コネクティッドカーを支える「テレマティクス」技術。通信機能でクルマがもっと便利にークルマのトレンドワード②

自動で走ったり、電気で動いたり、インターネットにつながったりと、クルマを取り巻くトレンドは今、めまぐるしく変化を続けている。この連載では、なんとなく分かった気になってしまいがちな最新キーワードを整理して、現在進行形のクルマのトレンドに迫っていく。第2回のテーマは「テレマティクス」だ。

テレマティクスで運転のクセを解析。丁寧に運転すれば任意保険が安くなるかも?
テレマティクスで運転のクセを解析。丁寧に運転すれば任意保険が安くなるかも?

平日は電車通勤だけど週末にクルマで出かけられるのを楽しみにしている、というクルマ好きは多いはず。ただ、週末利用中心で年間走行距離が短いにもかかわらず、「保険料が高い!」と困っていないだろうか。あるいは、事故は起こしていないし、運転が下手なわけでもないのに、「年齢が若いから」というだけで保険料が高くなってしまうことも。
でも実は、クルマの新しい技術を使うことで、任意保険を安くできる場合があるのだ。

テレマティクスで任意保険が安くなる?

クルマに専用の通信端末を搭載して、道路やサーバーと通信する技術を「テレマティクス(Telematics)」という。テレマティクスから発展してさまざまなサービスが生まれていて、例えば日本では1990年代半ばに実用化されたカーナビの高精度化(VICS)や、有料道路の料金収受システム(ETC)がおなじみの存在だ。

サービスの初期段階では事故や渋滞など主に交通情報の通知を行なうものだったが、センサーと組み合わせることで、「アクセルやブレーキを丁寧に踏んでいるか、急ハンドルや急ブレーキが多いか」といった、ドライバーの運転のクセまで分かるようになった。

さらに、年間走行距離の「実際の数字」もクルマから取得できるようになる。

この情報をもとに保険料を算定すれば、事故のリスクの低いドライバーや走行距離の短いユーザーが任意保険を安く抑えることも可能になるというわけだ。

テレマティクスで走行記録を確認して事故の状況を確認することも

実はこのアイディア、「テレマティクス保険」として日本でもすでに始まっていて、あいおいニッセイ同和損保やソニー損保、損保ジャパン日本興亜などが導入している。

運転のクセの変化を観察すれば、運転機能が衰えていく「高齢者の見守りサービス」的にも使えるうえ、若年層の保険料の緩和策にもなる。クルマ側の対応が進めば、今後の任意保険プランの主力になる可能性を秘めていると言えるだろう。

テレマティクスで進む働き方改革!

テレマティクスは、物流・旅客輸送でも重要な存在になっている。特に、ネット通販の配達・再配達は増え続けるばかりで、それなのにトラックドライバーの数は足りない。そこで、移動のムダをなくして安全に定時運行するため、テレマティクスに注目が集まっている。

以前は、クルマに取り付けたタコグラフ(運行記録計)を使って、過度な長時間運転や速度超過などを記録してドライバーの労務管理に活用していた。
これがデジタル化され、ネットワークでつながったサーバーで管理するようになると、リアルタイムでドライバーの状態を把握できるようになり、AIを組み合わせて過去のデータから疲労の兆候や、理想の休息タイミングも探ることができるようになる。

例えばトヨタは、独自のテレマティクスサービス「TransLogⅡ」で、ドライバーの危険な運転を記録したり、その際に音声で警告したり、蓄積した運転記録からより安全でエコな走りをするための改善点を提案したりといった機能を取り入れている。
特に運転記録は点数化することで、どんな運転傾向なのかが一目で分かるようになっている。

クルマの位置や走った道を記録することでよりムダのないルートを割り出して、運転・勤務時間の短縮が実現すれば、ドライバーにも企業側にもメリットが生まれる。

荷物の多いトラックドライバーや、深夜に長距離を走ることの多い高速バス運転手の働き方改革にもつながるのだ。

トヨタは法人向けテレマティクスサービスで、クルマの運行管理や業務効率化を進めている

旅客輸送では、ドライバーの疲労や高齢化による人的リスクの低減も大きなテーマになっている。オリックス自動車は、カメラやドライブレコーダーを駆使して、ドライバーの挙動を検出、わき見運転や車間不足をリアルタイムで警告するシステムを実験中だ。

このように、テレマティクスは技術の進歩に伴う結果が分かりやすい領域と言えるが、さらなる進歩には実証実験の積み重ねやデータ収集を推し進める必要がある。

トヨタの作る街でテレマティクスが加速する

“トヨタが街を作る”と話題になった静岡県裾野市に展開予定の「ウーブン・シティ」
“トヨタが街を作る”と話題になった静岡県裾野市に展開予定の「ウーブン・シティ」

その可能性は、トヨタが東富士工場跡地(静岡県裾野市)に展開することを発表したコネクティッド・シティ「ウーブン・シティ(Woven City)」にもありそうだ。

ウーブン・シティは実際に人間の住む街としてつくり上げると同時に、自動運転やMaaS、ロボット、スマートホーム、AIなどの導入を行なう実験都市であり、トヨタは「この街で技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回すことで、新たな価値やビジネスモデルを生み出し続ける」として、実証実験の参画者も募っている。

将来的にウーブン・シティは約71万m2(東京ドーム約15個分)の広さになると見込まれていて、現在は2021年着工を目指している。
ちなみに「ウーブン(Woven)」とは英語で「織物」という意味で、網の目のように道路が織り込まれた街という自動車メーカーらしいネーミングになっている。

テレマティクス技術の発展には実証実験とデータの蓄積が欠かせないが、こうした実験都市が実現すれば、身近なサービスの進化と協調して新たな段階を見せてくれるのではないだろうか。

次回は、スマホ1つでどこへでも行けるようになる新しい移動の考え方「MaaS」を取り上げる。

[ガズー編集部]

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