パジェロとの出会いはある日突然。ふと気づけは、歴代モデルを制覇するほどのマニアになっていた
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三菱・パジェロ ファイナルエディション(V98W型)
子供の頃からクルマ好きだったという『脱力中年』さん。当時、興味の対象車は2ドアのスポーツタイプで、学生時代に流行っていた『あぶない刑事』に登場していた、日産・レパードに強い憧れを持っていた。しかし『お前はああいうクルマに乗ると飛ばしたくなるからダメ!』という両親のひと言で断念。その代わりにと、父親から譲り受けたのが初代パジェロのショートボディ(L044型)だった。
「父もクルマが好きで、普段はセダンに乗っていましたが、建設業を経営していて山間部の現場に行くことも多く、山遊び用も兼ねて四輪駆動車が欲しいと言い出しました。日産・テラノと迷った末に、パジェロを選んだんです。けれど、思っていたよりもエンジンパワーが控えめだったようで、すぐに飽きてしまった様子でした。で“お前が乗れ”っていきなりカギを渡されたんです。その頃は自分のクルマを持っていなかったので、なんとなく乗り始めるようになりました」
パジェロに乗り始めたきっかけは予期せぬものだったとは言え、こうして脱力中年さんのパジェロライフが幕を開ける。しかし、その所有期間は長くは続かず、社会人となった一年後にはY33型セドリック・グランツーリスモへと乗り換えてしまう。それから数年後、仕事のため大分市内の自宅を離れて県南部に引っ越していた脱力中年さんのもとに、父親の急逝を伝える報せが届く。
「本当に突然のことでした。父はまだ40代でしたから。私は住まいを実家に戻して、仕事先へはクルマで通勤することにしました。ところが、3リッターのセドリックで40km近い距離を毎日通うと燃料代がバカにならない。そこでディーゼル車に換えてみようかと、色々な車種を検討していた時、父と付き合いのあった三菱自動車のセールス担当さんが『もうすぐ46型(2代目パジェロ)がマイナーチェンジして、すごく良くなりますよ』という話を持って来ました。金額的な条件もまずまずだったので、2800ディーゼルのエクシードに決めました」
かつて父親から譲り受けた一台目との相性は芳しくなかったと言うが、初めて自ら購入することになったパジェロは、2トーンカラーのスタイルや走り、装備などすべてにおいて好印象。今振り返ってみても、この46型後期はこれまで乗り継いできた数台のパジェロの中でも特に思い出深い一台だったと語る。
「全体的には気に入っていたけど、思いの他トラブルが出ましたね。半年に一度くらいのペースでエンジンのチェックランプが点いたり、噴射ポンプにトラブルが出たり、ミッションが変速不能になったり…。でも、不思議と他のクルマに乗り換えようという気持ちにはならなかったですね。当時の販売店の対応がしっかりしていて、何か起きてもその都度丁寧にフォローしてくれたんです。だからその後もしばらく46型に乗り続けて、78型のマイナーチェンジ版の発売を機に、そちらに買い換えました」
この頃にはすっかりパジェロのファンで、パジェロ通になっていた脱力中年さん。しかし、知識や経験値が高まるにつれ、クルマ作りに対する評価はより厳しいものとなり、時にはセールス担当に対し苦言を呈する場面もあったという。
「98型が出たばかりの頃、例の如くセールスさんが“どうですか?”ってお話を持って来てくださったんですが、ディーゼルが無いなら要らないよとお断わりしたんです。98型の初期は、3リッターと3.8リッターのガソリン車のみという設定でしたから。それでも“いやいや、ディーゼル並みに走りますよ”と言うので試乗に出掛けたら案の定、近所のとある坂道では2速まで落とさないと厳しい。試しに私の78型に乗り換えて、再度一緒に出掛けたところ、4速のままスイスイ登って行きました。さすがにセールスさんも諦めて帰られました。別に意地悪した訳では無いし、事実は事実。人それぞれ、好みはあると思いますが、私にとってパジェロと言えばやはり、ディーゼルなんです」
その後もしばらく78型を大事に乗り続けていた脱力中年さんだったが、98型がマイナーチェンジした時に、ディーゼルエンジンが搭載されたことを受けて、今度は快く乗り換えを承諾。ところが、アクセルの作動がワイヤー式から電子スロットルへと変更されたことによる乗り味の変化が好みではなかったそうで「4年乗り続けて2010年のクリーンディーゼルへの変更を機に再び乗り換えた時、ようやく“これだ!”と思える走りを実感しました。とはいえ、少々我慢しながら乗っていた4年の間には他社の四駆を試すこともありましたが、やっぱり気持ちは揺るがなかったですね。自分にはパジェロの“味”が合っているようです」
