アウトドアライフのよき相棒は、どこまでも行けそうなトヨタ ランクル80

  • 三崎港の横で。「小雀陣二」さんと愛車のトヨタ「ランドクルーザー ワゴン」

アウトドアの相棒は、ほどよくエイジングされた「ランクル80」

「とにかく三崎で休日に気軽に美味しい食事を楽しんでもらいたいんですよ」

そうにこやかに答えるのは、アウトドア・コーディネーターとして活躍する「小雀陣二」さん。アウトドア料理の達人でもありますが、もちろんキャンプもお手のもの。週末にはここ、三浦半島の先端にある三崎港に面した小さなカフェ「雀屋」のオーナーとして料理の腕をふるっています。

今、ファミリーやカップルなど少人数かつ屋外で楽しめるということもあって、アウトドアやキャンプがブームになっています。

一昔前のキャンプといえば、「飯ごうで炊いたご飯にレトルトカレー」というイメージでしたが、最近では豪華で美味しい料理を作ること、その過程や方法、道具も含めて楽しむことがキャンプの醍醐味になっています。

小雀さんは、そのブームの最先端でアウトドア向けのレシピ本も多数執筆していて、アウトドア料理の匠としてこの界隈では有名人。そんなアウトドアをこよなく愛する達人に「愛車と趣味」について、お話をうかがってみました。

  • 三崎港に面したカフェ「雀屋」の前で

「とは言ってもね、最初から肩肘はって無理にすべてをがんばる必要はないんですよ。別にカップ麺でもOK。これが外で仲間と食べるだけで、もう別格なんですよね。アウトドアに慣れてきて余裕ができてきたら、料理も楽しめばいいんです。なによりも楽しいのが一番ですから」と優しく語ってくれます。

「実は、キャンプは仕方なくやっていたんです」
小雀さんの原点には登山や川下りといったアクティビティがあり、そのガイドが本来の顔なのだとか。アクティビティの日程を快適に進めるためにキャンプ泊をするようになり、そのうちにどんどん得意になって……といういきさつがありました。

小雀さんが愛車を選ぶ際の条件は、荷物をたくさん積めることと、四輪駆動であること。そんなアウトドアライフにドップリ浸かる小雀さんが相棒として選んだのは、1996年登録のトヨタランドクルーザー ワゴン」です。いわゆる「ランクル80」と呼ばれる1989年~1997年に発売されたモデル。

ランクル80で「雀屋」の前に乗りつけると、それだけでアウトドアの風が感じられるよう。

  • 小雀さんの愛車トヨタ「ランドクルーザー ワゴン」

筆者の若いころ、アメリカのヨセミテ国立公園でヒッチハイクで乗せてもらったピックアップトラックを思いだしました。アメリカでは朽ちてボロボロながらも走っている車が結構多いんですが、それがもう妙にかっこいいんですよね。そんな、大陸を走破しているちょっとやれたSUVの匂いがプンプンしてきて、実にかっこいいです。

それもそのはず、フロント周りが北米仕様の角目4灯ライトに交換されています。これは前のオーナーが換装していたのをそのままにしているとのこと。これがまたレトロで、良い雰囲気をだしています。

「ボンネットがけっこうハゲているのがイイ感じだと思っているんですが、周囲にはなかなか理解されないですね(笑)。アレはきれいに塗ってしまってはダメですよね」

出会いは友人からの一本の電話

愛車との出会いは6年前にさかのぼります。
山にも一緒に行く友人からの電話で、愛知のランクル専門ショップに程度のよい出物があると紹介され、フロントライトの角目4灯を見たときに「コレだ!」と直感的なシンパシーを感じたそうです。

「もともとランクルのアウトドアでの使い勝手のよさは、友人たちから半ば“洗脳”状態にされていたので(笑)、次に乗るのはこれだなと薄々は感じてました。専門ショップのノウハウもあるし、自分も元整備士ですので、古くてもまったく不安はありませんでした」

小雀さんがランクルを選ぶのは、必然だったのかも知れません。

「自分でイジっている部分は少ないんですが、リアラゲッジとキャリアの積載は、試行錯誤を繰り返して今のカタチに落ち着いています。ラゲッジは2段に分けているんですが、足の部分も含め一枚板を使っていて、これが実に耐久性が高いんです。下段に椅子や工具など用品を、上段には調理器具を古いアルミのケースに分類しています」

