「応援がいつでも後押ししてくれる」。スバルが“家族(=ファン)”への感謝と決意とともに挑むSUPER GT
スポーツと切っても切り離せない大切なものの一つが、ファンの『応援』だ。
野球やサッカーなどは毎戦スタジアムに多くのファンが応援に詰めかけ、駅伝や自転車競技などはコースの沿道に2重、3重の応援の人垣ができるエリアもある。
それはモータースポーツも同様で、特に国内人気ナンバー1のレースであるSUPER GTでは、毎戦色とりどりなチームカラーのシャツやアイテムを身にまとったファンがグランドスタンドを埋め尽くしている。
また、各コーナーでも自分が応援するマシンが通るたびにフラッグを振り応援を届ける多くのファンがおり、そのファンの応援がSUPER GT全体の熱狂的な雰囲気を作り出している。
いっぽうで、モータースポーツは、多くの人や企業が一つとなり魂を込め作り上げるレーシングカーという大きな道具を使い、それを操るドライバーの一挙手一投足が見えない独特のスポーツでもある。
そうしたモータースポーツの応援について、応援する側であるファンはどのような想いで応援し、応援される側であるドライバーやチームはどのような想いで応援を受け取り、そしてお互いに心を通わせあっているのだろうか。
また、ファンは応援を通じてどのようにモータースポーツを楽しんでいるのだろうか。
そのようなモータースポーツの応援というカーライフの極地について、GAZOO.comで取材してみることにした。
今回取材にご協力いただいたのは、昨年GT300クラスでシリーズチャンピオンに輝いたSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人選手、山内英輝選手と小澤正弘総監督、そしてスバルファンの方々だ。
スバルは、市販車にも「スバリスト」と呼ばれる熱心なファンが多いが、SUPER GTでも毎戦グランドスタンドの一角を“スバルブルー”で埋めるほど熱狂的なファンが多い。
また、トヨタや日産、ホンダからは4台~6台のチームが参戦しているが、スバルは1チームのみの参戦で、応援対象が明確であるということもあり今回取材をさせていただいている。
全4回でお届けする『応援』取材企画、まずは応援を受け取る側であるドライバーとチームの想いをご紹介していこう。
熱狂的なファンが多いSUPER GT
日本で一番熾烈なバトルが繰り広げられる人気のレース「SUPER GT」。上位クラスであるGT500ではトヨタ、日産、ホンダという自動車メーカーが威信をかけた開発競争を繰り広げ、国内外のトップドライバーが集結する、世界でもハイレベルなGTカーによるバトルが見ものだ。
また混走となるGT300クラスは、下位クラスとはいえ世界の耐久レースではトップカテゴリーとして活躍するFIA GT3車両や、日本のモノづくりの技術力が活かされたGT300車両/GT300MC車両と、多様なレーシングカーが競演する世界でも類を見ないクラスだ。
そうした魅力的なレーシングカーの抜きつ抜かれつのバトルは、見た人誰しもを興奮させる。そしてその魅力にハマり観戦に訪れるファンの多さと熱狂的な「応援」が、SUPER GTの人気の高さの証でもあるのだろう。
その中で、SUBARU BRZ R&D SPORTはその名の通り、自動車メーカーのSUBARUのチームだ。
GT300クラスに参戦し、GT300規定(FIAやJAFに認められた車両とエンジンをベースとし比較的自由な改造が許されている)を元に、SUPER GT用に開発したオリジナル車両「SUBARU BRZ GT300」を走らせている。
成績が悪い時こそ「ファン=家族」の応援が支えに
SUBARU BRZ R&D SPORTでBRZのステアリングを握る井口卓人選手と山内英輝選手は2015年からコンビを組み、今年で8シーズン目になる。
同一のコンビとしてはかなり長い部類に入るが、同じ1988年生まれ(学年は井口選手が一つ上)で、お互いを「タクちゃん」「山ちゃん」と呼び合う本当に仲のいいコンビとして、SUPER GTファンの中でも親しまれている。
まずは山内選手に応援について伺ってみると、「人生において人から応援してもらえる環境というのはなかなかないと思いますので、すごく誇りに思っています」と話してくれた。
確かに、トップアスリートとしてトレーニングを重ね多くのプレッシャーと戦う一方で、たくさんのファンからの応援を受けることは、その努力に対する大きな見返りであり自分の価値を確認できる一つの尺度であるのかもしれない。
そして2人とも、応援が特に力になる状況について成績の良い時よりも、特に悪い時こそ支えられ、助けられることを強く感じているという。
そして、そうした悪い時も応援してくれるからこそ、ドライバーやチーム、そしてファンが「本当に一体感を持って戦っている(山内選手)」と感じ、井口選手も「みんなファミリーだし、誰一人欠けてはいけない」と、その大切さを語ってくれた。
ファンの応援がいつでも後押ししてくれる
