スマホ1つでどこへでも! ルート検索から予約・決済まで完結する「MaaS」が便利―クルマのトレンドワード③
自動で走ったり、電気で動いたり、インターネットにつながったりと、クルマを取り巻くトレンドは今、めまぐるしく変化を続けている。この連載では、なんとなく分かった気になってしまいがちな最新キーワードを整理して、現在進行形のクルマのトレンドに迫っていく。第3回のキーワードは「MaaS」。
- 電車やバス、タクシー、シェアサイクルなど、さまざまな手段を組み合わせてストレスなく移動できるようになるのがMaaS
初めての場所、行き慣れない場所に向かうとき、皆さんならどうするだろう。
大抵の人は場所の名前や住所で検索して、それからGoogleマップのような地図サービスを使って現地までのルートを確認するはず。
自宅や会社の最寄り駅から電車に乗って、必要なら乗り換えたりバスを使ったり、最後の道のりは徒歩だったりする。
ところが、いざ現地に着いてみるとシェアサイクルが一帯に完備されていて、乗り換えやバスを使うことも歩く必要もなく、自転車で最短距離を進めてしまう。
実際、大都市圏や観光地ではシェアサイクルの配備が進んでいるので、こういった例は現実にありえる。
また、電車中心の長距離移動を検索すると、有料の座席指定特急に乗る結果が表示されることもよくあるが、席をネット予約できずに駅まで行くと、券売機や窓口に長い列ができていて、結局予定していたスケジュールどおりに移動できなくなってしまうということも。
MaaSの実現でもっと気軽に、どこにでも行けるように!
- フィンランド・ヘルシンキではもうMaaSが実現している
こんな不満を一挙に解決する可能性を秘めているのが「MaaS(マース)」だ。
Mobility as a Service(1つのサービスとしての移動)の頭文字をつなげた略語で、交通インフラとスマートフォン、AI、自動運転などの技術を組み合わせることで、移動にまつわる課題を解決しようという考え方だ。
実際にMaaSが実用化されると、電車やバスなどの公共交通機関にタクシー、ライドシェア、レンタカー、カーシェアリング、シェアサイクルなど、さまざまな移動手段を自在に組み合わせて、出発地から目的地までのルート検索、利用する交通機関の座席予約、乗車券・利用料の決済までが、スマートフォンのアプリ(サービス)1つで完結する。
- トヨタと西日本鉄道が福岡市と北九州市で展開するMaaS「my route」
サービスの範囲内でさまざまな移動手段を組み合わせ、最短、最安、利用したい交通サービスの選択など思うようなルート設定が可能になり、さらに予約や決済の煩わしさからも解放されるのだ。
MaaSは複数の事業者の協業によるサービスだが、利用者にとってより魅力的な移動を提案するために、日本各地で試験的な運用も始まっている。
2018年より福岡市にて実証実験をスタートした「my route(マイルート)」は、トヨタと西日本鉄道が中心となり、公共交通機関やタクシー、レンタカー、シェアサイクルなどのモビリティに加え、レジャーやイベントなどの情報企業ら8社のサービサーが協力し運営を開始した。
2019年11月には正式にサービスインし、2020年からは神奈川県横浜市や熊本県水俣市、さらに宮崎県宮崎市や日南市など、全国へサービスを順次拡大する予定だ。
地域限定のサービサーを加えると、30以上の企業が「my route」で連携している。
- 「my route」では多数の企業が連携している
また、JR西日本が瀬戸内で実施する観光型MaaS「setowa(セトワ)」、小田急電鉄が箱根や新百合ヶ丘で提供している「EMot(エモット)」、JR東日本と東急の「伊豆MaaS」などが国内で実証実験を行っており、これらがスタートした2019年は日本のMaaS元年だったと言ってもよいだろう。
日本では、1枚で多くの公共交通機関を乗り継げるICカードが普及していたり、電車やバスなどの運行スケジュールが共有(オープンデータ化)されていたりと、MaaSが普及するための素地が十分整っていると言える。
一方、海外でもMaaSはすでに実用化されていて、そもそもMaaSの概念はフィンランド・ヘルシンキのスタートアップ企業、MaaS Global社の創業者が生み出したものだ。そのヘルシンキでは、2017年に世界で初めてMaaS社会が実現している。
同社のMaaSアプリ「Whim(ウィム)」で月額プランを選択すると、HSL(ヘルシンキ市交通局)が運行する電車やバス、トラム、フェリー、シェアサイクル(1回30分まで)などが1か月乗り放題になり、プランに応じてタクシーやレンタカーなどの利用が含まれたり割引になったりする。
MaaS実現のためにフィンランド運輸通信省が先頭に立って法改正を進めており、アプリ上でチケットの予約・決済が一括してできたり、市内でライドシェアが許可されたりというのはその成果だ。
千葉県柏の葉ではスマートシティのなかでMaaSを実験中
- 千葉・柏の葉ではWhimを使ったMaaSの実証実験が進んでいる
日本のMaaS実証実験のなかでも、千葉・柏の葉エリア(千葉県柏市)では、前述のWhimを使ったトライアルが2019年12月から始まっている。
柏の葉は三井不動産がスマートシティプロジェクトを進めている街で、バス、タクシー、カーシェアリング、シェアサイクルを組み合わせたルート検索・予約・決済がWhim上で完結するようになっている。
ライドシェアが制度上許可されていないなどの課題もあるが、今後各地のMaaSが相互に接続するようになれば、道路事情や住宅事情に即した日本ならではのMaaS社会が実現するのではないだろうか。
次回からは数回にわたって、クルマがインターネットと常時接続する「コネクティッド」について説明していく。
[ガズー編集部]
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