アウトドアで使いやすいように、ラゲッジ収納はだいぶ工夫している様子。木の一枚板の棚の方が、金属で作ったラックよりも耐久性があるというのも、実際に使ってみての結果なので説得力があります。木材の方が衝撃を柔軟にいなすのでしょう。たまに料理の撮影などで、このラゲッジの上を使って調理することもあるとのこと。

■カフェ「雀屋」にて

カフェ「雀屋」の2階には、三崎港の眺望が広がっています。

「三崎港の夕日がきれいですよ。日没で太陽は完全には見えないんですが、きれいな色に染まった景色が見渡せます」
カフェをはじめたのは、偶然の出会いでした。友人経由で三崎港に使われなくなった物件があることを知るのですが、その時点ではカフェをやるつもりはなかったとか。

  • 三崎港の前にあるカフェ「雀屋」

「アウトドア料理の本を執筆しているので、年を重ねたらゆくゆくは喫茶店でもやるのもいいかな……という程度に思い描いていましたが、スグにお店を開くとはまったく考えていなかったんです」

その後、1年経ってもその物件は使われることもなく、それならできる範囲でやってみようと、自宅の鎌倉から週末に通う形でカフェをオープン。食材には地元産のものをうまく取り入れています。

「このカフェは、アウトドア色をあまり感じさせずに誰でも気軽に入りやすくしています。実際のお客さんもほとんどが観光客なんです」

とは言いつつも、カフェの調度品や小物販売などからはアウトドアの匂いがじゅうぶんに感じとれます。2階に上がると、大きな窓から三崎港が一望できる絶景が広がっています。港の喧噪から切り離され、ゆっくり落ち着いたとても居心地のよい空間になっています。

せっかくだからと、静岡県が誇るブランド豚の富士金華豚と牛の合い挽きを使った、お肉タップリのキーマカレーを小雀さんがふるまってくれました。カフェのメニューも、これまでのアウトドア料理の経験を活かしたものが並んでいます。食事をしながら、マイカーやアウトドアに関してお話をうかがいました。

小雀さんの経歴はとても多岐に渡っていて驚きます。まずオートバイ好きがこうじて整備士の免許を取り、三菱のディーラーで整備士として働いていたそう。そして、自動車整備士からスポーツトレーナーへ、さらにアウトドアメーカー「パタゴニア」で働きたくなってアルバイトとして入社し社員へ。

ここから、アウトドア業界との関わりがスタートします。パタゴニアでは通販部門を担当し、さらにシアトル生まれのアウトドアブランド「REI」に移り、カヤックショップにも携わります。これらの経験を通じ、国内やアラスカでカヤックツアーの催行を現在でも続けています。

その後、アウトドア雑誌「BE-PAL」で通販のページを担当するようになり、フリーランスに。そして2004年ごろ、アウトドア関連フリーペーパーで料理のページを編集長にムチャブリされたところから仕事が増えて、今に至ったそう。いくつもの軸足を持った活動をしているのです。

そんなこともあり、「雀屋」は土・日・月曜の午後のみの営業なので、訪れる際にはFacebookなどでオープンしているか確認してから向かうとよいでしょう。

「実はキャンプというより、海が大好きなんです。とにかく、カヤックなどの海のアクティビティが最優先事項。アウトドア初心者なら、まずは外に出て体験してください。そして、より自然を好きになっていく過程で、自分なりに楽しいアクティビティや楽しめることを見つけてみてください。

そこで自然を存分に楽しむには、クルマがあると便利。カヌーもキャンプも、とにかくたくさんのギアを運ばないとならないですよね。自分には絶対に外せない必須の相棒だと断言できます。今の古いランクル80は、ボクのアウトドア用途にピッタリなんです。しばらく、換えるつもりはありません」

お気に入りのそろそろ走行距離30万キロに至りそうなランクル。まだしばらくは、アウトドアライフのよき相棒として大活躍しそうな気配です。

次回は、アウトドア初心者がキャンプを始める際のコツや用品選びを、小雀さんに具体的に教えてもらうことにしましょう。

 

アウトドア・コーディネーター小雀陣二さん

カヤック、キャンプを得意とし、その中で必要となるアウトドア料理も得意とするアウトドアの達人だ。雑誌、テレビなど各種メディアの企画、サポートもおこなっており、アウトドアの楽しさを幅広く多くの人に知ってもらう活動をしている。また、週末は三崎のカフェ『雀家 suzumeya』でのオーナーとして料理の腕をふるっている。今回取材させて頂いたお店だ。