そうしたファンに対する具体的なエピソードとして、井口選手は「SUBARUファンシートで毎周僕たちが通るたびに旗を振っていただいていたり、ファンシートではなくても各コーナーで青いTシャツを着てくれていたり、青い旗振ったりしてくれている方が本当にたくさんいるので、それがドライバーの力になって、それが結果につながっていると思います。
サーキットでもそうですし普段のSNSとかでも、スバルファンの方って、ネガなコメントがほぼないんですよね。本当に成績の悪いシーズンはファンのみなさんがいなかったら気持ちもどん底まで落ちていると思いますが、毎戦毎戦サーキットで応援してくれて、SNSとかでもポジティブになることをずっと言ってくれるんです。
だから、次頑張ろう、ファンのみなさんのために頑張ろうってことを繰り返して、それが去年ようやくカタチになって、チャンピオンを獲得できたんだと思います」
山内選手は、多くの応援があることは、「いい意味でプレッシャーでもある」という。
「以前、レースで接触してファンシートの前で止まってしまったことがあります。あの時に完走すること、いい成績を出すことの大切さをすごく感じたんです。ファンのみなさんは高いお金を払って来てくれているわけですし、僕たちのいい結果への期待も含めてのチケットだと思いますので、その時にすごく反省しましたし、この声援に応えたいと本当に思いました」
プレッシャーは決して「圧力」という意味合いではなく、ドライバーにとっては「後押し」であり、いいレースを見せたいというモチベーションそのものなのだろう。
いつでも応援してくれるファンにチーム全員が感謝
SUBARU BRZ R&D SPORTのチームとしても、同じようにファンからの応援が大きなモチベーションになっているという。
さらにチームとしてはスバルファンがいること、そして応援をしてもらうこと自体がチームの活動、ひいては存続に大きく関わることであるため、チームスタッフの全員がファンへの感謝の気持ちを同じく持っているという。
小澤総監督もファンの応援について次のように語ってくれた。
「スバルのファンのみなさんからは、本当に頑張れっていう気持ちが伝わってきていますし、我々もそれに応えたいと思っています。
STIのファンイベントなどでもドライバーはもちろん僕にも声を掛けていただいたり、いろいろな場面で本気で応援していただいていることを感じています。特に成績の出ないどうにもならない時でも、変わらずみんな応援してくれるので、心がくじけそうな時こそ後押ししてくれる存在だと思いますね。
ファンのみなさんは、スバル車をずっと乗り続けていただいていたり、我々もこだわっているAWDとか水平対向エンジンとかのシステムなどに共感してくれる方が多いんです。
またスバルに乗っていないけど応援してくれている方も、やっぱりスバルじゃなきゃっていうところを見つけて応援してくれていると思うので、一度仲間になるとなかなか離れていかないというところがすごくうれしいと思っています」
井口選手、山内選手、小澤総監督からのファンへのメッセージ
最後に井口選手、山内選手、小澤総監督のファンのみなさんへの一言をお届けしよう。
井口卓人選手
「ファンのみなさんの応援があってのスバルBRZ、スバルチームだと思いますので、引き続きスバルの青い旗を振って応援していただきたいと思いますし、スバルのドライバーとして走れる以上、毎戦ファンのみなさんを毎回熱くさせるレースができるように、山内選手と一緒に頑張りたいと思います」
山内英輝選手
「サーキットで旗を振ってくれている人だけじゃなくて、テレビを見て観戦している方やオンボードライブを観ている方にもみなさんの声援に毎戦毎戦しっかり応えられるように頑張っています。最後までどんなレースであろうと僕たちはあきらめず戦っていきますので応援お願いします」
小澤正弘総監督
「いつも応援していただき、本当にありがとうございます。皆さんの応援のおかげで昨年チャンピオンを獲ることができました。今年はなかなか思うようなレースができないところもあるんですけど、みなさんの応援を背に高みを目指して頑張っていきますので、変わらず応援をお願いします」
いかがだったろうか。ドライバー、チームは、普段からの応援への感謝はもちろん、特に成績が伴わない時こそファンの応援を力に変え、ファンのために戦っているという想いがお伝えできているとうれしい。
またドライバー、チームからは、ファンも含めたスバルのチームに対して「ファミリー」「仲間」という言葉を何度も聞いた。レースを戦う側と観る側、応援される側とする側、立場は違えどお互いが一体となっているからこそ盛り上がり、楽しみ、そして頑張ることができるのだろう。
次回は自動車ライターでありながら、スバルファンシートで「応援団長」としてファンの象徴的な存在でもあるマリオ高野さんに、スバルを応援すること、スバルを応援する方々について伺った記事をお届けしていきたい。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GTA、GAZOO編集部)
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