こうして5台目にして、自身が理想とするパジェロと巡り会えた脱力中年さん。その間に時代も流れ、かつては四駆ブームの牽引役として人気を博したパジェロは一定の役目を終え、遠くない時期に生産終了か? との噂が流れ始める。
その噂は脱力中年さんの耳にも届いたが“それはそれで仕方がない”と、お気に入りの98型中期モデルを大切に乗り続けようと心に決めた矢先に、一本の電話が。
「いつものセールスさんでした。話を聞くと、ファイナルエディションという、700台限定の記念モデルが出るとのこと。私は今の98型で十分満足しているから、記念だろうとなんだろうと要らないと断ったんですが、“歴代パジェロを乗り継いでこられたのに、これを逃す手は無いですよ!”と、こっちの気持ちを揺さぶる言葉を投げかけてくるんです。それならばと、お断りする気マンマン(笑)で、絶対に不可能と思われる条件を出しました」
その条件とは2トーンカラー、ベージュ内装、MMCS(三菱純正の多機能カーナビ)の3点セット付きというもの。脱力中年さんによると、パジェロは2代目以降、2トーンカラーを選ぶ人はごく少数派で、98型ではホワイトやブラックといった単色が圧倒的人気だったそうだ。
内装色もブラックレザーが好まれていることから、ディーラー各社を通じてメーカーに寄せられるオーダーも当然、売れ筋の組み合わせが多くなるはず。しかも、限定台数は700台と、脱力中年さんの3点セットが実現する可能性は、ほぼ皆無と思われていた。ところが、事態はまさかの展開を見せる。
「数週間後“見つかりました!”って電話が。ウソやろって、マジで驚きました。後々、話を聞くと大分県はもちろん、九州内に割り当てられた台数は全部売り切れで、血眼になって全国の営業所に電話をかけたところ、東北地方でたまたま私の条件にあったクルマが見つかったそうです。仮申し込みという形を取っていたので、断ったらキャンセル料を取られるし、そこまで頑張ってくれたのならばと“渋々”ハンコを押しました(笑)」
このように、心境的には少々後ろ向きながら『パジェロ 3.2 DTロング ファイナルエディション(V98W)』を迎え入れることになった脱力中年さん。だがしかし、いざステアリングを握るとアッという間に前向きに(笑)。
歴代のパジェロでは、購入時に軽自動車一台分に匹敵するほどのメーカー/ディーラーオプションをオーダーしてきたと言う脱力中年さんは、今回もクローム仕上げのドアハンドルをはじめ、各部をスーパーエクシード仕様(ファイナルエディションの設定グレードはエクシードのみ)へと一新された。
さらに、見た目上で『ファイナル』を意識させるものがステッカーしか無かったために(貼らずに保管中)、リヤゲート脇にはランサーエボリューションXのファイナルエディション用エンブレムを流用した他、ガチャガチャ機の景品として作られた“FINAL EDITION”キーホルダー6種類をネットオークションでオトナ買いするなど、限定700台のプレミアム感をさりげなくアピールしている。
撮影中にも、ホイールに付いたブレーキダストを洗車用シートでこまめに拭き取るなど、文字通りの“溺愛”ぶりを見せる脱力中年さん。ファイナルエディションは、自身のパジェロライフの集大成を飾る上で、不可欠な宝物となっているようだ。
「この年式で2トーンカラーは本当に希少なんです。この先もずっと長く乗ることが前提なので、走行距離を抑えるために、普段乗り用としてekワゴンも買い足しました。もう気持ち的には『床の間に飾る勢い』とでも言いましょうか。これを買ったモチベーションで仕事しているようなもので、いろんな気苦労もまったく問題ナシですよ」
そう無邪気に語る脱力中年さんの体には、もはやパジェロのDNAが刻み込まれているのであろう。そう思えるほど自然な“馴染み”を見せて下さった。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:宮崎県林業技術センター/森の科学館(宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代1561-1)
[GAZOO編集部]
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