「幻のクルマに乗るという幸せ」三菱・パジェロ エクシードを公道復帰させ自己流に楽しむ20代オーナー
『「国産車で好きなクルマは?」と聞かれたら、今でも速攻でパジェロと答えます』
そう力強く話してくれたのは、1991年式のパジェロ エクシード(V44WG)に乗る、やまぬこさん。
2018年に状態の悪いパジェロを購入後、約半年かけて公道復帰させたのが今のパジェロ。「ジャンルや年代を問わず、好きになったら買うスタイルです」と話してくれた彼でしたが、パジェロとは一体どのようなカーライフを送られてきたのでしょう。
今回は、パジェロ×やまぬこさんのお話です。
――そもそも、愛車にパジェロを選んだのは何故だったんでしょうか?
昔、この2代目パジェロのマイナーチェンジ後のモデルに、父が乗っていたことがあったんです。子供の時からそのパジェロが好きで、いつか自分も乗ってみたいと思っていました。
幼少期からクルマが大好きで、成長と共にクルマの知識が増えていくと、どの年式のどれが良いっていう自分の好みも分かってきたんですよね。それで、本当は3代目パジェロのロングが好きで本命ではあったんですが、ふと出てきた2代目パジェロも理想の仕様の個体だったので、購入したんです。
――2代目パジェロに求めていた条件は何だったのでしょう?
まず、初期型2500ccディーゼルということと、エクシードっていうグレードが欲しいと思っていました。ボディカラーがベージュ+ホワイトっていうのも条件だったんですが、その条件とドンピシャのパジェロを中古車サイト上で見つけたんです。
免許を取得してから、絶えずサイトをチェックしていたんですが、この仕様は2代目がまだ現役だった時代でも珍しい組み合わせだったので、とても驚きましたね。
――すごい! なんという偶然! 購入した時の状態はどうでしたか?
状態はかなり悪くて、錆穴だらけでほぼ放置車両と同然といった感じでした……。
普通の人だったら乗らない状態だったのですが、当時の僕は「なんとかなるだろう」と思い、すぐに購入に向けて動いていたましたね。すぐに問い合わせて、気付いたら現車確認でパジェロの前に立っていたという感じで、何かに取り憑かれたかのように購入まで進んでいました(笑)。
――そこまでパジェロに惹かれていたのは何故なんでしょう?
なんというか……。僕にとってパジェロって、どこへでも行けるグランドツーリングカーみたいな感じで憧れていたんですよね。他の乗用車よりもゆったりとクルージング出来て、悪天候時も対応できる、オールマイティでゆったりと乗れる“全天候ステーションワゴン”みたいなところに惹かれていましたね。
パジェロってガチガチにクロカン車でもなければ、今時のSUVっていうわけでもなくて、乗用車とクロカン車の良いとこ取りのクルマだと思っていて、そこが今でも大好きなんですよね。
街中でもスマートに乗れるし、自然の中での走行やレジャーにも向いている、いい意味で八方美人なクルマなのが魅力だとずっと思っています。
――購入後、パジェロに初めて乗った時はどう感じましたか?
実は、僕が前期型にこだわっていた理由ってエンジン音が好きだったからなんですよ。2代目パジェロってざっくり分けると前期・中期・後期となるのですが、前期型のディーゼルエンジンの音が子供の頃からずっと好きで印象に残っていたんです。
父が乗っていたパジェロは違ったのですが、他の人が乗っているパジェロのエンジン音を聞いたりしていたんです。なので、大人になって聞けた初めての運転の時は、すごく感動したのを覚えています。
あとは、この前期型ディーゼルモデルは「遅い」と言われていたので、きっと走らないんだろうなって思っていたんですが、平地だと思った以上に走ってくれるなって感じましたね。
上り坂だと苦しい感じはあるのですが、そういうところも味として楽しんでいるのでデメリットに感じなかったです。むしろプラスというか、それも雰囲気として“楽しさ”につながっているんですよ。
乗り心地は全体的にあたりが柔らかくて、優しい乗り味のクルマなんだなって感じましたね。
――5年以上乗られてきた今、パジェロの1番気に入っているポイントってどこですか?
買った直後と全く変わってなくて、見た目とエンジン音がずっと気に入っています。
見た目に関しては少しずつ純正パーツを付けてきたんですが、例えば購入後に付けたフォグランプの純正の白いカバーを始め、どんどん自分の理想な形になっていくのがすごく楽しいですし、装備する度にお気に入りポイントになっていくんです。
――パジェロとの1番の思い出を教えてもらえますか?
昔から1人で遠出するのが好きなのですが、4年くらい前、北海道の最東端に行ったことが思い出深いです。
自分1人とパジェロ1台で、日頃絶対に行かないような場所に行ってその場の空気を感じるのが当時から好きで行ったんですよ。その時は片道約500kmくらいのかなりの遠出だったのですが、見慣れない景色の中を走行するのって、距離が全然気にならないほど夢中になれて、すごく楽しかったのを覚えています。
それと、写真を撮るのも好きなんですが、走りに行った先で感動的な景色と出会うことが出来たのも良かったですね。今ではパジェロと景色を一緒に撮影するのが遠出の目的の1つだったりするんですよ。
パジェロと行く旅は、なかなか行けない場所にあるご飯屋さんにも出会えるし、こんなところに温泉があるんだっていう発見もあったりして、これまで色々な場所に行きましたし、一緒に冒険に出ているかのようで本当に楽しいんですよね。
――今後、パジェロをどのように乗っていきたいですか?
これからも派手なカスタムはせずに、上品に乗りたいと思っています。それと、パジェロのエクシードっていうグレードに乗っている人のイメージって、40代以降の落ち着いた渋さのある大人の人のイメージなのですが、自分もそれに見合ったオーナーになれたら良いなと思います。
楽しむところは思う存分楽しむんだけど、しっとり大人っぽく乗りたいっていう……、それが小さな目標ですね(笑)。
――今のやまぬこさんにとって、パジェロはどんな存在になっていますか?
名刺みたいな感じでしょうか。僕はパジェロのエクシードをこういうふうに楽しみますっていう、僕自身の自己紹介でもあるみたいな感じですね。
この先もずっと乗っていられるのであれば、許される限り所有していたいですね。購入した当時は20代前半で、そこから何十年もずっと同じクルマに乗り続けられたら素敵じゃないですか。
ある時、同じ型式のパジェロが草むらの中で廃車になっていたのを見たというやまぬこさん。その瞬間、消えゆくクルマに自分は乗っているんだという、実感と歓びが同時に湧いたのだとか。
“なんとかなる精神”でパジェロを購入しましたが、その気持ちと同時に『幻のクルマに乗っている、未来の自分の姿』が目に浮かんだから、購入に結び付いたのではないでしょうか。
そして“パジェロが好き”という一直線な気持ちが鍵となり、公道復帰も実現出来たのでしょう。
この先もやまぬこさんとパジェロのカーライフは、きっと唯一無二の素敵なものになるのだろうなと勝手にワクワクする筆者なのでした。
【Instagram】
やまぬこさん
(文:秦 悠陽 写真:やまぬこさん提供)
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