定です。傷んできたゴム類や樹脂部分の交換、コーティングも施したいです。
あとはカスタムではないのですが、もともと屋内保管されていた個体なので、屋外駐車になった今でも塗装の状態をできるだけキープしたいと思っています。日焼け対策としてカバーをかけたり、半年ごとのメンテナンスを欠かさず受けたりしています。
――大切にしていることが伝わってきます!
特別だからこそ、できる限り良い状態で維持していきたいと思っています。そんな気持ちがさらに強くなったのが、レジェンドの篠塚建次郎さんと増岡浩さんにお会いしたときでした。
――え? 実際にお会いしたことがあるんですか!?
篠塚さんには、雪道走行講習でお会いしました。初めての雪道走行で緊張していたんですが、講師として招かれていた篠塚さんは、お話される雰囲気も、映像で見ていたとおり穏やかで、とても気さくな方でしたね。持参したパジェロの取扱説明書にサインをお願いしたら「懐かしいモノを持ってきたね!」と笑顔で言ってくださって、胸がいっぱいになりました。
増岡さんには、三菱自動車が開催した45度登坂のイベントでお会いしました。増岡さんの運転するトライトンの助手席に乗せてもらうことができて、もう、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしたんですよ!同乗走行を終えたあと、勇気を出して「憧れのパジェロに乗っています!」と伝えたら「ああ、本当に? ありがとう。大事に乗ってね」と優しく声をかけてくださって、感激しました。
イベント終了後にサインをいただく時間があると聞いて、当時モノのパジェロのカタログを持参して待っていました。いざサインをお願いすると、増岡さんがカタログをじっと見て、「あれ? これ3代目のやつ。よく持っていたね。これで優勝したんだよ」と話してくれながら「ダカールラリーV2」とサインに添えてくださいました。
極めつけは、帰りがけの出来事でした。僕のパジェロを見つけた増岡さんが、こちらに気づいて手を振ってくださったんです! 長年の憧れだった方に、自分のパジェロを見てもらえたことがとてもうれしかったです。おふたりのサインは宝物です!
――パジェロ好きの方にはたまらない経験ですね!そんな須田さんにとって、愛車は創作の原動力にもなっているようですね
気がつけば、パジェロを題材に小説やイラストを描くようになっていました。最初は小説サイトに投稿するだけだったんですが、今は同人誌を作ってイベントに出るようになりました。
――どのような作品を制作されているのですか?
小説「ヤマネコデイズ!!〜ずっと憧れてた相棒とともに」は、パジェロエボリューションを手に入れたOLが主人公の物語です。自分が想い描く「理想のカーライフ」を詰め込みました。漫画「彼女のカレラ」のような、クルマを中心にした等身大の物語がとても好きなんですよね。
それから、パジェロ40周年記念として制作した同人誌です。歴代モデルやパリダカの歴史をまとめています。編集経験のある友人にアドバイスをもらいながら作り上げました。地元の同人誌即売会で発表したときは、二次創作やキャラクターものが多い中で、ちゃんと受け入れてもらえるのか不安でした。思いのほか「クルマ好きな子に会えてうれしい」と言って購入してくれる方がいました。さらに、愛車の思い出話をしてくれる方も訪れてくれました。
正直、30部も売れるのか不安だったんです。感極まってしまい、イベントの帰りに売り子をしてくれた友人とラーメンを食べながら、思い出し泣きしちゃいました。
――「本当に好きな人の心に届いた」という実感があったのではないでしょうか。今後の展望はいかがですか?
同人誌の制作を続けながら、データベース的なホームページも作ってみたいです。あと、パジェロ好きが集まるミーティングも開催してみたいですね。運転免許を取る前から幸せな体験をたくさんさせてもらったので、自分も子どもの心に残るような「パジェロの魅力を伝える場」を作りたいです。
――須田さんにとって、パジェロとはどんな存在ですか?
「ずっと憧れ続けていたアイドルであり、良きバディ」でしょうか。ラリーで活躍した姿とほぼ同じスタイルで手に入れることができる。そう考えると「スター」でありながら、身近な存在でもある最高の「推し」、すなわち「アイドル」かなと思うんです。
――まさに、須田さんにとって理想の愛車ですね
はい!だからこそ、これからもコンディションを維持して、できる限り良い状態で長く一緒にいたいと思います。
お話を伺っていると、須田さんにとって愛車は「いつも一緒にいる存在」というだけでなく「ともに挑戦し続ける存在」となっている気がします。だからこそ「バディ」という呼び方が似合うのかもしれません。
須田さんがコロナ禍で大学へ通えない中でも、自ら工夫して学びの場を広げてきたように、パジェロもまた、悪路でも力強く進んでいけるクルマ。ふたりなら、この先に待ちかまえている困難も乗り越えていけそうです。きっとこれからも新しい物語を紡いでいくのでしょう。
【X】
須田凛音さん
(文:野鶴美和 写真:須田凛音さん提供)
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